温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

両神温泉 国民宿舎両神荘

2013年07月25日 | 東京都・埼玉県・千葉県
 
前回前々回と源泉そのままの冷鉱泉を浴びることができる施設を取り上げてまいりましたが、いくら暑くたって水風呂はどうも苦手、という方もいらっしゃるかと思いますので、そんな方向けに、加温はされているものの加水や循環の無い放流式の湯使いを実現している両神温泉の「国民宿舎両神荘」を今回ピックアップさせていただきます。
まずは秩父鉄道の三峰口駅より小鹿野町営バス「両神庁舎行」に乗車します。画像をよく見ますとバスのナンバーは白ですが、これは小鹿野町が自主運行している所謂80条バスってやつですね。車内はガラガラで、この時は私以外に乗客がいませんでした。



約20分ほど乗車して「薬師堂」バス停で下車します。ここよりちょっと手前にある道の駅「両神温泉薬師の湯」にも温泉施設がありますが、そちらでは掛け流しの槽が無いため、今回はパスしました。


 

見るからに歴史のありそうなこの薬師堂は、室町末期の建立と推定されており、埼玉県の文化財に指定されています。守護尊の薬師如来は秩父十三仏の一つであり、目薬師として眼病に霊験あらたかなんだそうですよ。宝暦年間に奉納されて現在もお堂の正面に掲げられている額には江戸小伝馬町の地名が残されており、江戸の町人たちが遠く離れたこの秩父の奥地に佇む薬師様を篤く信奉していたことがわかります。それだけご利益があったんですね。



薬師堂から看板に従って路地へ入ると、純然たる日本の山奥には不釣り合いな中華風の大きな建物が現れました。中国山西省友好施設「神怡館」なんだそうでして、どんな施設なのか興味津津なのですが、今回はお風呂を優先したかったので、残念ですがこちらも今回はパス。


 
バス停からのんびり歩いて5分程度で「両神荘」に到着しました。建物自体はいかにも昭和後期の公営宿泊施設っぽいちょっと無機質な感じですが、低層ですので周囲の景観を邪魔することはありませんし、館内に入って入浴をお願いした際のフロントの方の対応も良かったので、もし秩父で宿泊する機会があればこの宿を候補の一つに選んで良いな、という第一印象を抱きました。
ロビーやその右手に広がるエリアは本館で、左手に進んだ先には別館があるのですが、浴場は別館に設けられていますので、まずは別館へと移動し、更に階段(もしくはエレベータ)で下の階へ下ります。



階段下りてすぐに浴場入口となります。その傍の通路壁にはスタッフのお手製による鉱泉の解説が掲示されており、お湯の特徴や入浴方法の他に湯使いも明示されており、鉱泉に対する施設側の誠実さや温かいハートが伝わってきます。



浴室は露天風呂の違いによって「岩の湯」「檜の湯」に分かれており、男女日替わり制で、この日は「岩の湯」に男湯の暖簾がかかっていました。なお「岩の湯」入口前にはコインランドリーが設置されていますので、両神山などの登山後にこちらで宿泊する場合、お風呂で自分の体の汗を流すついでに、汗や泥で汚れた衣類を洗濯することもできますね。


 
脱衣室はちょっと風変わり。普通は棚を壁際にピッタリくっつけて設置するものですが、こちらでは敢えて2つの棚を向かう合わせにして背面を空け、右側は洗面台スペースとのパーテーション代わりにし、左側は通路としての空間を確保しています。左側になぜ通路があるのかと言えば、こちらのお風呂は内湯と露天の入口が別々になっており、両方を利用するには一旦脱衣室を通過する必要があるため、ビショビショの入浴客が脱衣エリアへ入ってこないようにすべく、わざわざ専用の通路を確保しているものと想像されます。


 
まずは内湯から。山の緑を映すガラス窓に面して、10人以上は同時に入れそうな大きな浴槽が無色透明のお湯を湛えています。浴槽の縁は緩やかな曲線を描いており、見た目に優しい印象が伝わってきました。洗い場に関してはシャワー付き混合水栓がL字形に計8基配置されており、ボディーソープ・シャンプー&リンスの他、試供品の洗顔フォームやピーリングクリームなど、おばさま向きの品々が揃っています。


 
浴槽の中に立つ太い柱に石積みの湯口が据え付けられており、加温されたお湯が湯船へ落とされているのですが、この湯口はどちらかと言えば装飾的な意味合いが強く、浴槽の縁付近の底部にあけられた2つの穴から、湯面が盛り上がるほど勢い良くお湯が噴き上げられていました。石の湯口も、底部の穴の回りもほんのり赤く染まっていたのですが、これって泉質由来なのか、はたまた単に配管内の錆によるものなのか…。内湯のお湯はしっかり加温循環消毒されており、人が浴槽へ入った瞬間以外はオーバーフローも見られず、きちんと槽内吸引されています。お湯自体は無色透明無味無臭で、味や匂いの面ではこれといった特徴は感じられなかったのですが、消毒に関しては塩素系薬剤ではなく紫外線消毒を行なっているため(館内掲示にて明記あり)、カルキの不快な臭いが全くしない点は大いに評価できるかと思います。当然ながらカルキ剤を投入した方がはるかに安く保健所の指示をクリアすることができるわけですが、もし資金面で余裕がある施設ならば、是非このような知覚面への影響を最低限に抑えられる方法で消毒を実施していただきたいものです。一方で浴感については「美人の湯」の名に相応しいヌル感を伴うツルスベ感を有しており、最初に湯船の湯に触れた時には「あれ、これって石鹸水?」と勘違いしてしまったほどでした。


