「前座の鬼」と呼ばれたうだつの上がらない実直なプロレスラー宝来弾の娘でブラジリアン柔術のジムに通う高校生宝来尽子と、宝来弾に心酔する若手プロレスラー吉野が、宝来弾が唐突にチャンピオンに本気で挑みあっさり倒されて控え室で心不全で死亡した事件に不審を持ち、尽子の同級生も被害者となった少女連続殺人事件の謎を追ううちに両者がつながるというファイティング・ミステリー小説。
スポーツ根性ものにありがちな荒唐無稽な精神論的なファイトと青春小説らしいあっけらかんとしたつくりが、陰惨になりかねない設定を軽く読ませていて、読み味は悪くないとは思います。しかし、ミステリの構造というか、組織の思惑とか犯行の動機とかの部分が、一方で大仰な印象を与えるとともに、それにしてはどこかせこいというかちゃちな印象もありちぐはぐ感があります。組織の全貌や尽子の同級生の事件もきちんと明らかになった形ではなく、ミステリーとしてやや欲求不満が残る感じがしました。
章題が、チャレンジマッチ、オープニングセレモニー、第1試合、第2試合…というふうに続いていくのですが、そこにプロレスの試合が描かれているとは限らず、そのあたりにも違和感を持ちました。
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伯方雪日 原書房 2013年2月25日発行
スポーツ根性ものにありがちな荒唐無稽な精神論的なファイトと青春小説らしいあっけらかんとしたつくりが、陰惨になりかねない設定を軽く読ませていて、読み味は悪くないとは思います。しかし、ミステリの構造というか、組織の思惑とか犯行の動機とかの部分が、一方で大仰な印象を与えるとともに、それにしてはどこかせこいというかちゃちな印象もありちぐはぐ感があります。組織の全貌や尽子の同級生の事件もきちんと明らかになった形ではなく、ミステリーとしてやや欲求不満が残る感じがしました。
章題が、チャレンジマッチ、オープニングセレモニー、第1試合、第2試合…というふうに続いていくのですが、そこにプロレスの試合が描かれているとは限らず、そのあたりにも違和感を持ちました。
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伯方雪日 原書房 2013年2月25日発行