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水木しげる著『コミック昭和史1~8』

2018年08月14日 | 本と雑誌
 今年も、広島と長崎の原爆忌が過ぎ、8月15日がやってくる。酷暑の中での長崎の追悼式典では、国連事務総長のスピーチが心に残った。
 そして、8月8日には翁長雄志(たけし)沖縄県知事が67歳で亡くなった。もともとは自民党の沖縄県連会長で、辺野古移転も容認していたというが、政府のあまりに一方的な対応に反発して基地移転を容認しない人の中心的存在になったという。この人は1950年沖縄生まれで、1975年に法政大学の法学部を卒業している。わたしが同校に入学したのが1977年で、すでに翁長氏は卒業した後だし、わたしは文学部だったので知りえることはない。が、市ヶ谷の校舎などは同じで、当時の混乱したキャンパス状況はさほど変っていなかったはずだ。70年安保闘争の余韻が残り、移転問題があり、さらに新左翼の各セクトのせめぎ合いの末の内ゲバ、挙句に死者まで出た。わたしは、5年間在籍していたが、後期の試験が行われたのは1回だけだった。そんな中で青春時代を過ごした沖縄出身の保守政治家が政府に対抗し、癌を患い志半ばで急逝せねばならなかった人生を改めて想い、ご冥福をお祈りしたい。
 実は、もう一人法政大学の法学部を近い時期に卒業した保守の政治家がいる。菅義偉(よしひで)官房長官だ。1948年秋田県生まれで、1973年に卒業しているので、地方出身の翁長氏と境遇が似ており、あるいは学内での面識があったのかもしれない。10日に行われた翁長氏の通夜にもわざわざ沖縄まで行き参加しているのも、あるいはそのためかとも思う。

 沖縄経済は、すでに基地依存度が5%程度だと云われている。観光客が増え、住みやすい気候なので移住者も多く人口は増えている。実際この夏の気象情報などみていると、本州が連日猛暑日を記録しているのに、沖縄は31~2度でとどまっている。これは、アフリカなどでも赤道直下よりもその南北周辺が暑くなり砂漠化するのと同じで、地球規模のフェーン現象らしい。そんなことも考えあわせて、今後の米軍基地の在り方を根本的なところから考えなおしてみたい。



 さて、そんなわけで、平成最後の夏に「昭和」という時代をもう一度考えてみようと思い、水木しげる著『コミック昭和史1~8』を本棚から出してきて読み直していた。著者自身南太平洋に従軍し、左腕を失い帰還するという経験をしている。これはそんな経験を中心に自伝的にまとめられた歴史漫画だ。読んでいるのは講談社のコミック文庫だが、単行本は1988年にコミック社から出ている。なので、書かれたのは1980年代と思われる。つまり、古い史料を参照して書かれている部分も多いので、今となっては史実と少しずれていると言わざるをえない個所もある。が、全体に良くまとめられ、今でも十分読む価値のある長編漫画といえる。

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