 
一旦脱衣室に戻ってから露天風呂へ向かいます。屋外に出て、屋根掛けされているL字形のアプローチを歩いた突き当りに露天風呂が据えられていました。改修されてあまり年月が経っていないのか、露天エリアはどこもかしこも綺麗で清潔感に溢れ、屋根に用いられている白木の木材も美しく、滑り止めのために敷かれている人工芝も、上手い具合にこの屋根と調和していました。


  
「岩の湯」という名勝の通り、浴槽は岩(というか石)で縁取られていますが、屋根などに明るい暖色系の木材が多用されているため、他の旅館で見られる岩風呂の無彩色感は無く、周囲の山の緑とマッチして、緑・木・岩という3素材が綺麗なトリコロールを生み出しているようでした。
長方形の浴槽は、横に並んで足を伸ばせば7人位は入れそうな容量でして、なぜか手前側の縁には段が無いため(反対側には段があるのですが…)、手すりのあるステップ部分から入浴してくださいという旨の看板が、浴槽手前に立てられていました。

浴槽中央の上部壁面より50℃近いと思しきかなり熱く加温されたお湯が落とされています。掛け流しの温泉を紹介する拙ブログとしては、何が何でもこの露天風呂をフューチャーしないといけません。というのも、こちらのお宿の露天風呂は加温こそされているものの、加水循環濾過消毒は一切行われていない純然たる放流式の湯使いなのであります。湯口から注がれて湯船を満たしたお湯は、谷側の縁から静々と溢れ出ていました。秩父には鉱泉自体は多く存在していますが、源泉掛け流しのお風呂は僅少であり、しかも水風呂ではなく入浴に適した温度(40℃以上)で利用できる入浴槽はとても貴重です。
お湯は無色透明でほんのり甘く、微かな塩味を帯びています。分析表によれば総硫黄は1.3mgなのですが、加温によりイオウらしさが飛んでしまったのか、たまに砂消しゴム的な知覚が感じられたものの、神経を研ぎ澄まさない限りは殆どイオウ感は伝わってきませんでした。その代わり、内湯同様に石鹸水を彷彿とさせるヌルツルスベ浴感は素晴らしく、殊に露天は循環されていない源泉だけあって、その感触は内湯よりも強く、入浴中は誰しも美人肌になれること必至です。

とても素晴らしい鉱泉なのですが、お湯の投入量が少ないため、私が訪問した時のように空いていれば問題ないのですが、繁忙期の夕方などお客様が集中するときになると、お湯が相当汚れそうで心配です。とはいえ湧出量や加温用の燃料など、投入量を増やしたくてもできない問題を抱えているのでしょうから、こればかりは致し方ないのかもしれません。



浴槽縁の石に腕を乗せ、その上に顎を載っけて木枠の小窓から渓谷を眺めると、窓枠効果によって小森川の清流や周囲の山々の緑が、まるで風景画のように映えて映ります。
上述のようにお湯は湯口では直接触れないほど熱いのですが、外気による冷却の影響を受けて湯船では41℃くらいまで下がっており、じっくりと長湯することができました。



休憩スペースのテラスは床がすのこ状になっており、山の清らかな涼風があらゆる方向から吹き抜けてゆくので、腰掛けに座ってクールダウンするととっても爽快です。


 
露天風呂の下の渓谷を流れる清流小森川。お風呂から谷底まで結構な高低差があるのですが、水が清らかなのでお風呂から川底まで目視できちゃいました。訪問した時季(6月下旬)には川原で蛍が飛び交い、夜になれば宿泊客はこぞって蛍狩りを楽しむんだとか。


 
湯上りにロビーに置かれているビン牛乳の自販機で、小鹿野町産の「戸田牛乳」を一気飲み。この牛乳は前回の記事でも紹介しましたね。もちろんフタには「彩の国牛乳」の文字が記されています。


すすきの湯
規定泉(フッ素イオン・メタホウ酸) 24.3℃ pH9.2 280L/min(掘削自噴) 溶存物質0.940g/kg 成分総計0.940g/kg
Na+:333.6mg(97.45mval%),
F-:4.5mg(1.61mval%), Cl-:431.7mg(81.58mval%), S2O3--:1.3mg(0.13mval%), HCO3-:85.8mg(9.44mval%), CO3--:10.3mg(2.28mval%), BO2-:29.4mg(4.62mval%),
H2SiO3:33.8mg,
内風呂:加温・循環濾過・殺菌装置による消毒あり
露天風呂・加温あり・循環濾過消毒なし(放流式)

三峰口駅もしくは西武秩父駅より小鹿野町営バス(三峰口・西武秩父駅線)で「薬師堂」下車、徒歩徒歩3~4分
埼玉県秩父郡小鹿野町両神小森707  地図
0494-79-1221
ホームページ

立ち寄り入浴時間11:30~20:00(土曜や繁忙期などは短縮営業)
800円(西武鉄道発行の「秩父漫遊きっぷ」を提示すれば600円)
(火曜日も600円になるようです。詳しくはお問い合わせを)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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秩父川端温泉 梵の湯

