温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

山鹿温泉 櫻町温泉

2013年07月19日 | 熊本県

クラシックな銭湯風情に誘われて、山鹿市の市街地に点在する温泉浴場のひとつ「櫻町温泉」を訪れました。


 
昭和にタイムスリップしてしまったかのような、あまりに渋すぎる佇まいです。背もたれに病院の広告が描かれた木製の古いベンチもいい味出してますね。しかもその広告の出稿主は、外科・産婦人科と、古典的な東洋医学の代表格である灸院なのです。古いベンチに伝統療法の広告という、この絶妙なマッチングには思わず唸ってしまいました。


 

湯屋の右側には温泉を使った洗濯場があり、たくさんの洗濯板が壁に立てかけられていました。訪問したのはお昼過ぎでしたので、さすがにそんな時間帯に洗濯している人なんていませんでしたが、パイプからはお湯が出続けており、桶もたくさんありましたから、いまでも現役なんですね。山鹿の人々の生活と温泉がいかに密接に結びついているかが、とてもよくわかります。



2つある入口は男女の区別が判然としていないため、一見するとどちらに入って良いのか戸惑いましたが、ドアの上部をよく見たらば左側のドアに小さく「女」と掲示されていたので、右側が男湯なんだとわかりました。


 
入ってすぐに番台があり、おばちゃんに料金を直接支払います。古典的な板の間の脱衣室には、浴場の歴史と同じ年月を過ごしてきたと思われる松竹錠の古い棚には、常連さんの風呂道具が並べられていました。相当年季が入っているガタピシなこの銭湯は、人吉の銭湯群と双璧をなすような熊本県屈指のレトロ銭湯と言えるかもしれません。


 
ばねばかり式の体重計は、昭和の銭湯には必須アイテムですね。建物は余程草臥れているのか、コインタイマー式のドライヤーを使おうとしたら、その周囲の土壁の崩れており、藁すさが露出していました。


 
タイル貼りの浴室には、中央に大きな浴槽が、そして左右に分かれて洗い場がレイアウトされています。水栓は左右合わせて計5基設けられており、いずれにもスパウトとシャワーがセットになっているのですが、スパウトとシャワーは同じ配管に接続されており、その配管にはぬるい温泉が流れているため、どのコックを開けてもぬるいお湯が出てきます。なおこの他に、浴室の左側には温泉の配管とは独立している新しいシャワーが1つあるのですが、これって水専用なのかな?(確認し忘れちゃいました)


 
室内の高い天井を見上げると、幾星霜も湯気がこびりついてきたトタンの壁は至るところが黒ずんでいました。そんな壁が天井を突き抜ける湯気抜きの直下には、昭和37年と記された縦書きの温泉分析表が掲示されています。



また室内には入浴心得も掲示されており、そこにはどの銭湯でも見られるような一般的な文言が並んでいるのですが、掲示者として連名で記されているのが「山鹿校区婦人会」や「山鹿校区公民館」というように、校区の下の組織になっているのです。校区とは所謂学区と同意義だと思われますが、山鹿では校区によるエリア分けが地域の自治を行う上で主要な概念になっているのでしょうか。


 
タイル貼りの浴槽は三分割されており、その中でも曲線を描く手前側の蹄鉄型の浴槽が最も大きく、その隣の中間槽、そして左奥槽の順で徐々に小さくなっています。左奥槽には塩ビパイプが伸びており、上向きのパイプ口から42℃くらいの源泉が投入され、この槽から中間槽、そして大きな蹄鉄型の浴槽へと流れていって、浴槽縁からオーバーフローしています。隣接する浴槽へ流下してゆくうちにお湯の温度も下がってゆき、蹄鉄型の槽では不感温度帯に近い長湯向きのぬるい湯加減になっていました。実際に大きな槽に浸かるお客さんは皆さん長湯を楽しんでいらっしゃいます。

お湯は無色澄明でほぼ無臭、口に含むとアルカリ性単純泉にありがちな微収斂が感じられました。あっさりとした軽やかなフィーリングで、サラサラスベスベのさっぱりした浴感が心地よく、ぬるめの湯加減も相俟って、体への負担が少ない状態でじっくりゆっくり長湯を楽しめました。源泉の投入量も多いので、鮮度感も良好です。
早朝から営業していますので、旅人やドライバーさんにとってはありがたい施設ですね。いつまでもこの風情を残していっていただきたく存じます。


