山間部の中学で駅伝のメンバーも足りない陸上部員たちが、ベテランのコーチを異動で失って陸上のことを何も知らない新しい顧問の下で、授業に出ずにテニスコート脇で昼寝している落ちこぼれや孤高を保つ吹奏楽部員、バスケットボール部員らを説得してメンバーを集めて、駅伝のブロック大会を戦う姿を描いた小説。
大会で1区から6区を担当する6人それぞれの立場からの小学生時代から中学に入るまでと陸上とのつきあい、思い、そして大会に至るまでの過ごし方や練習風景、本番の様子を書くという構成になっています。それぞれの登場人物の周りから見た様子と本人の思いのズレ、鬱屈した思いと陸上を通じての爽快感・吹っ切った感へのつながりが読みどころと思います。田舎町の、県大会の予選と位置づけられるブロック大会で、メンバー集めから苦労する当たりの、スポーツエリートではないクラスの設定をして、ふつうの中学生っぽい悩みや鬱屈感を描くのが、読者の共感を得やすいという狙いと思われ、その狙いがふつうに当たっている作品と評価できます。
2区の落ちこぼれ大田君のすねた純情と奮闘、4区の斜に構えた渡部君の照れと素直さあたりが、私には響いた感じです。全体を覆うキャプテン桝井君の不調は、最後まで読ませる力にはなるけれど、終盤まで重苦しさを漂わせ続けた挙げ句、不調の原因と最後の走りがうまく処理されたという納得感が十分とは思えず、そういう設定がよかったかどうか、私には功罪相半ばに思えました。
瀬尾まいこ 新潮社 2012年10月20日発行
大会で1区から6区を担当する6人それぞれの立場からの小学生時代から中学に入るまでと陸上とのつきあい、思い、そして大会に至るまでの過ごし方や練習風景、本番の様子を書くという構成になっています。それぞれの登場人物の周りから見た様子と本人の思いのズレ、鬱屈した思いと陸上を通じての爽快感・吹っ切った感へのつながりが読みどころと思います。田舎町の、県大会の予選と位置づけられるブロック大会で、メンバー集めから苦労する当たりの、スポーツエリートではないクラスの設定をして、ふつうの中学生っぽい悩みや鬱屈感を描くのが、読者の共感を得やすいという狙いと思われ、その狙いがふつうに当たっている作品と評価できます。
2区の落ちこぼれ大田君のすねた純情と奮闘、4区の斜に構えた渡部君の照れと素直さあたりが、私には響いた感じです。全体を覆うキャプテン桝井君の不調は、最後まで読ませる力にはなるけれど、終盤まで重苦しさを漂わせ続けた挙げ句、不調の原因と最後の走りがうまく処理されたという納得感が十分とは思えず、そういう設定がよかったかどうか、私には功罪相半ばに思えました。
瀬尾まいこ 新潮社 2012年10月20日発行