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日高義樹『バイデン大混乱──日本の戦略は』(かや書房)
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著者である日高氏の強みはアメリカに於ける太い人脈。それもワシントンの裏事情に詳しい人からの内部情報を得る立場にいることだろう。
政権中枢に近いアメリカ人脈と内部情報を通してバイデンのアメリカの「危険がいっぱい」すぎる状況を本書ではぐいぐいと抉り出している。
日本のジャーナリストには珍しく日高氏は軍事方面に明るいことである。なにしろアメリカの戦艦、飛行機に何度も乗り込んだ経験から、国防の現場の軍事感覚も鋭い。すなわち国防に関しての指摘は適切であり、日本人が理解するべき事柄を多く含んでいる。
過去五十年に亘って日高氏はアメリカ政治を見つけてきただけに『何の戦略もないバイデンは危ない存在であり、世界をおかしくさせる』と見通すのだ。
そのうえ日本の管首相も問題である。
首相たるや、「國際戦略と外交についてまったく疎く、これまで日本の安全を助けてきたアメリカの新大統領が、同様に、外交、軍事戦略について利害がなく、関心も薄い。この危機的な状況のなかで、いかにして日本の安全を図ることが」可能なのか。本書の随所で考え、提言している
たとえば、こういう提言がある。
「日本の管首相がバイデンの政治的立場を助けるために出来るのは、日本国内の中国寄りの政治勢力を切ることである。つまり二階俊博幹事長など中国寄りの政治家達を更迭引退させて、アメリカ寄りの姿勢をはっきりさせることである」(21p)
ズバリ一刀両断。
安倍首相がトランプを巻き込んでつくりあげた日米軍事同盟が、バイデンでおかしくなりつつあり、新政権は「アメリカのことを考えるだけでよいという戦略のもとでアメリカの安全がたもたれるわけはないという状況を、バイデンは理解できない」。
この欠陥だらけのバイデン政権幹部と言えば、オバマのお友達ばかり、とりわけ危険なのはスーザン・ライスらだが、日高氏は新国防長官オースティン退役大将に大いなる問題があるという。
「かれはアメリカの中東作戦の失敗の責任者であった」。
当時、トランプの命令に逆らって「中東のアメリカ軍引き上げを遅らせたのがアメリカ中央軍の幹部であることだ。このいわば頭目とも言えるオースティン大将をあたらしい国防長官にしたのでは、中東戦争の整理が進むはずがない」(36p)。
「とりわけオースティン国防長官はオバマ大統領が二年で終わらせると豪語したアフガニスタン戦争で失敗を繰り返した」(198p)。
経済についてはNYとカリフォルニアから、所得税のないテキサスなどへ人口移動がおきていることに注目し、住宅市場の激変はいずれ問題を引き起こし、現在のところ、ワクチンとEV効果で上昇を続けるウォール街の株価が暴落する危険性を警告している。ただし、中国のハッカー攻撃による市場崩落の危険性が高いとも指摘している。
結論的に「豊かで金持ちであるアメリカが世界のことなどまったく関わりがないと主張し、自分たちの利益のためだけに動くと(バイデンは)言っているのである。そしてジョー・バイデンを選んだアメリカの人々はそういった、自分たちのことだけに関心」を持つ層である。
ということは、日本はもはや、「同盟国としてアメリカの庇護を受けることが出来ない。自らの手で護る以外に、安全を維持する方法はない」(225p)。
こういう岐路に日本は立たされることになった。
コロナ禍は、もとより劣化していた日本同様に、アメリカにも政治の貧困という災禍を随伴してきた。ほどなく深刻な情勢を迎える。
◎☆◎◎み☆◎□☆や□◎◎☆ざ◎◎□☆き◎☆◎◎