2013年07月24日 | 東京都・埼玉県・千葉県

埼玉県秩父地方の日帰り入浴施設「梵の湯」では源泉そのままの冷たい冷鉱泉を浴びることが出来るので、キリリと冷えた鉱泉で身を引き締めるべく、先日秩父でのちょっとした用事のついでに訪問してまいりました。皆野秩父バイパスの新皆野橋のほぼ直下に位置しており、周辺には目立つ看板がいくつも立っていますし、広い駐車場も完備されていますから、車でアクセスするにはかなり便利かと思います。なんて言いながら、私はアホみたいに皆野駅からとぼとぼと歩いて現地へ向かったのですけど…。



2007年にオープンした施設ですから、まだ5年しか経っていないわけでして、確かに外観・館内ともそれなりに綺麗なのですが、ロビーは広いながらも一角では野菜などが販売されていたりして、田舎臭さがたっぷりです。券売機で料金を支払い、その券を下足箱のキーと一緒にフロントへ差し出します。受付スタッフの方はとても丁寧に利用方法に関して説明してくれました。
浴室がある方に向かって館内の廊下を進んでゆくのですが、その廊下の両サイドには俳句だかポエムだかよくわかりませんが、この施設を運営する社長のことばがたくさん貼りだされていました。なるほど、社長のキャラがかなり強い会社のようですね。相田みつをの2番手を目指しているのかな。
なお館内にはこの廊下や脱衣室などにロッカーが設置されているのですが、廊下に置かれている貴重品用ロッカーは無料であるのに対し、脱衣室のロッカーは有料(100円)となりますので、100円を節約したい方は下のロッカーを使うことをおすすめします。



廊下に並行して上画像のようなお座敷の休憩室や食堂も併設されています。私が訪問したのは平日の夕方だったのですが、お座敷には誰もおらず水を打ったような静寂が室内を覆っていました。


 
社長のポエムゾーンを抜けて浴室入口の前まで来ると、傍のカウンターには「試飲してください」という言葉とともにウォーターサーバーが用意されていました。冷たくて美味しい水なので、てっきり鉱泉水を冷やしたものかと思いきや、紙をよく見たらば「鉱石・水道水」と書かれているではありませんか。ということは、タンクに詰められている水は、何らかの効果をもたらす鉱石に触れさせた水道水ってことなのかしら?


 
脱衣室は温泉施設というより公営プールのような無機質で実用本位の造りでして、洗面台やドライヤーが多いのは助かるのですが、荷物や衣類を収めるためのロッカーは全て有料である点はかなり痛い…。しかもバネで強制的にすぐ閉まっちゃうタイプの扉なので、使いにくいったらありゃしない。私は貴重品のみ廊下の無料ロッカーに預け、衣類などは有料ロッカーで鍵をかけずに(つまり100円玉を使わずに)収めちゃいました。

しかしながら脱衣室のストレスを一気に払拭するほど内湯の雰囲気は立派でして、大きな連続窓やゆとりのある広い浴槽、そして高い天井によって、内湯にありがちな湯気篭りや圧迫感とは全く無縁の開放的で快適な環境が広がっており、しかも窓の向こうに広がる庭園の緑や荒川の流れ、そして落ち着きのある色調の内装によって、ちょっとした和風のラグジュアリー感すら伝わってくる品の良いお風呂となっています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が14基設置されており、定期的にスタッフの方が見回りに来るためか、とても綺麗な状態が維持されていました。


 
窓に面した浴槽は20人以上同時に入っても余裕がありそうな、実に大きなものでして、薄く黄土色を帯びて弱く濁るお湯が張られていました。男湯の場合は左側にお湯の投入口や循環用の吸い込み口があり、反対側(右側)には3人分に区画された寝湯スペースが設けられています。

館内表示によれば、「かけ流し式循環風呂」という私の知識や理解能力を超越した湯使いを実施しているんだそうです(「獲れたての加工食品」とか「新品のセカンドハンズ」などと言っているようなもんじゃないのかな…)。ろ過装置に関しては「国内最高のコンパクトですごく能力の高い衛生管理にすぐれたろ過器」と、文字数の割りには抽象的な表現によって説明されていました。もうとにかく社長の情熱と理念を信じればなんでもアリといったような感じです。

でもそうした説明の問題はともかく、お湯のフィーリングはなかなか素晴らしいものが有り、浴槽のお湯を体にかけてみますと、感動するほど強いヌルスベ感が全身を纏い、その感触は全国の名だたる「うなぎ湯」に匹敵するほどでした。お湯からは薄い塩味と重曹味が感じられますが、ただ惜しむらくは消毒臭が気になってしまう点です。


 
浴槽は石板貼りなのですが、ツルスベ浴感の鉱泉ゆえに非常に滑りやすいため、縁には滑り止めが貼られており、また床には人工芝が敷かれていました。こうした小さな配慮は嬉しいですね。


 
露天風呂は地元荒川の岩と鉄平石を用いた岩風呂で、8人前後のサイズといったところ。全体的に屋根掛けされているので多少の悪天でも支障なく湯浴みできるかと思います。浴槽の奥には休憩ができるテラスがあり、すぐ傍には荒川が流れているのですが、目隠しのためか樹木が密に植えられており、ロケーションの割りには開放感や眺望がいまいちだったりします。
もちろん今回はこの露天風呂にも入りましたが、露天のお湯からはビックリするほど知覚的特徴も浴感も得られませんでした。無色透明無味無臭のこのお湯は、おそらく鉱泉ではなくてごくごく普通の沸かし湯ではないかと思われます。


