行政訴訟について、被告となる行政庁側で訴訟を担当する役人のための解説書。
前書きには「法律実務家だけでなく、行政訴訟に関心のある方々」も対象にしているように書かれていますが、はっきり言って法律の逐条解説書の類を読むのが苦でない業界関係者以外が読み通すのはとても無理。中身も、匿名の「研究会」で構成員も執筆者も全く書かれていませんが、内容が明らかに行政側寄りで、法務省の訟務局(行政訴訟で国の代理をする部局)とその他の役人で書いていることはほぼ確実。
ふつうこの種の実務解説書では、学説が別れているところではそれを並べて書いて、単に裁判例ではこの見解が取られているという事実を指摘するものですが、この本では、行政側に不利な見解を批判して誤っていると言い切ったり(原告適格について77頁、当事者訴訟による違法確認訴訟について114頁など)、かなり異例。裁判例も最高裁判決でも意に沿わないものは紹介されていなかったり(判断過程統制方式は取り得ないと主張する202頁で、「調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落がある」ときには違法とした伊方原発訴訟最高裁判決に触れなかったり、文書提出命令で文書の取調の必要性なしとして却下されたときに申立人が抗告できないことを指摘する246頁で、文書提出命令が出されたときに所持人も取調の必要性がないことを理由に抗告できないとする最高裁判例には触れないなど)、中立性にはかなり疑問あり。
行政訴訟を担当する役人と、この本が行政側の視点で書かれていることを前提に役所がそういう考えで行政訴訟を見ていることを勉強しようとする弁護士には、役に立つかなという本です。

行政事件訴訟実務研究会 ぎょうせい 2007年3月30日発行
前書きには「法律実務家だけでなく、行政訴訟に関心のある方々」も対象にしているように書かれていますが、はっきり言って法律の逐条解説書の類を読むのが苦でない業界関係者以外が読み通すのはとても無理。中身も、匿名の「研究会」で構成員も執筆者も全く書かれていませんが、内容が明らかに行政側寄りで、法務省の訟務局(行政訴訟で国の代理をする部局)とその他の役人で書いていることはほぼ確実。
ふつうこの種の実務解説書では、学説が別れているところではそれを並べて書いて、単に裁判例ではこの見解が取られているという事実を指摘するものですが、この本では、行政側に不利な見解を批判して誤っていると言い切ったり(原告適格について77頁、当事者訴訟による違法確認訴訟について114頁など)、かなり異例。裁判例も最高裁判決でも意に沿わないものは紹介されていなかったり(判断過程統制方式は取り得ないと主張する202頁で、「調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤欠落がある」ときには違法とした伊方原発訴訟最高裁判決に触れなかったり、文書提出命令で文書の取調の必要性なしとして却下されたときに申立人が抗告できないことを指摘する246頁で、文書提出命令が出されたときに所持人も取調の必要性がないことを理由に抗告できないとする最高裁判例には触れないなど)、中立性にはかなり疑問あり。
行政訴訟を担当する役人と、この本が行政側の視点で書かれていることを前提に役所がそういう考えで行政訴訟を見ていることを勉強しようとする弁護士には、役に立つかなという本です。

行政事件訴訟実務研究会 ぎょうせい 2007年3月30日発行