伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ふる

2013-06-18 23:05:52 | 小説
 大阪生まれで今は東京でアダルト動画配信会社のWebデザイナーアシスタントの池井戸花しす28歳の2011年12月下旬の日々と過去を行き来させながら家族・知人との関係と連帯感を描いた小説。
 花しすとまわりの人々にまといつく白いものが、花しすには子どもの頃から見え、それを猫たちも気づいているという設定が、冒頭から示されています。これが何でどこに結びついて行くのだろうということが、ずっと気になるのですが、なかなかそれがわかるような書き方がなされず、ちょっとイライラします。終盤にそれが示されはしますが、花しすの祖母、母、朝比奈、さなえら女性への、女性の体と生理への連帯感として説明され、そうすると花しすにだけ見えるとか猫にも見えるという設定とどう符合するのか、理解できませんでした。
 もう一つの、この小説で不思議な設定となっている、花しすの人生のどの場面でも「新田人生」という男性が絡んできて、しかもそれが同一人物ではあり得ないという点。これも、読み終わってみてなんだったのかわからない。
 花しすのある種のコンプレックス、人間関係の間合いの取り方・避け方、祖母や母との関係や寄せる思いから女性たちへの連帯感へとつなげるテーマと展開を見ると、奇をてらわずストレートにそれを書いてもよかったと思いますし、むしろ白いものと新田人生を落とした方がすっきりとテーマに迫れたのではないかと思いました。
 それにしても花しすの仕事、テーマとの関係では必要で適切な設定とは思いますが、そしてインターネットの現状を見れば別に何とも思わなくなるかもしれませんが、日本でそれやってて大丈夫か?と、弁護士としては気になります。


西加奈子 河出書房新社 2012年12月30日発行
コメント
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