 
さて、主浴槽に並んで浴室右奥に据えられてる小さな槽が今回スポットライトを当てたい槽です。一応掛け流しの温泉施設を取り上げている拙ブログとしては、この小さな槽を無視するわけにはいきません。カエルの置物が載せられたフタで半分閉じられている石造りの小さな槽には、加温されていない冷たいままの冷鉱泉がそのまま注がれており、いわゆる源泉槽となっているのです。以前は水風呂として入浴することができましたが、現在は入浴不可能となっており、手桶で汲んで浴びるほかありません。実際に私が桶で頭からジャバジャバと冷鉱泉を浴びていると、槽内のボールタップが働いて自動的に鉱泉水が補充される仕組みになっていました。この源泉槽の鉱泉水は僅かに黄土色を帯びながらほぼ透明であるように見え、主浴槽で感じられた塩味は無い代わりに、金気味や重曹味、そしていわゆる硬水のミネラルウォーターに含まれるような硬水的な味が確認できました。一方、ヌルヌル感に関しては、主浴槽ほどでは無いものの、それなりに感じられました。この手の泉質は加温することによってヌルスベ感が増す場合がありますから、源泉そのままの状態より加温された主浴槽の方がヌルヌル感が強いのは当然かもしれません。でも爽快感や鮮度感は源泉槽の水風呂に軍配が上がります。

この施設では2種類の源泉で湧出する鉱泉が使われているんだそうですが、館内で掲示されている分析表には1号(梵の湯)、2号(凡の湯)、そして1号と2号の混合、というように、ご丁寧に3種類に関して掲示されており、わざわざ混合する前の鉱泉まで利用客に明示している点は大いに評価したいところです。でもそれぞれの源泉あるいは混合泉がどのように使われているか(どの槽がどの源泉なのか)について説明が無い点はちょっと残念。主浴槽はおそらく混合泉なのでしょうけど、源泉槽に関しては混合泉では無いような気もします(あくまで個人的なフィーリングによる判断ですが)。


 
風呂あがりといえばビン牛乳ですよね。浴場入口にはビン牛乳の自販機が設置されていたので、湯上りに購入し、腰に手を当てて一気飲みしました。小鹿野の「戸田牛乳」という銘柄なのですが、これって秩父地方ではおなじみなんでしょうか? なかなか美味しかったので、是非お土産に持って帰りたかったのですが、どこかで売ってないかな…。フタには「彩の国牛乳」という土屋県政の残滓みたいなネーミングがプリントされていました。そういえば秩父には「西秩父桃湖」や「秩父さくら湖」など、前知事の県政私物化が疑われる物件がいくつかありましたっけ。ま、神奈川県民の私が埼玉についてあれこれ述べるのは筋違いですから、これ以上の言及は避けて話題を本題に戻しますが、加温循環消毒とはいえヌルヌル感の強いお風呂には一浴の価値があり、しかも源泉そのままの冷鉱泉も浴びることができるわけですから、侮りがたい日帰り入浴施設と言えるかと思います。館内には非科学的な説明文がたくさん掲示されていますが、それを信じるか信じないかは貴方次第です。


1号井戸
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 16.1℃ pH8.6 12L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質3.119g/kg 成分総計3.119g/kg
Na+:1077mg(98.82mval%),
Cl-:1177mg(68.79mval%), HS-:0.3mg, HCO3-:723.7mg(24.58mval%), CO3--:91.8mg(6.34mval%),
H2SiO3:12.5mg, HBO2:21.6mg,

2号井戸
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 16.5℃ pH9.1 11L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質1.567g/kg 成分総計1.567g/kg
Na+:523.2mg(99.04mval%),
Cl-:372.7mg(45.36mval%), HS-:0.9mg, HCO3-:488.7mg(34.57mval%), CO3--:121.8mg(17.52mval%),
H2SiO3:14.6mg, HBO2:15.6mg,

混合泉(梵の湯(1号井戸)・凡の湯(2号井戸))
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 17.4℃ pH8.9 50L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2.569g/kg 成分総計2.569g/kg
Na+:865.3mg(98.69mval%),
Cl-:857.7mg(62.04mval%), HS-:0.7mg, HCO3-:692.5mg(29.11mval%), CO3--:96.6mg(8.26mval%),
H2SiO3:15.6mg, HBO2:20.0mg,

(掛け流しは冷鉱泉の小槽のみ。主浴槽や露天は加温循環消毒あり)

秩父鉄道・皆野駅より徒歩25分(2.0km)
埼玉県秩父市小柱309-1  地図
0494-62-0620
ホームページ

9:00~22:00(土曜のみ22:30まで)
平日750円(時間制限なし)・土休日850円(3時間未満)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★+0.5
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秩父 新木鉱泉

