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2016年カナダ映画『彼女が目覚めるその日まで』

2017年12月24日 | 映画
 12/21(木)、千葉劇場にて。実話を基にした映画で、原作は当事者のスザンナ・キャハラン(Susannah Cahalan)著『Brain On Fire:My Month Of Madness』。監督はジェラルド・パレット。



 映画の原題は、著作と同じく『Brain On Fire』。直訳すると「炎に焼かれる脳」となるが、これは映画の中では、紆余曲折の末に病の原因にたどり着いた医師が発する言葉で「(自己免疫疾患による)脳炎」の意味である。

 21歳になったスザンナ・キャハランは、ニューヨーク・ポスト紙で働き始めた活発な女性で、今は別々の家庭を持つ両親とも恋人ともうまくやっている。しかし、徐々に行動に異変が表れはじめ、時に激しい痙攣を起こし錯乱状態に陥ってゆく。様々な検査を受けるが異常は見つからない。最終的には、精神病院への転院が検討されるが・・・。

 この映画、家族の支えを中心とする愛情の物語としてみれば邦題の『彼女が目覚めるその日まで』ということになるかもしれない。が、ストレートな観方というか、素直に観れば、現代医療の抱える深刻な問題を突いた作品といえる。手順通りの検査をして異常が見つからなければ「正常」と判断を下される。それでも、本人は苦しみ、体は動かなくなってゆく。しかし、医者達は決まった手順以上のことはしようとはしない。程度の差はあれ、日本でも同じ状況だ。そこを中心的テーマとして観てこそ、この映画『Brain On Fire』の価値が認められるのではないか、と感じた。

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