文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2018年日本映画『斬』

2018年12月01日 | 映画
 11/29(木)、千葉劇場にて。

 

 監督は塚本晋也で、自身も剣の達人である浪人役で出演。
 幕末期、江戸近郊のとある農村。そこで百姓仕事の手伝いをして暮らしている文武両道の若い浪人(池松壮亮)。彼は、義に殉じて江戸に向かい幕府の義士となるべく志していた。そして彼を慕う農民の娘(蒼井優)は、静かに彼を見守りつつも不穏な状況に不安を隠せないでいるのだった。そんな頃、同じ志のある浪人がその村にやって来て、共に江戸の向かおうと声をかける。しかし出発の朝、若い浪人は高熱で倒れ、ちょうどその頃村に無頼の者たちが跋扈しはじめて・・・。

 この映画、評価は分かれるところだろう。時代劇としては失敗している、と思った。言葉は農民も武士も全て現代標準語で、その時代を表す考証がほとんどなされていない。あるいは土地の管理をする役人・差配なども、ほとんど登場しない。やたらと音響効果を使い、殺陣のシーンではアングルが目まぐるしく変わり、逆効果に感じた。一方で、義―すなわち理想に忠実に生きようとする時になさねばならぬ行動、この場合は敵を斬る事―の為の殺人を受け入れられず苦しむ人間像を描いている点では、ある程度評価できる、とも感じた。この映画、新撰組隊員の持っていたであろう苦悩を想像して制作された作品なのかもしれない。
 いずれにしろ、血が流れるシーンがかなりリアルに続くので、食事の前には観ない方がいいかも。

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