2013年07月23日 | 東京都・埼玉県・千葉県
地獄釜の中で茹でられているかのような猛暑続きの毎日、皆様いかがお過ごしでしょうか。こんなクソ暑いのに熱い風呂なんか見たくもねぇ、という声も聞こえてきそうですので、今回は冷たくて爽快な冷鉱泉の源泉にそのまま入ることができる埼玉県秩父の鉱泉宿「新木鉱泉旅館」を取り上げてみます。こちらのお宿はいろんな方面で紹介されており、鉱泉としての質も良いので、既にご存じの方も多いかと存じます。私個人としては6年ぶりの再訪でして、前回も今回も立ち寄り入浴利用です。



西武秩父駅前より皆野行か定峰方面行の路線バスに乗車。


 
「金昌寺」バス停で下車し、県道を若干戻ると旅館の赤い看板が立っていますので、それが指し示す路地へと入って行きます。霊場巡りの土地らしく、路傍にはいくつものお地蔵さんが佇んでいました。路地に入ってしばらく進むと二又に分かれたところで再び赤い看板が立っていますから、そこを右折して2~3分歩けば現地に到着です。



鉱泉宿といえば、温泉ファンの中にはつげ義春の作品に出てくるような、鄙びたおどろおどろしい陋屋を連想してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが(私はその一人)、さすが東京という大マーケットの近郊にある観光地の人気宿だけあって、まるで熊本県の黒川温泉郷を彷彿とさせるようなテイストの綺麗で小洒落た外観となっており、女性客の受けはとても良いのではないかと思われます。


 
古い建物を丁寧にメンテナンスしながら使い続けている館内からは、老舗らしい重厚感と大人の雰囲気が感じられます。綺麗に掃き清められた玄関まわりも民芸調の趣きです。入浴をお願いしますとスタッフの女性が丁寧に接客してくださり、私が差し出した1000円札をちゃんと両手でしっかりと受け取っていました。下足場でスリッパに履き替え、上がり框からすぐ右の廊下へと進みます。



館内表示に従って、離れの湯屋へ。


 
湯屋の自動ドアが開くと同時に、右奥から「いらっしゃいませ」という若い女性の声が聞こえて来ました。入って右側のスペースはマッサージルームになっていて、専属のスタッフさんが常駐しているんですね。飾りの太鼓橋を渡って浴室へ向かいます。


 
脱衣室は鰻の寝床のように細長くてやや狭く、混雑時にはちょっとストレス感をおぼえるかもしれませんが、室内は清潔できちんと整頓されており、室内の利用客が1~2人程度でしたら、問題なく快適に使えるかと思います。棚に用意されている籠がカラフルですね。洗面台は最近の和風旅館や料亭などでよく見られる陶器製です。アメニティ類も一通り揃っています。


  
大きな窓から外光が降り注ぐ浴室は、木材や石材を上手い具合に組み合わせることによってとても落ち着いた上品な雰囲気が醸し出されています。床に敷かれているのは伊豆青石かそれと同種の(凝灰岩系の)石材かと思われます。洗い場は浴室の左右に分かれており、計8基(左右4基ずつ)のシャワー付き混合水栓が菱形のミラーと共に設置されています。また浴室入口の右手にはサウナも設けられています。


 
四角くて縁に木材が用いられている主浴槽は、足を伸ばせば5~6人、膝を曲げれば8人前後は入れそうな容量です。小さな祠のような湯口から循環のお湯が投入されており、その脇に立てかけられている札には「お地蔵様のお告げにより突然源泉が湧き出ました。その水で顔を洗うと美しくなると言われています」と書かれており、実際に私もお湯で顔を洗ってみましたが、元々不細工なので、懸命に洗顔したあとに鏡に写った自分の顔をマジマジと見つめてみても、目立った変化は見られなかったのが悲しいところ…。槽内では3本のジェットバスが稼働しており、これがちょっと騒々しいのですが、ジェットバスが好きなお客さんもかなりいらっしゃいますから、常時稼動は致し方ないところですね。

お湯は無色澄明でほぼ無味無臭。冷鉱泉ですから浴用に適するようしっかり加温されており、湧出量も限られていますから循環消毒も行われていて、浴槽からのオーバーフローは見られません。消毒の薬品臭はほとんど気になりませんでしたが、そもそも源泉が有していたはずのイオウ感はすっかり消えています。でもアルカリ性に傾く重曹泉らしいヌルツルスベの浴感がはっきりと肌に伝わり、このお湯が単なる真湯ではなく、ちゃんとした鉱泉であることは明白であり、いわゆる美人の湯と称されるような典型的な鉱泉であります。尤も、上述した私のような悲しい実例もありますから、かつてのフジカラーのCMのコピーの如く「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに」というつもりで臨んだほうがよさそうですね。


 

新木鉱泉で特筆すべきは、浴室入って左側に据えられているこの源泉樽風呂でしょうね。今回の記事において、いままでの長ったらしい記述は序章に過ぎません。今回私はこの樽風呂を目当てにわざわざここまでやって来たようなものです。そもそもはサウナ利用客用の水風呂代わりとして用意されたようですが、この樽風呂はこちらの鉱泉宿ご自慢の源泉が完全掛け流し状態で投入されているので、サウナの利用とは関係なく、鉱泉のありのままの状態を味わうことができるわけです。温泉資源に恵まれていない秩父で湧出するのはほとんどが冷鉱泉であり、しかもその源泉も湧出量が限られているため、源泉へ直接入ることができる浴槽を備えている施設は稀有であり、この樽風呂はとても貴重な存在です(蛇口を捻れば源泉のままの冷鉱泉が出てくる施設なら、それなりにありますけどね)。

