鼻づまりによる睡眠障害やそれに起因する子どもの発達障害のリスクと著者が独自に開発した手術とあるべき治療法についての著者の考えを解説する本。
鼻づまりの説明の前提として、呼吸器としての鼻の機能の説明が勉強になりました。鼻腔の粘液層とその下の線毛運動により微粒子を喉に送り込む濾過機能、突起状の鼻甲介により空気の通り道を狭め鼻粘膜との接触で吸気を加温加湿して肺胞を守る加温・加湿機能、吸気中の酸素が効率よく血液中に拡散できるように吸気の流量を絞る抵抗器としての機能、肺血管を拡張させて酸素の血液への取り込みを促進する一酸化窒素産生機能などがあり、その機能を果たしやすくするために鼻腔粘膜は海綿静脈洞を持つ「静脈性勃起組織」となっていてちょっとしたことで膨らんでしまう、つまり元々腫れやすいのだそうです(25~36ページ)。
私自身、子どもの頃、慢性的な鼻づまりでよく眠れなかったりそれでイライラしているところがありましたので、鼻づまりが睡眠障害につながり、鼻づまりが解消できれば日常生活が大幅に改善できるという著者の主張はよくわかります。幸い私自身は成長に伴い自然に症状がなくなったのでよかったのですが、ずっと続いていたらこういう本は地獄に仏と見えたかもしれません。また、投薬について副腎皮質ホルモン点鼻薬は鼻づまり症状の改善に効果があるが他の投薬は効果がほとんど見られないことを明言していることや、これまでの手術は患者の負担が大きいのにほとんど効果がないことを指摘していることも、医師のかばい合い的な姿勢を排除していて、門外漢としては好感できます。
著者が独自に開発し、推奨する後鼻神経切断術については、日帰り手術が可能なほど患者の負担が少なく、劇的な効果があると紹介されており、その通りとすれば画期的な治療法なのでしょうけれども、鼻腔粘膜自体が腫れやすい性質を持っていてそれは鼻の呼吸器としての機能を果たすためだとすると、神経を切断することで腫れなくすることは本当に弊害がないことなのか、素人目には気になるところです。この本全体の構成が、「患者の声」を紹介して、著者が独自に開発した手術を推奨するという、開業医である著者の営業・広告的な匂いが強いものとなっていて、そこがどうしても引っかかる本です。

黄川田徹 ちくま新書 2013年3月10日発行
鼻づまりの説明の前提として、呼吸器としての鼻の機能の説明が勉強になりました。鼻腔の粘液層とその下の線毛運動により微粒子を喉に送り込む濾過機能、突起状の鼻甲介により空気の通り道を狭め鼻粘膜との接触で吸気を加温加湿して肺胞を守る加温・加湿機能、吸気中の酸素が効率よく血液中に拡散できるように吸気の流量を絞る抵抗器としての機能、肺血管を拡張させて酸素の血液への取り込みを促進する一酸化窒素産生機能などがあり、その機能を果たしやすくするために鼻腔粘膜は海綿静脈洞を持つ「静脈性勃起組織」となっていてちょっとしたことで膨らんでしまう、つまり元々腫れやすいのだそうです(25~36ページ)。
私自身、子どもの頃、慢性的な鼻づまりでよく眠れなかったりそれでイライラしているところがありましたので、鼻づまりが睡眠障害につながり、鼻づまりが解消できれば日常生活が大幅に改善できるという著者の主張はよくわかります。幸い私自身は成長に伴い自然に症状がなくなったのでよかったのですが、ずっと続いていたらこういう本は地獄に仏と見えたかもしれません。また、投薬について副腎皮質ホルモン点鼻薬は鼻づまり症状の改善に効果があるが他の投薬は効果がほとんど見られないことを明言していることや、これまでの手術は患者の負担が大きいのにほとんど効果がないことを指摘していることも、医師のかばい合い的な姿勢を排除していて、門外漢としては好感できます。
著者が独自に開発し、推奨する後鼻神経切断術については、日帰り手術が可能なほど患者の負担が少なく、劇的な効果があると紹介されており、その通りとすれば画期的な治療法なのでしょうけれども、鼻腔粘膜自体が腫れやすい性質を持っていてそれは鼻の呼吸器としての機能を果たすためだとすると、神経を切断することで腫れなくすることは本当に弊害がないことなのか、素人目には気になるところです。この本全体の構成が、「患者の声」を紹介して、著者が独自に開発した手術を推奨するという、開業医である著者の営業・広告的な匂いが強いものとなっていて、そこがどうしても引っかかる本です。

黄川田徹 ちくま新書 2013年3月10日発行