受験を中心に知識を引き出して使いこなすための記憶の技術について論じた本。
記憶するためのテクニックの部分は、復習は1時間以内と寝る前の5分とか、繰り返しで少しずつ増やしながら覚える、視覚・聴覚情報と結びつけ妄想も含め経験として頭に入れるなど、わりとどこでも聞くような話が多いです。
むしろ、記憶や受験勉強にまつわる著者の解釈や人生論的な部分が読みでがある感じです。フィギュアスケートの例で一流選手は失敗しやすいジャンプの練習に時間を割くがそうでない選手は成功したジャンプをより磨くために時間を使うとして、上達するためには自分の失敗に注目しなければならない、失敗しないのであれば意識的に失敗するような状況をつくってしまえばいい、例えば絶対に全部できない制限時間でトライして弱点をあぶり出すというような方法論を提示しています(27~29ページ)。長所を伸ばせが主流のご時世に欠点の是正の先行を言う著者は、やはり私より少し年上。それをおいて、この事例から弱点のあぶり出しまで持っていく展開力の方に、ちょっと興味を覚えます。ストレスを抱えているとき、自分はもうストレスに慣れたんだと意識してそういう記憶を脳につくり出してしまえばストレスは克服できる、過去の苦い記憶も、そこから自分はこんなことを学びとってそれは自分にプラスのできごとだったというように記憶を自分によい意味に書き換えてしまえという(39~42ページ)一種のポジティヴシンキングも、苦い記憶自体は否定しないで「もう慣れた、積極的な意味もあった」と追加することで克服しようとする点で興味深いところです。プラスに変換できない過去の記憶、根も葉もない悪口や悪意に満ちた嫌がらせは忘れた方が幸せだし、どんなに努力しても文句を言う人はいる、万人に好かれる人などいない(157~159ページ)という割り切りも、そうだよねぇと思います。
著者が記憶術の実践で聴いた講義を帰り道・電車内で振り返りセルフレクチャーしていたら「電車の中でふと気づくと、私の周りだけ空間ができていたこともあった。とはいえ、混んでいる電車の中でも快適に過ごせるのだから、願ったりかなったりだ」(75ページ)というのは、やはり強者だと思います。「部屋の整理がまったくできておらず、整理が苦手という人は、記憶力も弱い気がする」(86ページ)は耳が痛いですが…

伊藤真 サンマーク出版 2012年3月30日発行
記憶するためのテクニックの部分は、復習は1時間以内と寝る前の5分とか、繰り返しで少しずつ増やしながら覚える、視覚・聴覚情報と結びつけ妄想も含め経験として頭に入れるなど、わりとどこでも聞くような話が多いです。
むしろ、記憶や受験勉強にまつわる著者の解釈や人生論的な部分が読みでがある感じです。フィギュアスケートの例で一流選手は失敗しやすいジャンプの練習に時間を割くがそうでない選手は成功したジャンプをより磨くために時間を使うとして、上達するためには自分の失敗に注目しなければならない、失敗しないのであれば意識的に失敗するような状況をつくってしまえばいい、例えば絶対に全部できない制限時間でトライして弱点をあぶり出すというような方法論を提示しています(27~29ページ)。長所を伸ばせが主流のご時世に欠点の是正の先行を言う著者は、やはり私より少し年上。それをおいて、この事例から弱点のあぶり出しまで持っていく展開力の方に、ちょっと興味を覚えます。ストレスを抱えているとき、自分はもうストレスに慣れたんだと意識してそういう記憶を脳につくり出してしまえばストレスは克服できる、過去の苦い記憶も、そこから自分はこんなことを学びとってそれは自分にプラスのできごとだったというように記憶を自分によい意味に書き換えてしまえという(39~42ページ)一種のポジティヴシンキングも、苦い記憶自体は否定しないで「もう慣れた、積極的な意味もあった」と追加することで克服しようとする点で興味深いところです。プラスに変換できない過去の記憶、根も葉もない悪口や悪意に満ちた嫌がらせは忘れた方が幸せだし、どんなに努力しても文句を言う人はいる、万人に好かれる人などいない(157~159ページ)という割り切りも、そうだよねぇと思います。
著者が記憶術の実践で聴いた講義を帰り道・電車内で振り返りセルフレクチャーしていたら「電車の中でふと気づくと、私の周りだけ空間ができていたこともあった。とはいえ、混んでいる電車の中でも快適に過ごせるのだから、願ったりかなったりだ」(75ページ)というのは、やはり強者だと思います。「部屋の整理がまったくできておらず、整理が苦手という人は、記憶力も弱い気がする」(86ページ)は耳が痛いですが…

伊藤真 サンマーク出版 2012年3月30日発行