蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

婚学  (bon)

2014-03-07 | 日々雑感、散策、旅行

 見慣れない言葉ですが、最近手元に届いた会報の講演記事のタイトルです。 
九州大学の若い先生(佐藤剛史氏:九州大学大学院農学研究院助教)が、同大学で2年前から1年生に、
この “婚学” という授業をされているそうです。
で、先生は昨今の非婚化、晩婚化による少子化を何とか食い止め、豊かな国作りに貢献できないか・・
そんな思いが感じられます。
“結婚や恋愛をテーマにして、総合的な人間力を身に付けてゆく授業” といっておられます。

 講演の冒頭で、“今ここに私たちがいることの奇跡” について、その意味を話されています。
つまり、1年間に生まれる赤ちゃんの数は105万人、生まれることが出来なかった赤ちゃん・・流産20万件、
死産4000件、人工妊娠中絶が23万件あり、さらに深刻なのは、不妊症に悩むカップルが200万組いるということ。 
今ここにいる、それは奇跡的なことなんだと。

 次に、図1を見て下さい。この図は、講演録ではすべて文章(言葉)で述べられている内容を勝手に作図したものです。

        図1
         (本文から作図しました。)

 

 婚姻件数そのものが この40年ほどの間に大きく減少しています。 
平均初婚年齢では、夫が4歳、妻が5歳高くなっているのです。 非婚化、晩婚化が進んでいるのです。
さらに、第1子出産時の母親の年齢も30.1歳と高く、その昔には “生み終え” の年齢とも言われた30歳を超えたところが、産み初めになっている。

 また、合計特殊出生率(女性が一生かけて産む赤ちゃんの数) をみると、第1次ベビーブームの1947年では
4.5人であったものが、2012年では1.41人 と激減している。
しかし、完結出生児数(結婚している夫婦が一生かけて産む赤ちゃんの数)は、なんと1967年頃からずっと
2.2を維持してきている。(昨年2を割ったそうですが。)
この二つの数字は何を意味するかといえば、合計特殊出生率がここまで激減したのは、つまり、非婚化と晩婚化が
進んでいるからに他ならないということです。 
したがって、少子化対策には、まずもって婚姻数を増やすこと、そして婚期を早めることが有効だと述べられています。

 非婚化や晩婚化はなぜ進んだのか?についても分析されています。

 その原因はおおむね3つに絞られる。 ①社会圧力が減った。 昔、女性は25歳くらいまでに結婚しなさい・・
とか、男でも女でも、結婚して一人前というような風潮があった。 それが、最近では、結婚しないという選択や
子供を持たない自由というような考えが社会に受け入れらのではないか?  ②経済事情。雇用形態の多様化等
によりいわゆる “年収300万円の壁” といわれるように、内閣府調査によれば、300万円(男性)を境に
婚姻率が大きく変わるというのです。 そして、コンビニ、ファミレス、コインランドリーなど一人でも生活が出来、
社会が便利になりすぎたこともあります。 ③子供に自立を促さない親が増えている。 親と同居している場合は
親が面倒を見ている。結婚しなくてもいいし、自由に生きて行きなさい・・そんな風になっている。

 

 さらに、学生たちのヒヤリングから、結婚観というか、結婚に向かう姿勢にも大きな変化が感じられると
3つ述べられています。
その① “コンコルドの誤謬” 運行開始からわずか27年で廃止された航空機コンドルのことです。
イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機で、設計段階から既に採算がとれないことが分かっていた
にもかかわらず、世界初の超音速だとか 夢があるとか、お金をかけすぎて止められなかった間違いです。
人間も初期投資額が大きすぎると合理的な判断が出来なくなるというのです。 ここまで自分に投資してきた
のだから、もっといいものが出てくる、もっと自分に相応しい相手が出てくるという幻想を抱き時期を逃してしまう。
その② “選択のパラドックス” これは意思決定理論の一つで、あまり選択肢が多くなりすぎると選択出来なくなる
という現象です。 婚活などで、目の前に50人もいたら目移りして選べなくなるというのです。
その③ “プロスペクト理論” これは不確実性下における意思決定モデルの一つで、人間はモノを得た時の
喜びよりも、モノを失った時の悲しみの方が心理的なダメージが3倍になるという考え方です。
結婚して得られる幸せな家庭や子供などより、時間がなくなる、お金が自由に使えないなどマイナスの心理が
大きく働いてしまう。 
という主旨なんですね。

 先生はまた、学生への調査をされていて、“今どきの若者の特徴”という切り口で面白い分析が述べられています。
あなたは、草食系だと思いますか?”に対して、ハイ18%、やや44%で合わせて60%以上が自分を
草食系だと思っている。 また、“草食系男子をどう思うか?” に対して、良い13.5%、まあ良い55.8%で
合わせて7割近くの学生が草食系男子に対してネガティブではない。 女子学生も65%は草食系でもよいのでは
ないかと回答している。 草食系男子というのは、恋愛にガツガツせず、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な
男子を指し、優しい感じで捉えられているようだが、実はそうではないのではないかと先生はいう。 
自分に自信はありますか?” という質問に、“ある” は男子わずか5%、女子で8.3%だったそうです。
自分に自信が無くては、 “あなたのことが好きです。結婚してください” なんてとても言えないのではないか。
草食系男子は、優しいというより、告白する勇気がない、傷つくことを恐れている・・そんな側面があるのかもしれない。 
また、厚労省の調査で、16歳から19歳までの3分の1が “セックスに関心がない” という結果が出たとのことですが、
先生の大学での調査では、“関心がある” と回答した男子学生は29.8%しかいなかったそうです。
しかし、“アダルトサイトは見るか?” については、よく見ると見るを合わせると6割を超える。つまり、
性的な感心がないのではなく、リアルな女性と人間関係を結ぶのが怖い、傷つくのが怖い・・これが実態なのかもしれない。

 “僕は、海外にも行きたいし、思いきり仕事もしてみたい。やりたいことを成し遂げてから。結婚は40歳くらいになってからでいいと思う” 女子学生は、“結婚すると人生の可能性が減る” と答えている。
産休や育休に入ると昇進が遅れる、会社の中で取り残される、人生の可能性が減るのではないかと不安に思う
のかも知れない。

先生は、学生たちに、結婚によるプラス面、そして結婚しないとできない経験や総合人間力が得られるなど
気が付かない重要な事柄を話されているようです。

 そして、「“婚学”で身につける力は、自分の人生を幸せに生きる考え方と実現するための力です。自ら考え、
意識的に選択し、自分の選択に責任を負う力なのです。」
と結ばれています。

       図2 厚労省のページから(H24)

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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