単純温泉 40.7℃ pH不明 128.4L/min(自然湧出)
Na+:54.5mg,
Cl-:11.5mg, SO4--:12.2mg, HCO3-:53.8mg, CO3--:34.7mg,
H2SiO3:51.3mg,
(昭和37年11月17日分析)

山鹿バスセンターより産交バスの三玉線で「シルバー人材センター入口」下車・徒歩3分、または「桜町」バス停下車・徒歩5分(山鹿~熊本駅のバスでしたら「シルバー人材センター入口」下車)
(山鹿バスセンターまでは熊本駅・玉名駅・肥後大津駅より路線バスでアクセス)
熊本県山鹿市山鹿957-3  地図
ホームページ

4:30~21:30
150円
ドライヤー有料(30円)、他備品類なし

私の好み:★★
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平小城温泉 城山公衆浴場

2013年07月18日 | 熊本県
 
前回ではリゾート的なアジアンテイストの温泉施設を取り上げましたが、その近所にありながらも全く逆のベクトルを示してる、伝統的な日本の田舎の小さな共同浴場が今回の主役です。その名は「平小城温泉 城山公衆浴場」。九州の温泉ファンにはお馴染みの浴場のようですね。平山阿蘇神社の辻向かいに位置しており、建物こそ各旅館や入浴施設へアクセスする道路に面しているのですが、戸口はその裏路地に向いているため、意外と見つけにくいかもしれませんね。まるで地域の公民館のような小さな建物が、長閑な田園風景の中にちょこんと佇んでいました。



周囲には「これぞ日本の田園」と言うべき、実に長閑な景色が広がっており、この時はちょうどヒバリが囀りながら辺りを飛び回っていました。こんなのんびりとした風景の木々に隠れるようにポツンポツンと多種多様な施設が点在しているのが、平山温泉の特徴であります。


 
敷地内には2つの小屋があるのですが、これは単なる倉庫なのでしょうか。あるいは源泉関係の施設なのでしょうか。湯屋の外壁には施設名が書かれた看板が立てかけられていました。かつてはこれで外来客を集めていたのかもしれませんが、今では知る人ぞ知る温泉として自己主張することなくひっそりとしています。



小屋の傍に赤く錆びきった金属の箱のような物体が放置されていたのですが、その物体に貼り付けられている丸っこいツバメのマークは、懐かしの丸善石油(※)ではありませんか!
(※)大協石油と丸善石油が合併したのが現在のコスモ石油です。


 
玄関の上がり框には手作り感溢れるダンボール製の料金箱が置かれていました。ここへ各自で料金を納めるわけですね。ワンコインのリーズナブルな温泉です。玄関の奥には休憩用のお座敷があり、ロッカーも設置されていました。



館内の流し台では源泉が汲めるんだそうです(料金100円要)。


 
浴室は男女別の内湯が一室ずつ。玄関を上がって右側が男湯で、ちょっと手前へ戻る感じで右側の廊下を進むと女湯になります。脱衣室は至ってシンプルでとてもコンパクト。ホームセンターで売っているようなアングル架台に、摘みとった果物を載せるような農業用のプラ籠が置かれています。
浴室のドアノブは外れており、代わりにタオルが巻きつけられていました。こうしたチープな雰囲気は、鄙びた温泉を好む我々マニアの心を思いっきりくすぐってくれますね。



浴室は実用本位の白いタイル貼りで、二分割された浴槽が据えられており、小さな浴槽の隅に湯口が設けられています。


 
実用的な公衆浴場ながらも、男女両浴室を仕切る塀の上には瓦が載せられており、単調な浴室にさりげないアクセントを加えています。これは地域のための小さな浴場ができる範囲内で頑張った精一杯のおめかしなのかもしれません。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基設置されており、お湯のハンドルを捻ると源泉のお湯が出てきます。なお後述するようなお湯の特徴により、床がとても滑りやすく、私も2~3度バランスを崩しましたので、ご利用の際は足元にご注意を。


