ウイキペディアを見ると、
「カレー( Curry、カリー)は、複数の香辛料を使って野菜や肉などのさまざまな食材を味付けした料理をいう。
インドとその周辺国で作られていた料理をもとに発展し、現在では国際的に人気のある料理の一つとなっている。
日本では、明治時代にイギリス経由で伝わり独自の進化をとげたカレーライスが国民食と呼ばれるほどの地位を得ており、
日本でカレーといえばカレーライスを指す場合が多い。」とあります。
このカレーについて、またまた受け売りで申し訳ありませんが、いつもの友人H氏からのネット情報に
身近な話題がありましたので、ここに取り上げさせていただきました。(内容無断で一部省略しました。)
************************************
『カレーの経営学』
井上 岳久 著 東洋経済新報社 2012/05 192p 1,575円
序.カレーを知れば、ビジネスの本質がわかる
1.ハウス食品に学ぶ創業の「秘伝」
2.カレー業界は経営戦略の宝庫
3.「バーモントカレー」はマーケティングの教科書
4.コンスタントにヒット商品を生み出す研究開発の法則
5.ライバルを撃破する競争戦略
6.できる会社の財務会計はここが違う
7.人事制度で社員の連携は図れる
【要旨】日本の大衆的な国民食として、ラーメンとともにカレーを挙げる人は多いのではないだろうか。
実際、日本国民は平均して週に一度はカレーを食べているという。本書では、そんな日本人にとってきわめて身近であり、
さまざまな関連ビジネスを生んでいる「カレー」を題材に、経営学のエッセンスを解説している。
とくに、「バーモントカレー」をはじめとするヒット商品を数多く製造・販売し、業界シェアの過半数を占める
リーダーカンパニーであるハウス食品にスポットを当て、その経営戦略やマーケティング、商品開発や財務会計、
組織・人事制度にまで着目。ライバル企業との競争にもふれながら、成功の要因等に迫っている。
著者は、2007年に閉館した「横濱カレーミュージアム」の館長兼プロデューサーの後、「カレー総合研究所」を設立、
代表を務めている。
------------------------------------------------------------
カレーは辛いものである。そんな常識を覆したのが、1963年に発売されたハウス食品の「バーモントカレー」です。
現在でも単品でカレールウ市場のシェア約3割をキープしているお化け商品。その誕生は確かな消費者調査に
裏打ちされたものでした。
それまで家庭の食卓では、「大人はカレーライス、子供はハヤシライス」と棲み分けができていました。
けれどもカレーは学校給食で人気を呼び、家でもカレーを食べたいという子供たちの需要は膨張し続けていました。
ハウス食品が調査した結果、家庭では牛乳を入れたり、りんごをすりおろしたりしてカレーの辛さを和らげている
こともわかりました。そうしたニーズを的確につかみ、開発したのが「バーモントカレー」です。
バーモントカレーは単に辛くないだけでなく、美容と健康にも良いというのが母親たちを納得させる材料となりました。
実は発売から売れるまでには時間がかかりましたが、次第に人気商品となり、最盛期にはたった一ブランドで
市場全体の4割強を占めるまでに成長したのです。
幼稚園児や小学生がいる家庭は、カレーを消費する最大のボリュームゾーンですから、そこにミートしたのが、
まず最大の勝因です。けれどバーモントカレーには、ハウス食品の優位を決定付ける、もっと壮大な戦略が
あったのです。
通常、家庭の食卓は子供を中心に組み立てられているものです。そして一度一つの味に馴染んでしまうと、
中々別の品には替えられない商品特性がカレールウにはあります。
子供が成長して少しずつ辛くしていくにしても、大きく味は変えられないので、同じシリーズの中で
スイッチすることになります。その「囲い込み」をより確実にしているのが、パッケージの裏側に印刷された
辛さの度数表示で、自然とハウス製品の中だけで移行するように促してあるのです。
人間の味覚は11歳で形成されるという説もあり、子供時代に食べた味は自分の好きな味として記憶に残ります。
生まれて初めて食べるカレーを「ファーストカレー」と呼びますが、バーモントはそのポジションをガッチリとつかみ、
ハウスファンを一生離さず、次世代へとつなげていく磐石な「ライフサイクル戦略」を行っているのです。
日本でカレーがこれほどまでに受け入れられたのは、南インド地方の、古来日本人が食べ慣れた「ご飯」にかけて
食べるものとしてヨーロッパを経由して入ってきたからです。
もし北インド地方のナンやチャパティで食べる料理として入ってきたなら、これほどまでにカレーという料理は
日本では受け入れられなかったと思います。
