産科ローテ中の研修医らがサインイン、術式を間違える【解説】
U35 2024年10月22日
術前説明の際も、患者より違うと指摘があった
医療事故の再発防止を目的に、過去の医療事故情報やヒヤリ・ハット事例(※)から原因や対策を知る「医療事故、ヒヤリ・ハット事例に学ぶ」シリーズ。今回は「患者の希望とは異なる術式が行われた」事例を取り上げます。
※出典:公益財団法人 日本医療評価機構の「医療事故情報収集等事業」
※事例は「研修医」のキーワードが含まれる事例から掲載。
【事故の程度】
障害残存の可能性がある(低い)
【発生場所】
手術室
【関連診療科】
婦人科
【患者】
入院/40歳代(女性)
【疾患名】
子宮頸部異形成
【当事者】
医師(29年5ヶ月)/医師(29年5ヶ月)/医師(26年5ヶ月)/医師(1年6ヶ月)
【実施した医療行為の目的】
子宮頸部異形成で外来通院中の患者。外科治療の方法として「子宮頸部円錐切除術」と「子宮頸部レーザー蒸散術」を提示されていた。前者は根治性が高いが合併症として妊娠した場合の早産率上昇が報告されている。本人の希望として、「子宮頸部レーザー蒸散術」を選択した。
【事故の内容】
術式間違えの一例。入院時の入院診療計画書に「子宮頸部円錐切除術」の記載があり、患者より違うと指摘があった。それを受け、病棟看護師が術前の説明をする医師と共に、正しい術式は「レーザー蒸散術」である事を確認し、計画書を修正(レーザー蒸散術にかえた計画書を作成)した。手術申し込みの術式は、「子宮頸部円錐切除術」のままであった。手術当日、執刀医がサインインの段階で来ておらず、研修医がサインインを行い、「子宮頸部円錐切除術」で開始となる。術後手術エリア退出時(サインアウト)を行う際に、執刀医より円錐切除をおこなった事を患者に告げたところ、患者からの指摘で術式の間違いに気が付いた。
【事故の背景】
- 本事例が発生した時の、子宮頸部異形成に対する手術同意書には、「子宮頸部円錐切除術」と「レーザー蒸散術」の両方が記載されており、選択した術式に○をつける形式であった。外来の時点で、「レーザー蒸散術」に○をしていた。スキャンをした手術同意書は原本の記載が薄く、どちらに○がついているのか識別できなかった。
- 複数の医師が入院、手術に係っているが、情報の共有ができていない。
- サインインは、麻酔科医・手術室看護師・初期臨床研修医(産婦人科ローテーション中)の3名で行った。
- サインインの際、電子カルテ内のスキャンされた手術同意書を元に行ったが、その時点でもどちらに○がついているか識別できず、麻酔科医・手術室看護師から、初期臨床研修医に術式の確認をしたところ「子宮頸部円錐切除術」と返答があった。手術室でのサインインの方法が徹底されていなかった。
【改善策】
- 1週間の手術予定を病棟医長が責任者となって、カンファレンスを行い、術式の確認および手術申し込みの確認をする。
- サインインの方法に関しても意識清明の患者に関しては本人を交えた術式確認を行う。