伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

地図と写真でわかる江戸・東京

2020-11-13 23:37:10 | 人文・社会科学系
 江戸の古地図や浮世絵・屏風絵・写真等を用いて、江戸の地形と開発、歴史、江戸時代の風物・風俗などを説明した本。
 家康入国前の江戸の様子やその後の市街地の形成、上水道建設と干拓、大火事での焼失と再開発などの経緯が地図と相まって説明され、現在に至る変化や地名の由来等がわかり興味深く読みました。
 鬼門とそれを守る鎮守の寺(「東叡山」寛永寺、江戸総鎮守としての神田神社の移設、裏鬼門に日枝神社を配置等)の配置、江戸の街の16%が寺社地など、宗教の位置づけ、宗教勢力の強さも、改めて感じました。
 29ページの安政の大地震と関東大震災の震度分布の図。「震度分布」って書いてあるのに図に「Mはマグニチュードを表す」と記載して「M5」「M6」「M7」が色分けして書かれているの、震度とマグニチュードを取り違えたものと思いますが、今どき素人でもやらないミスで、編集者の能力を疑ってしまいます。こういうところがあると、全体に安直に作ってるんだろうと、他のところの信憑性にも疑いを持ってしまいます。


西東社編集部編 西東社 2020年4月10日発行
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ゼロからはじめる建築の[歴史]入門

2020-11-12 21:48:09 | 自然科学・工学系
 建築の技術技法、デザインについての歴史をイラスト中心で解説した本。
 イラストは、イラストレーターの記載もありませんので著者自身のもののようですが、そのできが素晴らしく、その部分ではわかりやすく魅力的な本です。説明も、一応初心者を意識している感じで、用語の意味や語源、略語の意味等の知識は増えます。
 他方で、Q&A形式なんですが、ふつうにQ&A形式にありがちな読者が聞きたい質問じゃなくて著者が説明したいことに合わせた質問だというレベルを超えて、建築の専門家じゃなければ聞きようがない、そもそも質問の対象とされている建築物や人物自体知らないような質問が多く、答の方も著者の問題関心がストレートに出たわりと趣味的なものに思えます。まぁ、著者の好みや意見が前に出た解説自体は、むしろ小気味よい感じですが。
 また、冒頭のヨーロッパ建築史概観と日本建築史概観は時代を追って書かれているのですが、その後はテーマ別の組積造、軸組構造、木造小屋組、オーダー(柱、付柱、装飾柱)の章立てとなり、「歴史」という形で把握しにくく、この点も建築の初心者には読みにくくなっています。


原口秀昭 彰国社 2020年9月10日発行
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歩行者事故はなぜ起きるのか

2020-11-09 22:23:17 | 人文・社会科学系
 歩行者が被害者となる交通事故について、統計や心理学的な考察を中心に、どのような場面で起こりやすいか、歩行者事故が多い子どもの特性と死亡事故が多い高齢者の特性、歩行者事故を防ぐために何をすべきか等を解説し論じた本。
 2018年の交通事故総合分析センターのデータでは、歩行者の死傷事故5万0756件のうち1万6267件は横断歩道横断中(115~116ページ)、道路横断中の事故のうち人身事故は横断歩道横断中が多い(横断中の56%)(170ページ)って、酷くない?
 歩行者用信号の待ち時間表示が赤信号無視を減らし(青信号を待つイライラを減らす)赤信号になった時の残留歩行者を減らす(赤信号になるまでの時間を表示することで渡りきるめやすを与える)効果がある(125~126ページ)が、外国では残り時間を数字で示す方式もあり著者の経験では残り時間の数字の減少に目を奪われて左右から来るかも知れない車への注意がおろそかになった気がするという指摘(126ページ)は、なるほどと思えました。横断歩道上の歩行者の存在を感知して青信号の時間を延長する信号も出てきた(156~157ページ)というのは、歩行者目線ではありがたいことです。車の運転者からはけしからんことかも知れませんが。
 連載を単行本化したことからか、様々な点から紹介があり有益な情報がある一方で、有機的体系的に論じていく展開になっていないように感じられました。


松浦常夫 東京大学出版会 2020年7月31日発行
「交通安全教育」連載
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見たい!聞きたい!透明水彩!

