父親が「困ったときのまごころ便」と称して酒屋の副業として始めた配達屋を、父の死後引き継いだ陰のある無口な中年男片桐章が、困った配達依頼に対応していく様子を描いた短編連作形態の小説。
第1章だけが片桐酒店で短期のアルバイトをすることになった貧乏学生丸川拓也の視点から、その他は片桐酒店の店主片桐章の視点から語られています。第1章を書いた後片桐章の内心描写を展開しようと気が変わったのか、とりあえず第1章でアウトラインを客観的な視点で紹介しておきたかったのか、最後に「書下ろし」と書かれているだけに、読んでいてちょっとあれっと思います。
会社員時代に、親友となった同僚にちょっとした嫉妬心から押しつけた業務が親友の死につながり、罪悪感にうちひしがれ心を閉ざす片桐章の苦悩からの再出発が、全体を通した軸となっています。アルバイト学生拓也と店番のフサエの軽妙なやりとりが、その重苦しさをカバーしていると見るべきか、アンバランスと見るべきか。
登場する人物の中で、突出した重苦しさ・暑苦しさを感じさせる原陽子と安居課長は第3章限りの登場ですが、その後どうなったんだろうと気になるような聞きたくないような…
徳永圭 新潮社 2012年6月20日発行
第1章だけが片桐酒店で短期のアルバイトをすることになった貧乏学生丸川拓也の視点から、その他は片桐酒店の店主片桐章の視点から語られています。第1章を書いた後片桐章の内心描写を展開しようと気が変わったのか、とりあえず第1章でアウトラインを客観的な視点で紹介しておきたかったのか、最後に「書下ろし」と書かれているだけに、読んでいてちょっとあれっと思います。
会社員時代に、親友となった同僚にちょっとした嫉妬心から押しつけた業務が親友の死につながり、罪悪感にうちひしがれ心を閉ざす片桐章の苦悩からの再出発が、全体を通した軸となっています。アルバイト学生拓也と店番のフサエの軽妙なやりとりが、その重苦しさをカバーしていると見るべきか、アンバランスと見るべきか。
登場する人物の中で、突出した重苦しさ・暑苦しさを感じさせる原陽子と安居課長は第3章限りの登場ですが、その後どうなったんだろうと気になるような聞きたくないような…
徳永圭 新潮社 2012年6月20日発行