伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ならずものがやってくる

2013-05-02 20:55:06 | 小説
 盗癖のある35歳のサーシャ、サーシャを秘書としている44歳の性的欲求の喪失に脅えるレコード会社社長のベニー、高校生のときベニーとバンド仲間だったレア、レアの友人のジョスリンの恋人だったルーが離婚後に若い愛人と子どもたちとともに行ったサファリツァー、病床のルーをレアとともに見舞う43歳のジョスリン、ルーの弟子となって成功したベニーを訪れたかつてのバンド仲間スコッティ、ベニーと別れる前の妻ステファニー、かつてのステファニーの上司で今は独裁者のコンサルタントとなったドリー、ドリーが独裁者の恋人を装わせた女優キティ・ジャクソンをかつて取材中に押し倒したフリーランス記者でステファニーの兄のジュールズ・ジョーンズ、学生時代のサーシャに思いを寄せていたロバート・フリーマン、大学に行く前にナポリで放浪していたサーシャを探す叔父のテッド・ホランダー、未来において学生時代の恋人と結局結婚したサーシャの娘アリソン、未来にレコード会社をクビになったベニーにミキサーとして雇ってもらおうと掛け合う35歳のサーシャと一夜だけの関係を持ったことがあるアレックスのエピソードを連ねた短編連作小説。
 扉見返しの「ピュリツァー賞受賞」「アメリカ文学界を席巻した傑作長編。」とあるのに惹かれて読んだのですが、長編小説として読むのは避けた方がいいでしょう。13のそれぞれのセクションは、上記のように絡み合うものの別の人物の人生のある局面を断片的に記したもので、それを総合することで「ベニーとサーシャがたどる人生」を確かに把握はできるのですが、それを読み解いたり味わうことは難しいように思えます。語り口や手法を変えたそれぞれのエピソードの構成は、実験的でもあり、そういった試みの新しさを快く思う人にはよいかもしれませんが、ストーリーのある小説として読もうとする読者には、ストーリーを進ませないで紙幅を稼ぐように見える心理描写が多く、それが多数の登場人物についてなされるため結局主人公の人物像・メインストーリーにつながらず、冗長でめんどうで退屈に思えるのではないかと感じました。
 タイトルになっている「ならずもの」は、読後の印象としては、時の経過で避けられない老いと、それをそうでもないさとノスタルジックな感傷とあわせて見るような趣です。それがトータルとしては作品の印象になっており、読み終わってから振り返ると、1つの作品だなぁと思えはするのですが。


原題:A Visit from the Goon Squad
ジェニファー・イーガン 訳:谷崎由依
早川書房 2012年9月25日発行 (原書は2010年)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする