文化逍遥。

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映画『ニーゼと光のアトリエ』

2016年12月26日 | 映画
 12/22(木)、千葉劇場で2015年/ブラジル映画『ニーゼと光のアトリエ』を観た。監督 ホベルト・ベリネール、出演 グロリア・ピレス/シモーネ・マゼール他。

 1944年のブラジル、とある精神病院で働くことになった女性医師のニーゼと患者達の物語。当時の精神病患者に対する治療法は、電気ショックやロボトミー手術などで、患者達の人間性を認めないものだった。ニーゼは、ユング心理学に影響を受け、あらたな取り組みとして病室をアトリエにし、そこで自由に絵を描かせたり、塑像作りをやらせたり、あるいは犬を飼育することなどによるセラピーを試みる。その取り組みは少しずつ効果を上げ成功したかに思えたが、古い体質を持つ男性医師達の反発を買って・・・。

 過渡期にあった南米の病院における精神病治療の歴史的現実を描いているが、旧習にこだわる男性医師達を悪、新たな試みをする者達を善と、くっきり分けて描き過ぎているように思った。1944年といえば、第二次世界大戦が終ろうとしている頃に当たる。映像はほぼ病院内に終始し、精神疾患を生み出す要素のひとつであろう当時の南米の社会的な状況は、ほとんど描かれていないのが残念だった。

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