フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

5月28日(月) 晴れ

2007-05-29 02:56:07 | Weblog
  昨日の真夏日から再び初夏の高原のような気候に戻る。授業の準備のための読書が一段落したところで昼食をとりがてら散歩に出る。「鈴文」のとんかつ定食。先週の月曜も来たから週に一度の頻度である。適度な頻度といえよう。あれこれ試した結果、「鈴文」のとんかつは醤油で食べるのが一番美味しいという結論に達した。今日は7切れで出て来たが、5切れを醤油、(全部を醤油では単調になるので)2切れを塩で食べた。ソースはキャベツにかけて食べた。うまい。至福のひとときといってもよい。「鈴文」から歩いて5分のところに住んでいることを幸せに感じる。有隣堂で以下の本を購入し、シャノアールで読む。

  吉田紀子『シナリオ・Dr.コトー診療所2006』(小学館)
  中原昌也『名もなき孤児たちの墓』(新潮社)
  『NHKスペシャル グーグル革命の衝撃』(NHK出版)

  倉本聰や山田太一といった大御所は別として、TVドラマがシナリオの形で出版されることはあまりない。どういうつもりでやっているのか理解に苦しむが、たぶん読者を小馬鹿にしているのだろう、「ノベライズ」というダラダラとして水っぽい代物に変形されて出版されることがほとんどである。だから今回『Dr.コトー診療所2006』がシナリオの形で出版されたことを喜びたい。そして未刊の(ですよね?)2003年版の『Dr.コトー診療所』のシナリオも遡って出版してほしい。
  『名もなき孤児たちの墓』は鬼才中原昌也の短篇小説集である。彼の小説の特徴は、そこで起きていることが現実なのか、幻視なのか、はたまた妄想なのか、判然としないことである。シュールレアリズムといってしまえば話は簡単だが、そういうラベルを貼ってきちんと収まってしまうようなものでもない。「彼女たちの事情など知ったことか」の中から例を引こうかと思ったが、読んで気分の悪くなる方がいるかもしれないのでやめておく。読むことの快楽と苦痛のせめぎ合いの中で私はこの作品を読み終えた。
  『グーグル革命の衝撃』はNHKスペシャルで放送した内容(放送されなかったことも含んでいる)を書籍化したもの。

  人々は自分が打ち込む「キーワード」という情報を検索会社に提供している。検索会社は、人々が今何に関心があるのか、何を求めているのかを地球規模で把握することができる。検索を通じて、ほしい情報を簡単に手に入れられるようになり、人々が自分の興味がある情報だけにしか関心を向けなくなるような世界が人類に何をもたらすのか、その行方はまだ誰にもわかっていない。(7頁)

  帰宅して本を読んでいると、妻が「松岡農相が自殺したって! いまテレビのニュースでやっている」と教えてくれた。驚いてyahooニュースの記事を読んでいたら、しばらくして「ZARDの坂井泉水さん転落死」という記事がアップされていることに気がついた。「えっ?」とあわててその記事をクリックしてみて、唖然とする。彼女の「死」に驚いたのはもちろんだが、それ以外のあれこれの事実にも驚いた。2人の死をめぐる記事やTVニュースを見ながら、死はもはや死んだ人のものではないのだなという思いを強くした。松岡農相の死についてTVカメラの前で語る政治家たちは、みんな今後の政局のことで頭がいっぱいみたいだった。坂井泉水さんは所属事務所の徹底したイメージ管理の中で芸能活動を続けてきた人だったが、そうしたイメージ管理は彼女の死という出来事に対しても少しも緩むことなく持続している。いま二人のいる世界がそうした喧騒や思惑とは無縁の場所でありますように。合掌。