『どくろ杯』
この本も、週刊プックレビューの中で紹介され
ました。
しかし、この手の番組で紹介するのは最近刊行された
本に限るのかと思いきや、この本はかなり古い本です。
出てくるのは大正生まれの詩人が昔パリに行ったときの
話です。
というと、実に優雅な詩行の旅かと思いきや
これが実にもどかしい話で本当なら人に話してしまうのも
たばかれる恥ずかしい旅なのです。
それが訥々とあっさりと白状してしまうように昔のこと
だということで書いてしまったのか、今となっては貴重な
紀行文です。
今でこそ、世界をリードする新興国として、毎年二桁の
経済発展を遂げる中国ですが、ついこの間はこんなだったと
改めて思わせる不思議な感覚に満ちています。
戦前の中国はそうだったと改めて思い出すべきことに満ちて
いたと気がつくのです。
北京オリンピックを成功させ世界の中心の感じ一杯の今の
中国ですが、アジアの各地というのは植民地時代にヨーロッパ
列強により作られた都市が基で港も空港もその時のものが
下地に発展したことを思い知らされます。
こういう戦前の記憶を知らせてくれるものというのは読んで
おくべきです。
私は番組で紹介されたときの感じからパリに行く本と聞いて
いたので、それがなかなか日本を出ないし、さらにこの本では
上海がメインで、結局パリに向かったのは彼女だけ。どうなった
んだよそれから。
ということで、次の本も注文しました。この先は、『ねむれ巴里』
『西ひがし』という本に続くのです。
読書の醍醐味としては、今まで知らない事柄にであったり、読めない
字句に出会い、それからいろいろと知識が広がるという、知の楽しみ
という側面があります。
しかし、最近の本にその知の楽しみを味わせてくれるものはなく、
読めない字句も出てきません。
この本ではそんな読めない字句や、意味のわからない言葉や
日本語が変だろうというところが多々あります。
味ったという言い方もあったり、アナルシストという言葉も
多分アナーキーのことなんだろうと見当はつきますが、今ネット
で検索して御覧なさい、恥ずかしい検索をする人になって
しまいます。
カタカナ表記の仕方が違うだけなんだけどかなり頭を使わないと
何のことという意味がつながらない文章だったり、詩人として
味のある文体とは言いづらい綴り物ながら、著される世界は
今は見ることのできない戦前の世界をはっきりと見せてくれ
ました。