一人サイズの丸い樽に竹の筒からトポトポと冷鉱泉が注がれており、静々とオーバーフローしています。樽の中の鉱泉水は青みがかった灰白色に僅かに濁っており、半透明の浮遊物(湯の花)がゆらゆらしていて、樽の中に体を沈めるとザバーっと勢い良く鉱泉が溢れ出るとともに、底の沈殿が一気に舞い上がります。樽の中で肌を擦ると、はじめはヌルっとした感触が表面を滑り、その後に重曹由来と思しきツルスベ浴感が全身を優しく包み込んでくれました。主浴槽や後述する露天風呂もこの樽風呂と同じ源泉を用いており、ツルスベの心地良い浴感を楽しめるのですが、やっぱり樽風呂の生源泉とは比べ物になりません。特に暑い時期は感触のみならず、その冷たさが実に爽快ですので、本当に病みつきになります。

でも今回ちょっと気になることがあったのです。湯口にはコップが置かれているので、生源泉を飲んでみたのですが、前回利用した時には感激するほど明瞭だったタマゴ的な味や匂いが、この日はあまり感じられず、その代わりに甘み+アルカリ性単純泉的な微収斂+軟式テニスボール的イオウ感(劣化したイオウ感)がほんのり感じられるにとどまりました。分析表によれば硫化水素イオンを6.1mgも含んでおり、正真正銘の立派な硫黄泉であることは間違いないのですが、どうやら新木鉱泉のイオウは日によってコンディションに大きなバラつきがあるようでして、たまたま私は鉱泉のご機嫌が斜めなタイミングで利用してしまったようです。でも他の温泉ブロガーさんの記事を拝見しますと、秩父のたまご水と呼ばれるような他の鉱泉宿のお風呂でも、以前と比べてタマゴ感が弱まっているという報告が散見されますので、もしかしたら秩父全域で鉱泉に何かの変化が起きているのかもしれませんね(あくまで勝手な推測ですが)。


 
露天風呂は大小2つの浴槽があり、大和塀の隙間からは秩父の牧歌的な田園風景が眺められます。決して広くない空間ながら、ブレのないデザインコンセプトを貫いているためか、利用していても視覚的な違和感が無く、長閑で且つ品も良い雰囲気の中、時間を忘れてのんびり過ごすことができました。
大きな浴槽は2~3人サイズで、縁には木枠が、底には伊豆青石がそれぞれ用いられており、頭上は屋根で覆われています。一方、小さな浴槽は一人サイズの赤い焼き物で、大小それぞれ内湯同様に加温循環のお湯が張られています。外気による冷却のためか、内湯よりは若干ぬるくて、長湯できるような湯加減でした。



参考までに、上の画像は私が2007年7月に訪問した際に浴室から撮影した露天風呂の様子です。当時は現在と異なる形状をしており、大小の木の浴槽が据えられていたんですね。

宿泊予約サイトでの口コミ評価も高いこちらのお宿。樽風呂の冷鉱泉はタイミングによってコンディションが異なるようですが、掛け流し状態の冷たい硫黄泉に入ったときの爽快感は格別ですので、茹だる暑さに辟易したら是非一浴なさってみてはいかがでしょうか。


単純硫黄冷鉱泉 14.8℃ pH9.4、8.5L/min(自然湧出) 溶存物質0.599g/kg 成分総計0.599g/kg
Na+:156.1mg(94.83mval%),
Cl-:17.1mg(6.71mval%), HS-:6.1mg(2.52mval%), SO4--:56.5mg(16.50mval%), HCO3-:295.6mg(67.69mval%),
H2SiO3:45.5mg,
(掛け流しは樽の水風呂のみ。主浴槽と露天は加温循環消毒あり)

西武秩父駅(西武秩父線)・秩父駅(秩父鉄道)より西武バスの皆野駅行もしくは定峰方面行に乗車し「金昌寺」バス停下車、徒歩5分
埼玉県秩父市山田1538  地図
0494-23-2641
ホームページ

立ち寄り入浴12:00~21:00
平日800円・土日祝900円(貸切風呂あり・3150円/60分)
ロッカー(100円有料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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植木温泉 あしはらの湯

2013年07月21日 | 熊本県
 
今回の熊本県における温泉めぐりの締めくくりとして、前回取り上げた植木の温泉街からちょっと離れた農村集落に湧く1軒だけの温泉入浴施設「あしはらの湯」に立ち寄ってまいりました。一帯には渺茫たる田園風景が広がっており、深呼吸をして胸いっぱいに清々しい空気を吸い込みたかったのですが、ちょうどこの日は元肥を施しているシーズンだったのか、辺りには肥やしの臭いがプンプン漂っており、深呼吸どころか呼吸を最低限に抑えて臭いを堪えつつ湯屋へと向かいました。



こちらの温泉は公衆浴場と家族風呂が併設されており、普段の私ならば公衆浴場を選ぶところですが、この時は誰にも邪魔されずに一人で静かに湯浴みしたかったため、家族風呂を利用することにしました。


