伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

六月の海を泳いで

2007-06-04 07:25:57 | 小説
 妻の里帰り出産中に不倫の関係になった40歳TV局ディレクターが癌で死に、うちひしがれた35歳TV局職員が彼の想い出をまさぐり立ち直るまでを描いた小説。
 不倫相手の死からストーリーが始まり、1章ごとに時間を遡って行き、出会いまで行った後に現在に戻るという構成。ありがちなパターンですが、出会いから回想するのではなく順次遡っていくところが少し新鮮。
 しかし、この主人公、死んだ不倫相手の妻子のところに押しかけて、彼の部屋を見せろと言い募り通い続ける第1章で、印象最悪。自分が悲しいからって、遺族の心情をここまで逆なでにして、夫を奪われた妻の心の傷に塩をすり込むような真似がどうして35歳にもなった社会人にできる?生前に修羅場を演じるならまだしも、哀しみ・悔しさに沈む遺族の家に土足で踏み込む?そこまでやっておいて、何かそれを正当化するように主人公の心情を遡って綴られても、どうにも共感しようがありません。出会いに至る第6章では、主人公は恋に落ちてから妻の存在や妊娠中であることを知ったと設定されていますが、その上で「あなたと生きてみたい」なんて言ってそれから関係を結ぶわけですし、それにこの主人公、以前にも別のプロデューサーにアタックして不倫の関係を結んでいますし。不倫自体はともかく、第1章の行動が最後まで後味悪くて、35にもなって身勝手な女の自己満足物語と読みました。


広谷鏡子 小学館 2007年4月21日発行
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