 
上述のように浴槽は大小に2分割されており、湯口からお湯が直接注がれる小さな方は2人サイズ、大きな方は4~5人サイズとなっています。お湯は湯口からまず小さな槽へ注がれ、そこからちょっと低い位置にある大きな方へと流れて、大きな槽の縁から洗い場の床へと溢れ出るように、一方通行の流れが出来上がっているのですが、小槽と大槽との高低差が僅かであるため、私が大槽へ入ったら大槽のお湯が小槽へ逆流することもありました。尤もそんな逆流はたまにしか発生しないわけでして、原則的には小から大へと流れてゆくため、小さな方はやや熱めである一方、大きな方はややぬるめで入りやすい湯加減になっていました。大きな浴槽は脱衣室側へ食い込むように配置されており、限られたスペースを有効に活用しようとした設計者の努力が垣間見れます。


 
お湯は無色透明で湯の花などは見受けられず、とても清らかに澄み切っていました。湯口に置かれているコップで飲泉してみますと、上品でまろやかながら芳醇で明瞭なタマゴ味が口腔内で転がるとともにふんわりとしたタマゴ臭が鼻へ抜け、清涼感のあるほろ苦みやアルカリ性単純泉によくある微収斂も感じられました。もちろんお湯を直接嗅いでもタマゴ臭が確認できます。お湯に体を沈めると、まるでローションの中に入っているかのような、ヌルヌルを伴う気持ち良いツルスベ浴感がはっきりと感じられ、小槽では肌へしっかりと気泡が付着してくれました。タマゴ感・ヌルツルスベ・アワアワという、私好みのお湯に出会えて、終始感激しながらの素晴らしい湯浴みを堪能することができました。佇まいのみならずお湯もブリリアントなのですから、九州の温泉ファンから熱い支持を受けているのも納得出来ますね。



帰りしなに館内に掲示されているレジオネラ属菌および大腸菌の検査報告書を一瞥したところ、ちょっと気になる記載を発見しました。温泉水の採取場所に注目。男性浴槽は「源泉ポンプ出口」と書かれていますが、女性浴槽は「第2号泉 ポンプ出口」となっていますね。ということは男湯と女湯では別個の源泉を浸かっているということなのでしょうか? となれば女湯のお湯も気になるところです。


アルカリ性単純硫黄温泉 42.1℃ 
(詳細なデータの掲示見当たらず)

山鹿バスセンターより産交バスの南関線(平山経由)で「平小城」バス停下車、徒歩9分(700m)
(山鹿バスセンターまでは熊本駅・玉名駅・肥後大津駅などから路線バスに乗車)
熊本県山鹿市平山5084-4  地図

13:00~21:00
100円
ロッカーあり、他備品類なし

私の好み:★★★
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平山温泉 華の番台

2013年07月17日 | 熊本県

熊本県の平山温泉は数ある九州の温泉でも近年人気を集める注目のスポットでありますが、なぜ人気を博しているのかを私なりに考察したところ、そのひとつとして挙げられるのが、施設の多様性です。オーソドックスな旅館もあれば、家族風呂専門の施設もあり、大衆的な公衆浴場もあれば、女性にターゲットを絞った雰囲気の良い施設もある、などなど選択肢が多いんですよね。しかもそれらは全て田園風景の中に点在していて温泉街を形成していないために、どの施設も長閑で自然豊かな環境に囲まれており、手軽にちょっとした秘湯感が味わえるのも良いところです。従来の日本の温泉業界は、お湯の良さに胡座をかいたり、旧来の営業スタイルに拘泥するあまり、結果的に自分で自分の首を絞める結果に陥っているわけですが、少なくとも平山温泉においてはそうした陋習から脱しようとする頑張りが伝わってきます。

さて今回はそうした多様性に富む平山温泉の中でも、女性客にターゲットを絞った日帰り入浴施設である「華の番台」を取り上げてみます。こちらは隣接する「山懐の宿 一木一草」と同経営のようですね。
私も今でこそ休日を地方の温泉めぐりに捧げる生活を送ってますが、20代後半までは麻布・白金・青山・三宿・中目黒などの女の子受けするような飲食店に夜な夜な通って洒落た男を気取っておりましたので(鼻つまみ者ですね)、いまだにその頃の感覚がたまに頭を擡げ、自分の醜い容貌に似つかわしくないおしゃれな店に心を惹かれてしまうことがあり、今回も「華の番台」を見つけたときにはついつい過去の私のアンテナが反応してしまって、気づけば駐車場に車を止めてエントランスに向かって歩みを進めていました。


 
施設全体がアジアンテイスト、具体的にはバリ島をイメージしていると思しきデザインによって統一されており、駐車場の縁石にもそれらしき像が載っかっていました。階段の中央で水が流れているエントランスのアプローチからしてリゾート気分たっぷりです。


 
券売機で料金を支払い男湯へ向かいます。脱衣室は高級リゾートさながらで、とても広く清潔感が横溢しています。


 
ロッカーの扉は赤い木材製。ひとつひとつが大きくて使い勝手良好です。小上がりにはマッサージチェアーや扇風機があり、湯上りに涼む場所としても良いでしょうね。東南アジアテイストの施設ながら、この脱衣室だけは和風の内装となっており、これをバリエーションと理解すべきかコンセプトの迷走と捉えるべきかは判断に戸惑うところですが、ま、日本だってアジアの一員ですから、そんなことでいちいち重箱の隅を突く必要はありませんね。


 
洗面台も数が多くて非常に綺麗。アメニティも充実しています。某ビジネスホテルでは男性向けのアメニティを充実させたら客室の稼働率がアップしたそうですが、今やアメニティ類は女性のみならず、男にとっても重要なのであります。



脱衣室から階段を下って浴室へ。風呂と発音するのではなく、BathやSpaと表現したくなるような、広くて綺麗でリゾート感溢れる室内です。入浴槽は大小ひとつずつあって、小は水風呂です。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が7基設置されており、お湯のコックを開けると源泉が出てきます。備え付けられているシャンプー類は2種類あって、好みの方をチョイスすることができます。また子供でも楽しく入浴できるよう、カエルさんの腰掛けが用意されていました。


 
画像左(上)の壺に注がれているのは上がり湯。画像右(下)はサウナでちゃんと水風呂もありますから、たっぷり汗をかきたいお父さんでも満足して利用できるはず。


 
大きな主浴槽の真ん中には蓮の花を象った湯口が突き出ており、花弁を滴りながら湯船にお湯を満たしています。この手の施設はえてして湯使いに難がある傾向にあるのですが、さすが温泉にうるさいお客さんが多い九州だけあって、こちらでは見事に掛け流しの湯使いとなっており、浴槽縁よりしっかりした量がオーバーフローしていました。浴槽の立ち上がりにも細かなレリーフが施されており、オーバーフローのお湯はそのレリーフの上を滑るように滴っていました。なお浴槽の右側は浅くなっており、寝湯するにはちょうど良さそうな具合になっています。


 
露天エリアもお風呂というよりビーチリゾートのプールサイドやガーデンテラスのような、明るく非日常的な雰囲気です。露天エリアには3つの温浴槽があり、そのうち露天出口の正面に位置しており浴槽(画像右)は船の帆のような形状をしており、屋根掛けされていて、いかにもバリっぽい彫り物が施された石からお湯が注がれ、縁からしっかりと溢れ出ていました。



露天エリアにもシャワー付き混合水栓が3つ設けられているので、もし内湯の洗い場が混んでいたら、こっちを使えばOKですね。


 
露天エリアの床タイルにも、風呂の屋根の欄間にも、蓮の花の模様が施されています。イメージ造りが徹底していますね。



脱衣室側には上下2段に分かれている浴槽もあり、湯口のある上段から下段へお湯が流れるようになっているため、上段は適温であるものの、下段の浴槽はかなりぬるめでした。



適温の上段に入ると、こんな眺めを楽しめます。緑豊かで静かな環境の中、のんびりと湯浴みできる幸せなひととき。


 
二人が上に抱える壺を象った湯口より、ちょっと熱めのお湯が直下に据え付けられている木の箱へ一旦注がれています。この箱は底が開いており、あくまで私の推測ですが、熱対流によっていくらか温度が下がったお湯が箱の下部から浴槽へ出ることにより、浴槽の温度を調整しているのでしょう。もちろんこちらも湯使いは掛け流しです。
肝心のお湯についてですが、無色澄明で一見すると普通のお湯のように見えますが、じっくり味わうとかなり奥深くて面白いお湯であることがわかります。具体的にその特徴を列挙しますと、湯中では半透明で薄い白色系の湯の花がちらほら浮遊しており、極僅かなタマゴ感(匂いと味)のほか、柑橘類の皮のような清涼感と微収斂が組み合わさった苦味、爽やかさを伴うアブラ的知覚が感じられます。ヌルヌルまでは及びませんがそれに近い程度のツルスベ浴感が得られ、特に入浴中に肌を擦るその刹那は誰でも自分が美人になったと勘違い(笑)できちゃうこと間違いなし。分析表によればメタケイ酸イオンが53.1mgと表記されているのですが、これが事実であれば全国屈指の多さであり、少なくとも九州の温泉では一番か二番を争うような多さかもしれません(非遊離成分のメタケイ酸(H2SiO3)だったら話は別ですが…)。その一方で硫化水素イオンが4.7mgも含んでいるのにあまりイオウ感が得られなかったのは意外でした(日によるコンディションの上下が激しいのかな)。

施設としてのコンセプトがしっかりしており、綺麗で使いやすく、しかもお湯も良質。にもかかわらず、料金はわずか350円なのですから、本当に恐れ入ります。もう関東地方で暮らしているのがバカバカしくなっちゃいました。今すぐにでも九州に移住したい気分です。お湯にこだわる方も、SPAとしての施設面や雰囲気を重視する方も、両方が満足できる素晴らしいお風呂でした。


アルカリ性単純硫黄温泉 46.5℃ pH10.00 溶存物質252.3mg/kg 成分総計252.3mg/kg
Na+:77.7mg(97.41mval%),
Cl-:44.8mg(32.23mval%), HS-:4.7mg(3.58mval%), HCO3-:33.6mg(14.07,val%), CO3--:24.1mg(20.46mval%), SiO3--:53.1mg(17.65mval%),
H2SiO3:ND,

山鹿バスセンターより産交バスの南関線(平山経由)で「平小城」バス停下車、徒歩11~12分(約900m)
(山鹿バスセンターまでは熊本駅・玉名駅・肥後大津駅などから路線バスに乗車)
熊本県山鹿市平山陣ノ内4998  地図
0968-44-0887
ホームページ

10:30~22:00 第1・3火曜定休(ハイシーズンは営業)
350円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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平山温泉元湯

2013年07月16日 | 熊本県

九州で近年人気を博している熊本県の平山温泉。
田園風景の中に温泉施設が点在しており、わかりやすい温泉街こそ形成していないものの、施設数はかなり多く、しかも旅館や日帰りの家族風呂など多様な営業形態の施設が選択できるために、私が訪れた平日でも多くの観光客がこの地で湯浴みを楽しんでいました。
さてそんな中でも今回私が選んだのは公衆浴場「元湯」です。平山温泉の公衆浴場といえば鄙びた風情でファンから熱い支持を受けていた「温泉センター」が道路拡張工事に伴い数年前に閉鎖されてしまい、その代替として近接地で2009年8月にオープンしたのがこの「元湯」。ここには元々「栄楽」という旅館が営業していたんだそうでして、後述しますが、施設内にはかつての旅館の形跡がかなり残っておりました。


 
ロビーの券売機で料金を支払い、券をカウンターのおばちゃんに手渡して男湯へと向かいます。フローリングの広いロビーでは野菜や各種食品などが販売されており、さながら地元の食料品店のようでもありました。


 
男湯と女湯では造りが違うようですが、私はまがいなりにも一端の男ですので、当記事では男湯についてのレポートとなります。あしからず。
ウッディーな脱衣室を抜けると公衆浴場らしからぬ石造りの立派な湯船が迎えてくれました。大きなガラス窓から外光がさんさんと降り注ぐ湯船の手前側には洗い場が左右に分かれて配置されており、計6基(左側×2、右側×4)のシャワー付き混合水栓が取り付けられています(出てくるお湯は真湯)。


 
石板貼りの浴槽は石の仕切りによって左右に分割されており、湯口のお湯がダイレクトに注がれる右側は小さな4人サイズで湯加減は熱め、一方の左側はゆとりのある8~10人サイズで、右側の槽よりわずかに低い位置に設けられており、右側の槽から流れてくるお湯を受ける形になっていて、これにより湯加減は万人受けする調度良い加減になっていました。

左右の浴槽を見比べると、同じお湯なのに見た目に若干異なっていました。具体的には、湯口から直接お湯が投入されている右側では無色で澄み切った透明であるのに対し、左側では微かに白く霞んでおり、白い湯の花も左側の方が目立って浮遊していました。見た目のみならず、実際に入浴してみても体感の違いは明らかで、熱い右側は鮮度が抜群でシャキっとしているのに対し、左側は入りやすい温度であるものの鮮度感がイマイチで若干お湯が疲れているような感じを受けました。