 
家族風呂は趣向が異なる6室が用意されており、瓦葺の腕木門を潜ると、公衆浴場とは別の家族風呂専用棟に各室の扉が一列に並んでいました。


 
受付時に空いている個室を自分で指定することができます。訪問時は全て空室だったのでどの個室にしようか迷ったのですが、今回は1号室「鉄平石と檜」をチョイスすることにしました。


 
脱衣室には洗面台・ドライヤー・棚・トイレなど一通りのものが揃っており、とっても綺麗で快適な状態が維持されています。エアコンも設置されていますが、コインタイマー式(100円/50分)ですので、少しでもお金を節約したい方はその隣の扇風機を回しましょう。


 
浴室には源泉が出てくるシャワー付き混合水栓が2基取り付けられており、右側に丸い形をした2人サイズの浴槽が据えられています。利用客数が限られている個室風呂なのにシャワーが2つもあるなんて贅沢ですね。壁・床・浴槽ともに赤色系の鉄平石で統一されていますが、その色合いに濃淡があるため、長くいても視覚的な飽きが来ず、温かみのある優しい空間となっています。


 
湯口からは無色透明のお湯が絶え間なく注がれ、浴槽縁の切り欠けからしっかり溢れ出ています。湯面には気泡がたくさん浮いており、温泉の鮮度の良さを主張しているようでした。湯加減は43℃くらいで、私にとってはちょうど良い湯加減なのですが、人によってはちょっと熱く感じるかもしれません(でも加水用の水栓もホースも見当たらなかったので、もし加水したい場合はどうしたら良いのかしら…)。

貸切で利用する個室風呂には、使用の度にお湯を溜めて使用後は排水するタイプと、常時お湯が張られているタイプの2種類に分けられますが、こちらは後者でして、私が入室する前から、誰もいないのにお湯が湯船に張られて、惜しげも無くザブザブと排湯されていました。これが6室全てで行われており、しかも公衆浴場でも掛け流しなのですから、湧出量が相当豊富なのでしょうね。



続いて露天風呂へ。坪庭のような空間に一人サイズのかわいらしい檜浴槽が設置されていました。他の家族湯も、浴槽の造りこそ異なれど、おおよそ同じようなレイアウトになっているみたいです。周囲には民家が建ち並んでるため、外回りは塀が立てられており、景色を眺めることはできません。


 
内湯同様にこちらも完全掛け流しで常時お湯が投入されて縁からオーバーフローしているのですが、投入量がやや絞り気味のためか(あるいは外気による冷却の影響か)内湯よりは若干湯温が低く(41℃くらい)、熱いお湯が苦手な方でも安心して入れる湯加減になっていました。

お湯に関してですが、見た目は無色澄明で、内湯・露天ともに湯面には気泡がたくさん浮かんで白い塊を形成しており、そんなお湯に体を沈めると1分もしないうちに、全身に細かな気泡がビッシリと付着します。やや弱めながらも深みがあって明瞭な茹で卵の卵黄のような味と匂いを有し、それと同時に重曹的な清涼感を伴うほろ苦みやアルカリ性単純泉にありがちな微収斂、そしてほんのりとした甘みが感じられました。いかにも重曹泉型のアルカリ性単純泉らしいツルツルスベスベ感に、気泡の付着による軽やかさが相俟って、入浴中もさることながらお風呂から上がった後の自分の肌は、殻を剥いたばかりの茹で卵のようなツルスベ状態になり、しかも全身から放たれる爽快感も抜群でした。
このお風呂を上がった後は適当に寄り道しながら熊本空港へ向かう予定だったのですが、あまりに心地良い浴感ゆえ、お湯から出ようと思っても後ろ髪をひかれてしまい、結局寄り道する時間を排して予定ギリギリまでこのお湯に浸かり続けてしまいました。なお家族湯の脱衣室内にはインターホンがあり、終了時間が近づくと受付のおばちゃんがちゃんと知らせてくれます。


アルカリ性単純温泉 42.3℃ pH9.52 265L/min(動力揚湯・400m掘削) 溶存物質194.3mg/kg 成分総計194.3mg/kg
Na+:49.1mg(97.26mval%),
HS-:1.0mg(1.25mval%), HCO3-:65.2mg(44.58mval%), CO3--:24.1mg(33.33mval%),
H2SiO3:35.7mg,

熊本交通センターより産交バスの山鹿行で「宮原」バス停下車、徒歩15分(1.2km)
熊本県熊本市北区植木町田底2031-1  地図
096-274-7212
ホームページ

(公衆浴場)
9:00~22:00 第3水曜定休(祝日の場合は翌日)
300円
ロッカー・ドライヤーあり

(家族風呂)
9:00~23:00 第3水曜定休(祝日の場合は翌日)
1200円/50分&3人以内(50分以上もしくは4人以上の場合は追加料金要)
ドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
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植木温泉 ふろや湯湧

2013年07月20日 | 熊本県
 
熊本の奥座敷として知られる熊本市北区の植木温泉に2012年末オープンした、新しい日帰り入浴施設「ふろや湯湧」を利用してまいりました。この場所にはかつて「植木温泉センター」という入浴施設がありましたが、旧来の建物はすっかり全面解体されて跡形もありません。なおこの「ふろや湯湧」は道路を挟んだ斜前に位置する「旅館平山」が経営しています。
こちらには一般的な公衆浴場の他に九州で人気の家族風呂もありますが、今回は公衆浴場の方を選択することにしました。瓦葺きの和風建築の湯屋は、壁面がなまこ壁を模したようなファサードになっていますが、明らかにイミテーションとわかるその造りや、屋号をプリントして扁額のように見せかけているカッティングシートなど、明らかな「安上がり」感が気にかかるところであります。