また日本に入ってきたカレーは、カレー粉で具材を煮込んだだけのシンプルなものでした。
だから日本人の口に合う食べやすい味にアレンジしやすかったといえます。
カレーが広まっていない国の人に、なぜカレーが好きでないのか聞くと、スパイスが臭いからという答えが
返ってくることがあります。その点、古くから中国との関係が深かった日本人には漢方は馴染み深いものでした。
つまり DNAのレベルで食べ慣れていたものだったのです。
以上のように考えてくると、人が感じる「美味しさ」の基準には、食べ慣れていることが強く影響している
ことがわかります。家のカレーは、一度使い始めたルウをなかなか変えられないのも、味覚の絶対基準ができる
といわれる11歳の頃に食べたバーモントカレーが圧倒的なシェアを誇っているのもうなずけるわけです。
カレー商品というと現在はカレールウとレトルトカレーが二大商品です。この二つのマーケティングや
商品開発は微妙に異なります。
その違いの源となっているのは、ルウとレトルト、それぞれのターゲット層、すなわちそれを欲する消費者層と
シーンの違いです。まずルウでカレーを作る光景を想像してみましょう。それは家族の食事に代表されるように、
大鍋で大人数分を作っている光景です。これに対してお鍋にレトルトパックを入れてカレーを作っているのは、
一人分を作りたい人が圧倒的多数です。
家庭で作るルウカレーは、お父さんお母さんから子供まで、全員が美味しいと思えるカレーでなければなりません。
そして、家庭のカレーはルウを変えるのが難しい。変えると家族から「今日のカレー、味がいつもと違う」などと
ブーイングを浴びることになるので、お母さんはなかなか冒険ができないのです。
つまるところ、カレールウの開発は、なるべく大勢の人が長期にわたり美味しいと思える安定志向の商品が
中心ということです。
対してレトルトカレーはどうでしょう? もしスーパーやコンビニの商品棚に目新しいレトルトがあったら
食べてみたいと思う人が多いのではないでしょうか。しかも、万一それで失敗しても、おいしくない責任を取るのは
自分一人だけです。
つまりレトルトカレーの開発は、安定志向ではなく、挑戦的な商品も対象になるということです。
だからこそ、全国で1000種類を超えるような膨大な類のレトルトカレーが誕生しているのです。
こうした個食とファミリー食の違いはカレーに限ったことでなく、食品全般にいえることです。 (中略)
インドのカレー
(ウイキペディアより)
昭和30年代初め、カレー業界はまだ、家族経営レベルの会社が全国各地にひしめいている状態でした。
この時期に、ハウスが「うちはカレー粉の会社だから」と固執して、インスタントカレーやカレールウなどに
手を拡げなければ、今でも家の隣に小さな工場があって、親子で細々とカレー粉を作っているような会社だったかもしれません。
終戦後の復興期までのカレー業界は、多くのメーカーがどんぐりの背比べをしている状況でした。
そこから時代の流れに乗って、臨機応変に対応した数社が抜け出し、現在の大手として勝ち残ってきたのです。
ハウス食品には、こんなエピソードもあります。
数年前、小麦粉の価格が上昇して、メーカーが自社商品の値上げを迫られたことがありました。
メーカーの選択としては(1)価格を上げる(2)量を減らして価格を据え置く、の二つが考えられるわけですが、
一般的に消費者は値上げを嫌うので、多くの企業が(2)を選択しました。
ところがハウス食品が取ったのは(1)の値上げだったのです。
実はそれまでの調査で、消費者はあまりパッケージの裏の調理法を読まないことがわかっていたからです。
カレールウの内容量を減らせば、当然お湯の量も従来より減らした記載になるのですが、多くの購入者は
それを読まずに、いつもの分量で調理をしてしまう可能性が高いのです。
そうするといつもより薄めのカレーができてしまい、美味しくないイメージを与えてしまう
という、
そちらのリスクを回避する方をハウス食品は選択したのです。
そこにはハウス食品という企業のプライドも窺える気がします。
結局この判断は正しかったようで、売上に大きな影響はなかったそうです。
コメント: 安定志向で「定番」が存在するルウと、新しい挑戦ができるレトルトの、二つのターゲットを持っていることが、ハウス食品をはじめとするカレー業界の大きな強みなのだろう。ルウというベースがあるから、他種の商品展開が思い切ってできる。価値観が多様化する現代にあって「定番」を持っているというのは、きわめて幸運なことといえる。バーモントカレーのような、人々の習慣や文化に根ざした定番商品を持ちえない業界の場合は、現代人に「習慣」をつくり出すような商品展開が有効なのではないだろうか。
Copyright:株式会社情報工場
