台風2号は、沖縄・那覇を通過しゆっくりと列島をすっぽり雨の中につつんでしまっています。
暴風の勢力は弱まったようですが、線状降水帯が発生し関東地方も地域的に豪雨となって被害が
出ています。
藤井聡太6冠はこの度、20歳10か月で名人位を獲得し、40年振りに最年少記録を更新し、あわせて
「7冠」達成は羽生九段(現在)から27年目に二人目となりました。 すごいですね!
半導体が世界の問題となるのは、これまでもたびたびあり新聞紙上を賑わ
せていました。 産業のコメといわれる重要な素子(部品)で、時代と共に
その形や機能面で進化し産業用ばかりでなく、身の回りの生活に直結した製品
としてなくてはならないものになっているのです。
半導体(例)
(ネット画像より)
日本はかって半導体王国とも呼ばれた時期があったのですが、1980年代を
ピークに国際的な競争力は低下し、現在では完全に遅れをとってしまってい
るのです。
半導体シェアの推移
(ネット画像より)
日本の半導体産業の凋落には理由がありました。様々な理由がありますが、
ここでは大雑把に2つの理由に絞って整理してみました。
1つは、当時日本の半導体需要はNTTファミリーなどの通信事業者向けや
コンピュータ開発向けに対応した、少品種高性能規格の半導体でしたが、パ
ソコン、タブレットやスマホの出現にはこれらの半導体は過剰仕様でコスト
的に対応できなかったし、急激な量産体制をとることも叶わなかった。
これらの技術を転用して、パソコン等に適用する半導体の大量生産を追求
した台湾や韓国等のメーカーが急成長したのです。
2つ目は、1980年半ばの日米貿易摩擦の焦点の一つとなった日米半導体協定
が挙げられています。つまり、半導体は装置産業であり規模の経済を追求した
コストリーダーシップをとり市場独占を目指す戦略をとる必要がありますが、
この日米半導体協定により価格決定権がはく奪されたことによってなし得な
かった。それゆえ、少品種高機能半導体の開発に向けられ、量産指向はなか
った。ということに集約されるようです。
今後 産業のコメである半導体を、潤沢に手に入れるためには、現状の半導
体の大量生産拠点が限られていることも問題点として認識する必要があります。
先の新型コロナで生産拠点での稼働上の問題や物流網の寸断、海外輸出入
制限などにより突然の半導体不足に追い打ちがかけられた形となり、自動車
の出荷等に大幅な遅延が生ずるなどの問題が起きました。
次世代半導体プロジェクト
(経産省資料より)
これらのことを踏まえ、昨年11月には経済産業省により、次世代半導体設
計・製造に向けて基本戦略が示されました。 これに先立ち、昨年8月には、
ソニー、ソフトバンク、トヨタ、NEC、NTTなど大手8社による「Rapidus㈱」
が設立され、また11月には「LSTC」(技術研究組合最先端半導体技術センタ
ー)が設立され、凋落した半導体産業を今後に向けて鋭意立ち上げようとし
ています。
先端設計の研究開発拠点としてLSTCを、量産製造拠点をRapidus で を軸
として、これらに連携する形で米IBMとベルギーの研究開発機構(imec)さら
には国内学術研究機関・企業と提携を結んで、2025年には次世代半導体の試作
ラインを稼働し、27年をめどに量産化に乗り出す計画を掲げています。
次世代半導体として「ビヨンド2nm」(高機能化のための超微細加工技術)
と呼ぶ、最先端の技術を駆使した最先端半導体を目指しており、これは従来
のFIN型からGAA型と呼ばれる構造とする必要があり新規に重要な開発が必要
であると共に、ファウンドリー(多品種製造供給)としての経験もないこと
もあり前途には厳しいものがありそうです。
また、スマホのカメラなどに使われているイメージセンサーはソニー製で、
世界のトップシェアを誇る半導体ですが、台湾TSMCの半導体工場を熊本に誘致
する戦略をとり、今年秋ごろに竣工予定となっています。
新しい工場(ファウンドリー)が熊本に誘致されることにより、国内に大量
生産拠点が出来、産業安全保障の観点からの意義もありますが、Rapidus に
とっても、近くでファウンドリーの実際を観ることとなるでしょう。
前述のような凋落にある日本の半導体産業において、未だに強いシェアを
誇る部分があるのです。それは、感光剤の塗布・現像を行う装置、熱処理装置、
洗浄装置などの半導体製造装置 およびシリコンウエファー、フォトレジスト、
高純度薬液などの材料は圧倒的な日本シェアを誇っているのです。これらの
装置・材料の生成には日本特有の熟練の「技」が活かされているといわれて
いますが、これらの強みをさらに発揮し世界をリードして行くためには今後
に向けた取り組みが重要であることは言うまでもないことと警鐘を発してい
ます。
ほぼ30年ぶりに、官産学による次世代半導体に向けた大型プロジェクトが
海外の企業等とも連携する形で発足しましたが、最先端技術の開発を待たね
ばならず、未経験分野もあるということで大きな壁を想像しますが是非とも
成功裏に推進されることを願うばかりです。 また、凋落の原因の一つとなっ
たとされる、半導体産業における戦略スタイルの見直し(意識改革)も併せて
行われることが望まれているようです。
また、直近の施策としては、さきのG7広島サミットにおいても採択されて
いましたが、半導体生産能力の世界シェアは台湾がトップで2割超を持ち、
先端半導体に限れば9割を占めるといわれており、有事の場合には供給が途絶
える恐れが指摘されています。
新興・途上国も加えた枠組みで半導体やレアアース(希土類)といった重要
物資のサプライチェーン(供給網)を構築する方針が盛り込まれました。
スマホの中(例)
(ネット画像より)
*1nm(ナノメートル)は、1㎜の100万分の1の長さです。数字が低
ければ低いほど微細な回路で高機能化されます。ソニーのイメージセンサー
用半導体は20nmクラスで、現在の最新技術では5~7nmクラスがスマホやゲーム
機で使われていて、最先端半導体技術としてアップル社向けに3nmがTSNCに
より製品化されつつあるそうです。ですから、2nm、更にビヨンドはその先
ということなんですね。
全くの余談ですが、私が入社した頃に海外雑誌の翻訳当番が回ってきた時
の記事に“monolithic IC”という言葉が出てきて、これをどの様に訳すか
大変苦労したことを想い出しました。ICというのは、Integrated Circuitで
集積回路ですが、当時、「統合化回路」などと訳したかもしれません。また、
モノリシックは文字通り「1枚板に」などとしたのかもしれません。その後、
LSIへと発展して行くのですが、隔世の感があります。 60年前のお話です。
Romantico