文化逍遥。

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2017年アメリカ映画『ウィンド・リバー』

2018年08月02日 | 映画
 7/31(火)、千葉劇場にて。午前10時からの上映に入ったが半分ほど席は埋まっていおり、千葉劇場にしてはけっこう混んでいた。暑いので午前中に観よう、と考えるのは皆同じか。監督・脚本は、テイラー・シェリダン。





 基本的にはサスペンス映画と云えるだろうが、非常に良く出来た作品だった。
 アメリカ中西部、酷寒の森林地帯の中にある「Wind River(ウィンド・リバー)」と呼ばれる先住民居留区で起きた強姦、殺人事件を追うFBIの若い女性捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)と、その捜査に協力するハンターであり遺体の第一発見者でもあるコリー(ジェレミー・レナー)。映画は、二人が事件の真相を追う中で、アメリカ社会から取り残され心身ともに疲弊した先住民達の現実や、辺境の地で働く白人労働者の鬱屈し荒んだ精神性を描いてゆく。

 実際に起こった事件を基に作品化されたという。映画の冒頭では道路標識が大きく映し出され、そこには「Wind River Indian reservation」と表示されている。「インディアン特別保留地」、閉鎖性と差別が今でも横行する土地であることを暗示して映画は始まる。そして、行く手を阻む雪に閉ざされた森林や山々などの映像、緊迫感が最後まで途切れず107分の上映時間が短く感じるほど。あえて、難を言えば、加害者側があまりに「心」を失った非人間的状態に描かれていたように感じたことだったが、いずれにしろ、アメリカの暗部を描いた佳作と言える。

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