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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)5月6日(土曜日)
通算第5280号
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大英帝国の栄光と挫折
BREXITで景気停滞かと思いきや
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ロンドンのホテルでこの原稿を書いている。猫の目のように天気は氷雨かと思えば雹(ひょう)に変わる。まるで英国の政局を彷彿とさせてくれる。
昨年のBREXIT(英国のEU離脱)という衝撃は世界の経済秩序への挑戦となった。同時にグローバリズムに対する英国民衆の反撃でもあった。
この反グルーバリズムの動きが欧州全体に拡がり、フランスでオランダでナショナリズム勢力が強くなった。旧東欧諸国は軒並み保守系が政権を握る政治状況となり、昨秋には「アメリカン・ファースト」を強く訴えたトランプが大統領選挙で勝った。
トランプをあれほど警戒したウォール街が株価高騰に転じたのは奇妙でもあり、しかし皮肉にも米国経済の好況を示している。
グローバリズムを真っ先に言い出したのは英国である。
つねに世界の規範モデルを提唱し、その先頭を走り、途中で不都合になると止める。それが英国の歴史的な習性だ。日英同盟を強引に提唱し、日本を巻き込んだかと思うと、不都合になれば、さっさと日英同盟を解消し、あげくに第二次大戦では日本に敵対した。
EUから真っ先に逃げ出すのも英国だ。
金本位体制を提唱し、やがて放棄したのも英国。その金融を支配するのがザ・シティだ。 世界金融はウォール街が支配しているように見えるが、基本的な規範を策定しているのはいまもロンドンのシティである。この点で英国と米国は深く繋がる。
日本の金融業界は銀行も証券も、シティに一大拠点を築いてきた。EUから脱退となれば関税特典などのメリットが失われるからエクソダスが始まり、自動車など日本のメーカーも工場の分散を検討している。米国がTPPからの離脱を表明し、メキシコ進出が無駄となりそうな日本企業の戸惑いがある。
だとすれば、BREXITO以後の英国の現状を見ながら、次に何が起こるのかの予測のポイントを探ろうと筆者はリバプール、チェスターなど英国各地を回った。
驚かされたのはビルの建設ラッシュだ。日本の報道とまったく違う風景である。
産業革命の嚆矢となった蒸気機関の発明も元々は繊維産業の合理化が動機でありEUへの加盟は農産品の輸出拡大が動機だった。
各地をまわって緑豊かな牧草地、隅々まで開梱された田畑を見ると、こんにちの英国は農業大国でもある。
英国は新移民のポーランド系をはじめインド系とナイジェリアなど旧植民地だったアフリカ諸国と香港からの大量移民で外国人労働者だらけである。元気を失いつつあるジョンブル精神に代替するように活発な投資を敢行しているのが中国勢である。
香港の李嘉誠グループも新都心開発、高級住宅地開発で大金を投じている。ロンドンのチャイナタウンの活況と凄まじい投資ラッシュだ。
嘗て七つの海を支配した大英帝国は政治軍事パワーこそ衰退したが、世界の経済ルールを主導するという矜持を失ってはいないと思った。 (この文章は北国新聞「北風抄」5月1日号の再録です)
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● 現代の支配的体制は、所謂資本主義体制です。先進先輩資本主義が実質的な世界の
頂点に君臨しています。元の時代であれば、武人の時代=戦国時代が支配的
体制だったと言えるでしょうが、今の支配体制は資本主義体制です。
● その資本主義が世界に先駆けて始まったのが、英国なのです。18世紀の半ばと言われます。
その植民地であったUSAもほぼ連動していると言えましょう。従ってEU離脱と
トランプ節も連動しているのです。
● 従って資本主義のルールを決め、それを廃棄し、資本主義体制が崩壊するのも英国です。
つまり、黄昏の英国とは資本主義の寿命が近づいている事を意味するのです。
● 弱ると生産性が減り、汚染物質が溜まり、細胞機能が弱り、微生物が感染するのは、
体制とて同じです。若返りの薬を飲んで(≒他国の投資)一時的に活性化しても、
衰退の現実を覆い隠す、一時的な現象にしか過ぎないのです。
● 他国に食い荒らされて、やがて滅びるのは、清朝の末期と同じです。清朝も世界の
国が進出して、上海は活性化していましたが、それは滅びの前の最後の
打ち上げ花火=姥桜にしか過ぎないのです。
● 企業でも云うではありませんか、本社を立派に作った段階で、本業の衰退が始まるのです。
そんな一時的な建設ラッシュに目を奪われていれば、本質は見えません。
例えれば、引退して家を買って、退職金が底を突くようなものです。
● 国の体力に結び付く事、つまり技術開発や進歩に結び付く、有効な経済効果が生まれなければ
単なる浪費でしかないのが、建設ラッシュということなのです。
● 今回の先導は、先に資本主義が崩壊して、清朝のように他国に食い荒らされるということなのです。
これが、国民の不満が溜まり、排外主義を生み、内戦がおこり、新しい時代が来ることを
