クラス担任や部活の顧問をしているベテランの「臨時教員」、DV被害者の保護などに従事する常勤的な「非常勤」の婦人相談員、生活保護受給者の訪問調査等に従事する非正規ケースワーカーなど、行政の本来業務部分を事実上支えている非正規公務員の実情等を紹介する本。
歳出削減が叫ばれ、正規職員の新規採用等を減らして人件費を削減し、その業務を非正規職員で代替すれば、非正規職員の賃金は「物件費」に分類されるために人件費が大幅に圧縮されるという構造(正社員をリストラして派遣に切り替えると人件費が外注費にすり替わって消費税がかからないというのと似ていますね)もあり、非正規公務員が増加していると指摘されています(30~41ページ)。その指摘ももっともには思えますが、非正規公務員はずっと昔からあったもので、近年の傾向だけじゃなくて、行政は民間同様かそれ以上に安く使い捨てにできる労働力を好きなように利用してきたということだと思います。
その点、裁判所は昔から行政に対しては甘いというか遠慮していて、有期雇用の更新が繰り返されて民間であれば確実に雇用継続の合理的期待があるとして雇い止めが認められないような事案でも、期限付きの非正規公務員の場合はどれだけ更新を繰り返しても雇用継続の合理的期待は生じないという判断を繰り返しています(例外は私と大学で同じクラスだった山口均裁判官が判決を書いた国立情報学研究所事件の1審判決だけ)。裁判所のこういう姿勢が、行政の傲慢で小ずるいやり方を助長しているように思えます。著者は、損害賠償を認めた(雇い止めの無効は認めない)判決を「裁判所が示す可能な限りの救済策」とか「司法のメッセージ」とか評価していますが(48~49ページ)。
ハローワークの職員の3分の2が非常勤の相談員で、2012年度末には約1割の2200人あまりが雇い止めにされ、カウンターの反対側の求職者に転じた(43ページ)というエピソードは、笑えないですね。
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上林陽治 岩波ブックレット 2013年5月9日発行
歳出削減が叫ばれ、正規職員の新規採用等を減らして人件費を削減し、その業務を非正規職員で代替すれば、非正規職員の賃金は「物件費」に分類されるために人件費が大幅に圧縮されるという構造(正社員をリストラして派遣に切り替えると人件費が外注費にすり替わって消費税がかからないというのと似ていますね)もあり、非正規公務員が増加していると指摘されています(30~41ページ)。その指摘ももっともには思えますが、非正規公務員はずっと昔からあったもので、近年の傾向だけじゃなくて、行政は民間同様かそれ以上に安く使い捨てにできる労働力を好きなように利用してきたということだと思います。
その点、裁判所は昔から行政に対しては甘いというか遠慮していて、有期雇用の更新が繰り返されて民間であれば確実に雇用継続の合理的期待があるとして雇い止めが認められないような事案でも、期限付きの非正規公務員の場合はどれだけ更新を繰り返しても雇用継続の合理的期待は生じないという判断を繰り返しています(例外は私と大学で同じクラスだった山口均裁判官が判決を書いた国立情報学研究所事件の1審判決だけ)。裁判所のこういう姿勢が、行政の傲慢で小ずるいやり方を助長しているように思えます。著者は、損害賠償を認めた(雇い止めの無効は認めない)判決を「裁判所が示す可能な限りの救済策」とか「司法のメッセージ」とか評価していますが(48~49ページ)。
ハローワークの職員の3分の2が非常勤の相談員で、2012年度末には約1割の2200人あまりが雇い止めにされ、カウンターの反対側の求職者に転じた(43ページ)というエピソードは、笑えないですね。
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上林陽治 岩波ブックレット 2013年5月9日発行