シタールの演奏
「カレー( Curry、カリー)は、複数の香辛料を使って野菜や肉などのさまざまな食材を味付けした料理をいう。
インドとその周辺国で作られていた料理をもとに発展し、現在では国際的に人気のある料理の一つとなっている。
日本では、明治時代にイギリス経由で伝わり独自の進化をとげたカレーライスが国民食と呼ばれるほどの地位を得ており、
日本でカレーといえばカレーライスを指す場合が多い。」とあります。
このカレーについて、またまた受け売りで申し訳ありませんが、いつもの友人H氏からのネット情報に
身近な話題がありましたので、ここに取り上げさせていただきました。(内容無断で一部省略しました。)
************************************
『カレーの経営学』
井上 岳久 著 東洋経済新報社 2012/05 192p 1,575円
序.カレーを知れば、ビジネスの本質がわかる
1.ハウス食品に学ぶ創業の「秘伝」
2.カレー業界は経営戦略の宝庫
3.「バーモントカレー」はマーケティングの教科書
4.コンスタントにヒット商品を生み出す研究開発の法則
5.ライバルを撃破する競争戦略
6.できる会社の財務会計はここが違う
7.人事制度で社員の連携は図れる
【要旨】日本の大衆的な国民食として、ラーメンとともにカレーを挙げる人は多いのではないだろうか。
実際、日本国民は平均して週に一度はカレーを食べているという。本書では、そんな日本人にとってきわめて身近であり、
さまざまな関連ビジネスを生んでいる「カレー」を題材に、経営学のエッセンスを解説している。
とくに、「バーモントカレー」をはじめとするヒット商品を数多く製造・販売し、業界シェアの過半数を占める
リーダーカンパニーであるハウス食品にスポットを当て、その経営戦略やマーケティング、商品開発や財務会計、
組織・人事制度にまで着目。ライバル企業との競争にもふれながら、成功の要因等に迫っている。
著者は、2007年に閉館した「横濱カレーミュージアム」の館長兼プロデューサーの後、「カレー総合研究所」を設立、
代表を務めている。
------------------------------------------------------------
カレーは辛いものである。そんな常識を覆したのが、1963年に発売されたハウス食品の「バーモントカレー」です。
現在でも単品でカレールウ市場のシェア約3割をキープしているお化け商品。その誕生は確かな消費者調査に
裏打ちされたものでした。
それまで家庭の食卓では、「大人はカレーライス、子供はハヤシライス」と棲み分けができていました。
けれどもカレーは学校給食で人気を呼び、家でもカレーを食べたいという子供たちの需要は膨張し続けていました。
ハウス食品が調査した結果、家庭では牛乳を入れたり、りんごをすりおろしたりしてカレーの辛さを和らげている
こともわかりました。そうしたニーズを的確につかみ、開発したのが「バーモントカレー」です。
バーモントカレーは単に辛くないだけでなく、美容と健康にも良いというのが母親たちを納得させる材料となりました。
実は発売から売れるまでには時間がかかりましたが、次第に人気商品となり、最盛期にはたった一ブランドで
市場全体の4割強を占めるまでに成長したのです。
幼稚園児や小学生がいる家庭は、カレーを消費する最大のボリュームゾーンですから、そこにミートしたのが、
まず最大の勝因です。けれどバーモントカレーには、ハウス食品の優位を決定付ける、もっと壮大な戦略が
あったのです。
通常、家庭の食卓は子供を中心に組み立てられているものです。そして一度一つの味に馴染んでしまうと、
中々別の品には替えられない商品特性がカレールウにはあります。
子供が成長して少しずつ辛くしていくにしても、大きく味は変えられないので、同じシリーズの中で
スイッチすることになります。その「囲い込み」をより確実にしているのが、パッケージの裏側に印刷された
辛さの度数表示で、自然とハウス製品の中だけで移行するように促してあるのです。
人間の味覚は11歳で形成されるという説もあり、子供時代に食べた味は自分の好きな味として記憶に残ります。
生まれて初めて食べるカレーを「ファーストカレー」と呼びますが、バーモントはそのポジションをガッチリとつかみ、
ハウスファンを一生離さず、次世代へとつなげていく磐石な「ライフサイクル戦略」を行っているのです。
日本でカレーがこれほどまでに受け入れられたのは、南インド地方の、古来日本人が食べ慣れた「ご飯」にかけて
食べるものとしてヨーロッパを経由して入ってきたからです。
もし北インド地方のナンやチャパティで食べる料理として入ってきたなら、これほどまでにカレーという料理は
日本では受け入れられなかったと思います。