意味します。自由と民主主義でない時代が来るのです。
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)5月6日(土曜日)
通算第5280号
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大英帝国の栄光と挫折
BREXITで景気停滞かと思いきや
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ロンドンのホテルでこの原稿を書いている。猫の目のように天気は氷雨かと思えば雹(ひょう)に変わる。まるで英国の政局を彷彿とさせてくれる。
昨年のBREXIT(英国のEU離脱)という衝撃は世界の経済秩序への挑戦となった。同時にグローバリズムに対する英国民衆の反撃でもあった。
この反グルーバリズムの動きが欧州全体に拡がり、フランスでオランダでナショナリズム勢力が強くなった。旧東欧諸国は軒並み保守系が政権を握る政治状況となり、昨秋には「アメリカン・ファースト」を強く訴えたトランプが大統領選挙で勝った。
トランプをあれほど警戒したウォール街が株価高騰に転じたのは奇妙でもあり、しかし皮肉にも米国経済の好況を示している。
グローバリズムを真っ先に言い出したのは英国である。
つねに世界の規範モデルを提唱し、その先頭を走り、途中で不都合になると止める。それが英国の歴史的な習性だ。日英同盟を強引に提唱し、日本を巻き込んだかと思うと、不都合になれば、さっさと日英同盟を解消し、あげくに第二次大戦では日本に敵対した。
EUから真っ先に逃げ出すのも英国だ。
金本位体制を提唱し、やがて放棄したのも英国。その金融を支配するのがザ・シティだ。 世界金融はウォール街が支配しているように見えるが、基本的な規範を策定しているのはいまもロンドンのシティである。この点で英国と米国は深く繋がる。
日本の金融業界は銀行も証券も、シティに一大拠点を築いてきた。EUから脱退となれば関税特典などのメリットが失われるからエクソダスが始まり、自動車など日本のメーカーも工場の分散を検討している。米国がTPPからの離脱を表明し、メキシコ進出が無駄となりそうな日本企業の戸惑いがある。
だとすれば、BREXITO以後の英国の現状を見ながら、次に何が起こるのかの予測のポイントを探ろうと筆者はリバプール、チェスターなど英国各地を回った。
驚かされたのはビルの建設ラッシュだ。日本の報道とまったく違う風景である。
産業革命の嚆矢となった蒸気機関の発明も元々は繊維産業の合理化が動機でありEUへの加盟は農産品の輸出拡大が動機だった。
各地をまわって緑豊かな牧草地、隅々まで開梱された田畑を見ると、こんにちの英国は農業大国でもある。
英国は新移民のポーランド系をはじめインド系とナイジェリアなど旧植民地だったアフリカ諸国と香港からの大量移民で外国人労働者だらけである。元気を失いつつあるジョンブル精神に代替するように活発な投資を敢行しているのが中国勢である。
香港の李嘉誠グループも新都心開発、高級住宅地開発で大金を投じている。ロンドンのチャイナタウンの活況と凄まじい投資ラッシュだ。
嘗て七つの海を支配した大英帝国は政治軍事パワーこそ衰退したが、世界の経済ルールを主導するという矜持を失ってはいないと思った。 (この文章は北国新聞「北風抄」5月1日号の再録です)
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● 現代の支配的体制は、所謂資本主義体制です。先進先輩資本主義が実質的な世界の
頂点に君臨しています。元の時代であれば、武人の時代=戦国時代が支配的
体制だったと言えるでしょうが、今の支配体制は資本主義体制です。
● その資本主義が世界に先駆けて始まったのが、英国なのです。18世紀の半ばと言われます。
その植民地であったUSAもほぼ連動していると言えましょう。従ってEU離脱と
トランプ節も連動しているのです。
● 従って資本主義のルールを決め、それを廃棄し、資本主義体制が崩壊するのも英国です。
つまり、黄昏の英国とは資本主義の寿命が近づいている事を意味するのです。
● 弱ると生産性が減り、汚染物質が溜まり、細胞機能が弱り、微生物が感染するのは、
体制とて同じです。若返りの薬を飲んで(≒他国の投資)一時的に活性化しても、
衰退の現実を覆い隠す、一時的な現象にしか過ぎないのです。
● 他国に食い荒らされて、やがて滅びるのは、清朝の末期と同じです。清朝も世界の
国が進出して、上海は活性化していましたが、それは滅びの前の最後の
打ち上げ花火=姥桜にしか過ぎないのです。
● 企業でも云うではありませんか、本社を立派に作った段階で、本業の衰退が始まるのです。
そんな一時的な建設ラッシュに目を奪われていれば、本質は見えません。
例えれば、引退して家を買って、退職金が底を突くようなものです。
● 国の体力に結び付く事、つまり技術開発や進歩に結び付く、有効な経済効果が生まれなければ
単なる浪費でしかないのが、建設ラッシュということなのです。
● 今回の先導は、先に資本主義が崩壊して、清朝のように他国に食い荒らされるということなのです。
これが、国民の不満が溜まり、排外主義を生み、内戦がおこり、新しい時代が来ることを
意味します。自由と民主主義でない時代が来るのです。