湯口のお湯を手に掬って口にしてみますと、薄いタマゴ味と匂い、そしてアルカリ性単純泉らしい微収斂がはっきりと感じられ、ヌルっとした感触を伴うツルスベ感もしっかり肌に伝わりました。総硫黄が1.9mgのためギリギリのところで硫黄泉を名乗れないのが残念なところですが、ちゃんと硫黄の存在(タマゴ感)は確認できます。


 

浴室の窓の外には使われていない露天風呂や五右衛門風呂、そして内湯の廃墟が晒されていました。これらは旅館「栄楽」時代のお風呂なのでしょうね。庭の斜面は日本庭園の趣きがあるのですが、使われなくなって錆びきった五右衛門風呂の一つには澱んだ水が溜まっていたり、庭木の枝や雑草が伸び放題だったり、鉢なども散らかったままだったりと、荒れた状態のまま放置されてしまっているようで、ちょっと残念でした。なおこの露天風呂跡は立入禁止というわけではなく、浴室から自由に行き来することができ、露天ゾーンではシャワーがひとつだけ生きていて、実際にそのシャワーで水浴びをしているお客さんもいらっしゃいました。せっかくですから、せめて露天だけでも活かしてあげたらいいのに…と考えてしまいますが、湯量の問題などで難しいのかもしれませんね。ま、屋外はともかく、お湯はれっきとした良質の掛け流しですから、湯浴みする分には問題なし。リーズナブルに良いお湯を楽しめる質実剛健なお風呂でした。


1号泉
アルカリ性単純温泉 44.6℃ pH9.22 溶存物質0.22g/kg 成分総計0.22g/kg
Na+:59.3mg(97.11mval%),
Cl-:22.8g(22.45mval%), HS-:1.9mg(1.98mval%), HCO3-:28.3g(16.13mval%), CO3--:38.3mg(44.43mval%),
H2SiO3:57.3mg,

山鹿バスセンターより産交バスの南関線(平山経由)で「平山温泉前」バス停下車すぐ(11分・250円)(山鹿バスセンターまでは熊本駅・玉名駅・肥後大津駅などから路線バスに乗車)
熊本県山鹿市平山256  地図
0968-43-2041
平山温泉観光協会HP

6:00~21:30
200円
ロッカーあり、ドライヤーなし、シャンプー類等の販売有り

私の好み:★★
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杖立温泉 やまがや旅館

2013年07月15日 | 熊本県
 
杖立温泉では20近い宿泊施設が営業していますが、なぜかどのお宿も(湯治宿以外は)平均単価が周辺の温泉地よりちょっと高めに設定されており、1泊2食付きで4桁以内を希望していた私は宿の選定に困ってしまったのですが、そんな中でも今回は比較的リーズナブルな料金設定で私の希望に近かった「やまがや」さんで一晩お世話になることにしました。


●お部屋
 
一人で宿泊するにはもったいないほど広くて綺麗な和室。トイレは共用ですが洗面台は室内に設けられていました。便利ですね。


 
窓からは杖立川の流れや川に沿って建ち並ぶ温泉街、そして歩行者専用の「杖立橋」が眺められました。端午の節句の時季でしたら杖立名物の鯉のぼりが間近に楽しめる特等席になりそうですね。なお窓の真下に見える赤い屋根は、前回記事で取り上げた某共同浴場です。


●お食事

こちらのお宿でいただいたお料理には圧倒されました。次々と出される彩り豊かな献立・盛り付けの美しさ・ボリューム・そして美味しさ、その全てがとにかくスゴイのです。割烹料理の上品さと家庭料理の溌剌さ、女性らしさと男性らしさ、和と洋、などなど普通ならば拮抗しあう特色がハーモニーを奏でながら共存しており、「滋味豊かな地のものを味わいたい」という方も、「とにかく腹いっぱい食いてぇ」という方でも双方が満足できるような内容になっていました。
まず、画像の左からトロロのあんがかかった茶碗蒸し・蕨や芹の先付・鯉の洗い。


