文化逍遥。

良質な文化の紹介。

帚木 蓬生著『水神』(2009年新潮社刊)

2017年11月24日 | 本と雑誌
 最近、図書館から借りて読んだ本から一冊。

 図書館といえば、先日、館内の視聴覚コーナーの横を歩いていた時の話。「ちょっと、お兄さん・・」という声、近くを見渡してもわたし以外には誰もいない。思わず声の方に振り返ると、「これの使い方知らない?」と訊かれた。DVDの再生機器の使い方が分らなかったらしい。歳の頃なら70位の女性だったが、まさか還暦にもなって「お兄さん」と呼び止められるとは思わなかった。おどろいたねえ、どうも。もっとも、年齢差を考えれば不思議ではないかもしれないが、世の中高齢化してるんだなあ、と、肌で感じた次第。どっかのタレントみたく、今から子どもでも作ってみるか。もっとも、相手にしてくれる妙齢の女性がいれば、の話だが・・まあ無理だな。


 さて、本題。著者の帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)氏は、1947年福岡県小郡市生まれ、東京大学文学部仏文科卒、九州大学医学部卒で、小説家でもあり精神科の医師でもある。わたしは氏の小説を読むのは今回が初めてになる。



 『水神』は、上・下二冊の長編書き下ろし時代小説。設定は1660年代の筑後久留米藩(有馬家)で、筑後川の近くに位置するも高い台地にあるため水利に苦しむ村々の庄屋五人が堰を作り水を引くまでの苦難の物語。と、言ってしまえばプロットは単純で地味な話だが、時代考証にかなり具体性があり、当時の庶民生活が生き生きと描かれ、その空気までもが伝わってくるようだ。全体に、善人ばかりが出てくる様な気もするが、そこはまあ、小説ということで楽しみたい。同じ著者の、他の著作も読んでみたくなった。「天は二物を与えず」ともいうが、世の中には、才能に恵まれた人がいるものだ。実に、どうも恨めしい、じゃなかった羨ましい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする