鈴木宣弘×森永卓郎 地球環境はもって<あと5年>?歴史的な猛暑、グローバル資本主義の限界…私達に待ち受ける危機の数々
(写真提供:講談社)
農林水産省の発表によると、2022年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は38%だったそう。そのようななか、「いざ食料危機が起きたとき、大都市の住民は真っ先に飢えることになる」と訴えるのは、経済アナリストの森永卓郎さん。そこで今回は、東京大学特任教授・鈴木宣弘先生と森永さんの著書『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』から一部を、お二人の対談形式でお送りします。 【写真】森永卓郎さん「少なく見積もっても、富裕層は庶民の100倍、極端な数字では1万倍の温室効果ガスを排出しているんです」 * * * * * * *
◆富裕層は庶民の1万倍も環境を汚染している 森永 グローバル資本主義はもう限界に近づいています。きわめて近い未来、具体的に言えばあと2年ぐらいで崩壊すると思っています。 鈴木 あと2年ですか。 森永 ええ。マルクスは『資本論』で資本主義の崩壊を予言しています。私は大学生のときに『資本論』を読もうとしましたが、3回挑戦して3回とも挫折しました。そのくらい難解な本です。 東大の斎藤幸平先生が説明してくれていますが、資本主義の発展がピークに近づくと、社会における所得格差が許容できないほどに広がります。 ちなみにオックスファムという国際NGOの調査によると、世界人口のうち、所得が低い下半分にあたる38億人の金融資産と、所得上位26人の資産額は同じだそうです。つまりマルクスの予言がいまや現実になっているのです。 また、地球環境の崩壊もマルクスは予言しているそうです。世界のGDPと温室効果ガスの排出量って、見事に比例しているんですよ。
『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(著:鈴木宣弘・森永卓郎/講談社)
◆多くのエネルギーを使う 森永 しかも、格差が拡大すると温室効果ガスの排出量も増えるんです。推計によって違うんですが、少なく見積もっても、富裕層は庶民の100倍、極端な数字では1万倍の温室効果ガスを排出しているんです。 アメリカの富裕層が、買い物や仕事にプライベートジェットを使うからです。そんなエネルギーの使い方をしているから、庶民の1万倍もの温室効果ガスを出してしまう。 アメリカの富裕層ほどではなくても、タワマン住民は庶民よりも環境に負荷をかけています。タワマン最上階のペントハウスまでエレベーターに1回乗るだけで、何十円という電気代がかかっています。 タワマンってベランダに洗濯物を干せないので、乾燥機で乾かすことになる。しかも全室空調完備で、人がいないときにも空調が作動している。水だって電動ポンプで汲み上げなければならない。 なにもかもが電気で動いているので、庶民的な生活より多くのエネルギーを使うことになる。