私が訪れた日はお客さんのほとんどが家族風呂を選択しており、公衆浴場を利用しているのは私一人だけのようでした。玄関入ってすぐ左に受付窓口があるので、そこで直接料金を支払います。スタッフの方は旅館から出向いているのか、皆さんの服装は作務衣姿で統一されており、対応も丁寧でした。受付の前には和室8畳の休憩スペースが用意されているのですが、単に畳が敷かれているだけで室内にはこれといった備品類は無く、ワンルームアパートの一室を見ているようでした。


 
新しい建物だけあって、脱衣室の入口の引き戸は、動きがとってもスムーズです。室内は清潔感に満ちあふれており、壁面などに木材も用いられていて温かみのある空間が造られています。エアコンも完備でとても快適に着替えることができるのですが、建材の材質のためか、ちょっと無機質すぎるきらいがあるかもしれません。


 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつとなっており、露天風呂はありません。先述のようにこの日の他のお客さんは家族風呂を利用していたため、大きなお風呂を終始独占することができました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が6基設置されており、お湯のコックを開けると源泉が吐出されます。腰掛けや桶の色はグレーに統一されています。洗い場にはボディーーソープやシャンプー類の備え付けが無いのですが、その代わりに受付で小さな石鹸が手渡されます。このため洗い場の水栓上の段には先客が残していった石鹸がたくさん放置されていました。業務用のボディーソープ等をポンプ式のボトルに詰めておいたほうがコスト的に安く上がりそうな感じがしますが、施設側が石鹸にこだわっているのは、何か理由でもあるのでしょうか。



浴槽は縁が御影石で槽内はタイル貼り。大小のふたつに分かれており、左側の大きな方(6人サイズ)はややぬるめで入りやすい湯加減である一方、右側の小さな浴槽(3~4人サイズ)はやや熱めの温度設定になっていました。お湯の投入口は両方に設けられており、それぞれから吐出されるお湯は湯船とほぼ同じ温度でしたので、左側に関しては若干加水されているのかもしれません(間違っていたらごめんなさい)。


 
画像左(上)が左側の大きな浴槽、画像(右)が右側の小さな浴槽です。左側の槽より右側のほうが水平位置がやや高くなっているため、右浴槽のお湯は一旦左浴槽へ落ち、左浴槽の縁から洗い場へオーバーフローする流れが出来上がっています。投入量が多いために常時溢れ出ており、私が湯船に浸かると左右の浴槽に関係なく、浴槽縁直下の排水用プラスチック製グレーチングを飛び越えてしまうほど、室内に音を轟かせてドバーっと豪快に溢れ出ていきました。

お湯は無色澄明で、弱いながらもはっきりとしたタマゴ的な味と匂い、そして重曹的な清涼感やほろ苦みが感じられました。天然の化粧水の如きツルツルスベスベの気持ち良い浴感が肌を優しく包み、湯上りには粗熱が程よく抜けて心地良い爽快感が楽しめました。泉質名こそ単純泉ですが、主成分は重曹ですし総硫黄も1.2mgありますから、単純泉的なサッパリ感と同時に硫黄泉的な味わい深さと重曹泉的な清涼感が体感できる、一粒ならぬ一湯で三度美味しいお湯であると言えるかもしれませんね。

このようにお湯はなかなか良質ですし、新しくて綺麗で使いやすい施設なのですが、ベージュやグレー系の色調の建材を多用しているためか、温泉施設としてはいまひとつ風情に欠け、かつ没個性的で実用本位な感じを受けました。尤も公衆浴場なのですからそれが本来の姿なのであり、私が抱いた感覚は的外れなのかもしれません。毎日の汗を流してサッパリするにはとても使い勝手の良い温泉だと思います。なおこの日の植木温泉一帯にはなぜか肥やしの臭いが漂っており、浴室の中にもこの臭いが入り込んできたのですが、植木温泉に関して記事をアップしている他のブロガーさんの記事を拝見しても、やはり肥やしの臭いについて言及されている方がいらっしゃるので、どうやら田園風景が広がる当地において肥やしの臭いは当然のように大気中に漂っているものなのかもしれませんね。



ちなみに「ふろや湯湧」のすぐ隣は家族風呂専門施設の「藤の瀬」です。この界隈は温泉の激戦区なんですね。関東で暮らす私にとっては羨ましいことこの上ありません。


ふろや湯湧
単純温泉 47.0℃ pH8.4 93L/min(動力揚湯) 溶存物質0.637g/kg 成分総計0.637g/kg 
Na+:163.7mg(95.70mval%),
F-:8.5mg(6.11mval%), Cl-:17.8mg(6.78mval%), HS-:1.2mg(0.54mval%), HCO3-:348.3mg(77.48mval%), CO3--:12.0mg(5.43mval%),
H2SiO3:53.8mg,

熊本バスセンターより産交バスの山鹿行(植木温泉経由)で「植木温泉」バス停下車すぐ
熊本県熊本市北区植木町米塚22  地図
096-274-7111(旅館平山)

9:00~22:00 火曜定休
300円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (10)
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