 
画像左(上)は甘鯛若竹の蒸し物、右(下)はお吸い物で若竹豆腐清まし。


 
画像左(上)は地元小国産の黒豚をオイスターソースで炒めたもの、右(下)は木の芽グラタン。



馬肉ステーキ・あさりの赤だし・ごはん。さらには食後のデザートも付きます。
これだけたくさん出されると、いくら無芸大食の私とはいえ胃袋が徐々に苦しみを訴え始めるのですが、でもバラエティーに富むメニューやそれぞれの美味しさが胃袋の苦しさを抑えこみ、気づけば結局全て完食してしまいました。



朝食もボリュームたっぷり。朝からしっかりいただいて、その日一日の鋭気を養いました。比較的オーソドックスな献立ですが、一品一品丁寧に料理されており、お宿の真心が伝わってきます。


●お風呂
 
お風呂は男女別の内湯のみ。建物自体はかなり年季が入っているのですが、随所にガラスブロックを多用したり、あるいは一見質素に見える脱衣室内にも手の込んだ意匠が施されていたりと、建築当時はかなり洒落た内装ではなかったかと想像に難くなく、しかも現在でもとても綺麗に維持されており、余計な張り紙や飾りが無いので上品な雰囲気です。
浴室で男女両浴室を仕切る壁にはガラスブロックにも用いており、向こう側が見えそうで見えない大人な雰囲気には、思わずため息が出てしまいます。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計3基設置されています。天井を見上げると葦簀が張られていました。その天井からかあるいは別に通気口があるのか(はたまた単に窓が開いていただけなのか)、浴室内には常に外気も入ってくるため、お風呂にありがちな湯気篭りが全くなく、まるで半露天風呂にいるかのような空気感の中で湯浴みすることができました。


 
湯船は8人サイズの四角形で、角がとれて丸くなっているため、見た目に優しい印象を受けます。浴槽内にはエメラルドグリーンの小さな丸いタイルが敷き詰められており、お湯の揺らめきによって色合いを変えるそのタイルは、艶やかな美しさを魅せつけていました。
湯口からは熱い源泉が少しずつ投入されています。館内表示によれば気温の高い時には加水されているとのことですが、おそらく投入量を絞ることによって湯温を調整し、加水を極力減らしているのではないかと思われ、そのおかげで実に心地よい湯加減がキープされていました。放流式の湯使いですからお湯の鮮度感も良好。トロミのある滑らかな肌触りに癒される、優しいフィーリングのお湯です。
お湯は無色澄明、杖立の地獄釜から立ち上っているような噴気帯的な硫黄の匂いがほのかに漂い、微かな塩味と硫黄味が感じられました。


 
こちらには杖立温泉名物の「蒸し風呂」も設けられていましたので、もちろん利用させていただきましたよ。男女両浴室の奥にあって、室内では男女間が繋がっていますので、いわゆる混浴状態での使用となります。このためこちらのお宿では女性専用タイムが設定されていますので、詳しくは現地にてご確認を。いざ、体を屈めて小さな扉をくぐって内部へ潜入だ。



蒸し風呂の室内はこんな感じ(といっても半分以上は影になって見えませんね。ごめんなさい)。室内には茣蓙が敷かれており、そこへ大の字スタイルで仰向けになって、5~10分ほど蒸されるわけです。ほんのり硫黄の匂いが漂う室内で横になっていると、下の方からピチョンピチョンと水の滴る音が聞こえてくるのですが、それもそのはず、こちらの蒸し風呂では底に温泉を溜めて、そこから上がる湯気(熱)で蒸す方法を採っているんだそうです。いわゆるミストサウナ的なものですが、熱さはマイルドですし湯気の篭り方も軽度なので、一般的なサウナのような苦しさは感じられず、体への負担も少なく、気楽な感じで長い時間入ることができました。サウナが苦手な方でもこれなら利用できるでしょうね。


弱食塩泉(ナトリウム-塩化物温泉) 98.8℃ pH7.4 1260L/min(自然湧出) 溶存物質1679.1mg/kg 成分総計1679.1mg/kg 
Na+:459.9mg(85.20mval%),
Cl-:701.2mg(84.25mval%), SO4--:126.9mg(11.26mval%),
H2SiO3:244.1mg,
(昭和28年2月10日)
加温循環消毒なし、気温の高い時に水道水で加水

熊本県阿蘇郡小国町大字下城3396  地図
0967-48-0338
ホームページ

立ち寄り入浴時間不明
500円
シャンプー類あり(ドライヤーは客室にあり・脱衣室内には無し)

私の好み:★★★
コメント (6)
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