出足は惜しいところで、メダルを逃す試合が多かった日本ですが、一つ取ると流れが変わるんでしょうかね。男子スノーボードハーフパイプで十代コンビの平野歩夢選手、平岡卓選手が銀メダル・銅メダルを獲得すると、続々とメダリストが誕生です。
まずは、男子ノルディック複合の渡部暁斗選手が、1994年のリレハンメル五輪の河野孝典の銀メダル以来20年ぶりの銀メダルを獲得しました。この時期、双子の荻原健司・次晴兄弟を軸として最強を誇り、「お家芸」とまで言われました。しかし、極東の小国が台頭すると、「(勝てないなら)ルールを変える」のが、スポーツ政治の世界のお家芸です。距離よりもジャンプが強かった日本叩きが明らかな配分変更が行われ、日本に地位はあっという間に落ちました。それから、20年地道な努力が実り、遂にメダルを獲得しました。この20年をよく知るからでしょうが、テレビ解説をしていた荻原次晴氏が号泣し、言葉にならないほどでした。
そして、男子フィギュアシングルの羽生結弦選手が金メダル獲得です。伊藤みどりが銀メダルを獲得し、荒川静香が金メダルと獲得、そしてトリプルアクセルを飛ぶ浅田真央とトップクラスの選手を輩出してきた女子と比べると、若干世界との差があった男子ですが、前回の高橋大輔の銅メダルに続き、遂に頂上に登りつめました。実質的に今大会は、羽生とチャンの一騎打ちでした。これまでの展開としては、完成度の高いショートで羽生がリードし、フリーで羽生がスタミナを含めどれだけ粘れるかというものでした。その展開通り、羽生がショートで世界最高得点の100点越えでリード。しかし、チャンも高得点で4点ほどの差。翌日のフリーでは、羽生は4回転サルコウの失敗はこれまで通り織り込み済みだったと思いますが、やはり緊張があったのか、その後も3回転で失敗するなど、ベストを出したかった羽生としては「悔しい」という言葉が正直なところでしょう。しかし、これが五輪です。しかし、フリーの世界最高得点を持つチャンも三度もジャンプでミスするまさかの展開。ベストから20点ほど下回り、フリーでも羽生に届かず、銀メダルに終わりました。これが五輪です。「勝者なき勝利」などと評する露紙もあったようですが、羽生は誰がどう見ても世界最高のショートプログラムを演じ、フリーでも前回は金メダリストが4回転を飛ばなかったのに対し、2種類の4回転に挑戦し1回は決め、後半に難しいジャンプを持っていく構成も王者にふさわしいものでした。そして、大震災という苦難を乗り越え、足りなかったスタミナもついてきて、あっという間に頂点に上り詰めましたが、まだ、19歳、次の五輪も楽しみです。
そして、1992年アルベールビル五輪以来7回出場の41歳レジェンド葛西紀明選手が、遂に男子ジャンプラージヒルで銀メダルを獲得しました。これまで団体での銀はありましたが、個人では初メダルです。本当に「すごい」の一言です。今季久しぶりにW杯で勝利し、世界的に「レジェンド」と称賛されるようになりましたが、本当のレジェンドだと思います。しかし、金メダルまでほんの1点ちょっと差、距離では1m上回る本当の接戦で、本人は「金メダルを取って本当のレジェンドになりたい」と言っていましたが、それでも本当に嬉しそうで、見ている我々も自分のことのように嬉しくなるメダル獲得でした。ちなみに、これまでの7大会がどうだったかというと、
1992年アルベールビル五輪(仏) NH31位 LH26位 団体4位
1994年リレハンメル五輪(ノルウェー) NH 5位 LH14位 団体銀メダル
1998年長野五輪(日本) NH 7位 LH - 団体 -
2002年ソルトレイクシティ五輪(米) NH49位 LH41位 団体 -
2006年トリノ五輪(伊) NH20位 LH12位 団体6位
2010年バンクーバー五輪(カナダ) NH17位 LH 8位 団体5位
2014年ソチ五輪(ロシア) NH 8位 LH銀メダル
ここまで戦ってきたこと自体がすごいことで、レジェンドに値しますし、「勝ってくれたら嬉しい」とは思っていても、「でも、メダルはなかなか厳しいだろうな」というのが正直な気持ちでした。もちろん、メダルには近いでしょうが、ノーマルヒル、ラージヒルとも制したチャンピオンは頭一つ抜きん出ていて、残り二つの椅子を確実に占めるには、ジャンプは風だのいろんなコンディションが絡んでいて、難しいと思っていたのです。本当に見事でした!