伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

3・11とメディア -徹底検証 新聞・テレビ・WEBは何をどう伝えたか-

2013-05-18 19:37:48 | 人文・社会科学系
 東日本大震災と福島原発事故をめぐる新聞・テレビ等の報道について論評した本。
 新聞・テレビ等の「伝統メディア」の姿勢について、市民デモ等の扱いや放射能汚染についての報道、市民が居住している地域からの撤退、在京紙・在京キー局の東京目線の報道などを批判していますが、他方でその姿勢にも理解を示す記述も見られ、伝統メディアもよくやっていると評価したり、全体の論旨は旗幟不鮮明に思えます。
 サブタイトルの「徹底検証 新聞・テレビ・WEBは何をどう伝えたか」に惹かれて読んだのですが、検証部分は多いとはいえず、後半は理屈の部分が多く、どこが徹底検証なのかと思ってしまいました。比較検証が地震直後や1周年当たりで、その他の記述も2011年夏とか暮れ段階ではというのが目につき、読んでいるうちに、これ書き下ろしじゃなくてあちこちに書いた原稿の寄せ集めで一丁上がりの本なんじゃないかと疑念を持ち、それでも終わりに初出一覧とかないしなぁと不思議に思っていたら、あとがきの中に埋め込まれていました。最初にこれに気づいてたら読まなかったのになぁ。
 官僚の議事メモ等が作成されていない、文書はないなどの言い訳を信頼して、「今回の震災をきっかけに判明したことの一つが、公文書管理の杜撰さである」(190ページ)として、官僚が文書記録を作成しなかったり保存しないことを批判しています。最近私が読んだ「本当は憲法より大切な『日米地位協定入門』」では、琉球新報の記者だった編著者が外務省に日米地位協定の逐条解説が欲しいと言ったらそんなものはないと言われ、外務省が作成した「日米地位協定の考え方」を入手して機密文書が存在することを報道しても外務省は「そんな文書は存在しない」とコメントしたので、琉球新報が全文を紙面に掲載したら掌を返して「これは外務省にも数冊しかない機密文書だ。それをこともあろうか20万部も印刷してばらまくというのは、いったいどういうつもりか」と電話で怒鳴ってきたということが書かれています(同書294~299ページ)。官僚というのはそういう連中だと思いますし、マスコミの姿勢としては官僚の言い訳をあっさり信じるのではなくてこちらの方があるべき姿ではないかと思います。


山田健太 トランスビュー 2013年3月5日発行
コメント
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