また日本に入ってきたカレーは、カレー粉で具材を煮込んだだけのシンプルなものでした。
だから日本人の口に合う食べやすい味にアレンジしやすかったといえます。
カレーが広まっていない国の人に、なぜカレーが好きでないのか聞くと、スパイスが臭いからという答えが
返ってくることがあります。その点、古くから中国との関係が深かった日本人には漢方は馴染み深いものでした。
つまり DNAのレベルで食べ慣れていたものだったのです。
以上のように考えてくると、人が感じる「美味しさ」の基準には、食べ慣れていることが強く影響している
ことがわかります。家のカレーは、一度使い始めたルウをなかなか変えられないのも、味覚の絶対基準ができる
といわれる11歳の頃に食べたバーモントカレーが圧倒的なシェアを誇っているのもうなずけるわけです。
カレー商品というと現在はカレールウとレトルトカレーが二大商品です。この二つのマーケティングや
商品開発は微妙に異なります。
その違いの源となっているのは、ルウとレトルト、それぞれのターゲット層、すなわちそれを欲する消費者層と
シーンの違いです。まずルウでカレーを作る光景を想像してみましょう。それは家族の食事に代表されるように、
大鍋で大人数分を作っている光景です。これに対してお鍋にレトルトパックを入れてカレーを作っているのは、
一人分を作りたい人が圧倒的多数です。
家庭で作るルウカレーは、お父さんお母さんから子供まで、全員が美味しいと思えるカレーでなければなりません。
そして、家庭のカレーはルウを変えるのが難しい。変えると家族から「今日のカレー、味がいつもと違う」などと
ブーイングを浴びることになるので、お母さんはなかなか冒険ができないのです。
つまるところ、カレールウの開発は、なるべく大勢の人が長期にわたり美味しいと思える安定志向の商品が
中心ということです。
対してレトルトカレーはどうでしょう? もしスーパーやコンビニの商品棚に目新しいレトルトがあったら
食べてみたいと思う人が多いのではないでしょうか。しかも、万一それで失敗しても、おいしくない責任を取るのは
自分一人だけです。
つまりレトルトカレーの開発は、安定志向ではなく、挑戦的な商品も対象になるということです。
だからこそ、全国で1000種類を超えるような膨大な類のレトルトカレーが誕生しているのです。
こうした個食とファミリー食の違いはカレーに限ったことでなく、食品全般にいえることです。 (中略)
インドのカレー
(ウイキペディアより)
昭和30年代初め、カレー業界はまだ、家族経営レベルの会社が全国各地にひしめいている状態でした。
この時期に、ハウスが「うちはカレー粉の会社だから」と固執して、インスタントカレーやカレールウなどに
手を拡げなければ、今でも家の隣に小さな工場があって、親子で細々とカレー粉を作っているような会社だったかもしれません。
終戦後の復興期までのカレー業界は、多くのメーカーがどんぐりの背比べをしている状況でした。
そこから時代の流れに乗って、臨機応変に対応した数社が抜け出し、現在の大手として勝ち残ってきたのです。
ハウス食品には、こんなエピソードもあります。
数年前、小麦粉の価格が上昇して、メーカーが自社商品の値上げを迫られたことがありました。
メーカーの選択としては(1)価格を上げる(2)量を減らして価格を据え置く、の二つが考えられるわけですが、
一般的に消費者は値上げを嫌うので、多くの企業が(2)を選択しました。
ところがハウス食品が取ったのは(1)の値上げだったのです。
実はそれまでの調査で、消費者はあまりパッケージの裏の調理法を読まないことがわかっていたからです。
カレールウの内容量を減らせば、当然お湯の量も従来より減らした記載になるのですが、多くの購入者は
それを読まずに、いつもの分量で調理をしてしまう可能性が高いのです。
そうするといつもより薄めのカレーができてしまい、美味しくないイメージを与えてしまう
という、
そちらのリスクを回避する方をハウス食品は選択したのです。
そこにはハウス食品という企業のプライドも窺える気がします。
結局この判断は正しかったようで、売上に大きな影響はなかったそうです。
コメント: 安定志向で「定番」が存在するルウと、新しい挑戦ができるレトルトの、二つのターゲットを持っていることが、ハウス食品をはじめとするカレー業界の大きな強みなのだろう。ルウというベースがあるから、他種の商品展開が思い切ってできる。価値観が多様化する現代にあって「定番」を持っているというのは、きわめて幸運なことといえる。バーモントカレーのような、人々の習慣や文化に根ざした定番商品を持ちえない業界の場合は、現代人に「習慣」をつくり出すような商品展開が有効なのではないだろうか。
Copyright:株式会社情報工場
シタールの演奏