2020-11-08 18:51:54 | 趣味の本・暇つぶし本
 水彩画家と絵の具メーカー(ホルベイン)技術者が、絵の具についての基礎知識、作画の技法に応じた絵の具と画用紙などの画材の特性や選択、水彩用画用紙や筆の特徴や扱い方などを対談形式で説明した本。
 タイトルやぱっと見からは水彩画の描き方、テクニックの説明かと思いましたが、テーマは専ら絵の具を中心とする画材の話で、専門的な細部にわたり、最初からそうとわかっていたら読まなかったかなと思いました。しかし、対談形式で、彩りのよいイラストや図、写真が多用されているので、予想外に興味深く読み切れました。
 顔料の固有の屈折率が糊剤のアラビアゴムの屈折率と近ければ透明水彩絵の具になりやすい、大きく違うと不透明水彩絵の具(ガッシュ)になるとか、顔料の粒子の大きさにより透明になったり不透明になったりする(25~27ページ)とか、自然乾燥の方がドライヤーによる強制乾燥よりも彩度(鮮やかさ)が高くなる(93~96ページ)とかいう話は、こういう機会でもないと知らなかったでしょうね。
 著者の水彩画が掲載されているページが、とても美しい絵で感心しました。折角だからもっと多数掲載していただけるとよかったと思います。


あべとしゆき、小杉弘明 日貿出版社 2020年10月15日発行
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50の実例で知る住宅トラブルのきっかけ 建て主たちのクレーム事典

2020-11-07 20:37:00 | 実用書・ビジネス書
 建築工事でクレームにつながった事例とその原因、建設会社・工務店と建て主の行き違いのポイント、クレームの処理結果等を列挙した本。
 雑誌「日経ホームビルダー」の連載コラム「クレームに学ぶ!」を単行本化したものだそうで、元が雑誌のコラムのため、読み始めは、事例説明としてはちょっと短い印象でしたが、問題点や双方の行き違いのポイントがコンパクトにまとめられていて(イラストで「これが火種」と書かれているのがツボを押さえている感じ)、読み進むうちに、読むにはちょうどいいくらいの長さに思えてきました。
 読み手としては建設会社・工務店を想定しているようで、業者側がクレームを防ぎ、またクレームに対処するための教訓という感じのまとめ方が多くなっています。どう考えても工務店側に問題があるケースも多々あり、怒る建て主を戯画化したイラストがそぐわない印象もあります。他方で、工務店側には落ち度がなく建て主側のわがままに思える場面でも、顧客対応として工務店側の配慮不足を指摘する記事も相当数あり、業者側も大変だなぁとも感じます。


日経ホームビルダー編 日経BP 2020年9月23日発行
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やがて訪れる春のために

2020-11-06 20:11:16 | 小説
 カフェの出店を希望して同僚と準備を進めていたが思いにズレがあり裏切られた気持ちで会社を退職した村上真芽が、祖母ハルが骨折して入院したのを機に、長らく訪れていなかった祖母宅を訪ねて庭の荒れ果てた様子に驚き、手入れをしてそこでカフェを開くという展開の小説。
 体が衰え認知症の気配が現れた祖母に寄り添おうとし、祖母の言動と気持ちを理解しようとする真芽や幼なじみの遠藤、ハルを慕って庭に出没する近所の子どもあずきらの年寄りを大切にする姿勢にほのぼのとした暖かさを感じます。
 自営業の採算とかがあまりに甘く都合のいい設定に思えますが、そこが夢のあっていいところなのでしょう。


はらだみずき 新潮社 2020年9月15日発行
「波」連載
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トラブル事案にまなぶ「泥沼」相続争い解決・予防の手引

2020-11-05 22:27:53 | 実用書・ビジネス書
 相続紛争でありがちな事例・問題を挙げて予防のために遺言作成等の対策と早期の弁護士への相談を勧める本。
 問題に応じてシンプルにした事例が紹介され、わかりやすく参考になりました。海外在住の人の印鑑証明がないので代わりに署名証明書を作ってもらう話(87ページ)とか、大正時代からの遺産分割協議未了の相続で相続人が50名近いケース(58~60ページ)とか、遭遇したくないですけど、こういう紹介を見ると、間違って当たってもなんとかやれそうな気になれます。
 相続人が行方不明のとき(相続人に認知症患者がいるときも同じでしょうね)に遺産分割協議ができないので、公正証書遺言を作成しておくべきという助言(225~226ページ)や、高齢の親の囲い込み(同居の親族が面会もさせてくれない)への対応(といっても難しい:181~191ページ)、相続放棄をしても朽廃家屋の管理責任が残るので相続財産管理人選任が必要となる事例(195~200ページ:それも金がかかるし…)などは、これからそういう問題が増えていきそうです。
 遺言の無効を主張することは非常にハードルが高いこと(120~122ページ)、相続廃除のハードルは極めて高いこと(170~177ページ)は、弁護士としては、いくら強調しても、し足りないほどです。
 行政書士(72~78ページ)、司法書士(101~104ページ)、弁護士でもとんでもないヤツ(78~79ページ)に依頼するな、最初から相続案件を得意とする弁護士に相談するようにと、セールストークが強すぎるのが鼻につきますが、相続問題に関心がある人は読んでみて損はないかなと思います。


加藤剛毅 中央経済社 2020年10月15日発行
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共有不動産の鑑定評価 共有物分割をめぐる裁判例と鑑定評価

2020-11-04 21:25:07 | 実用書・ビジネス書
 不動産の共有について説明し、共有不動産の賃貸や売却、共有物の分割請求の事例と処理等を説明して、それらの場合の不動産鑑定士の出番等について紹介した本。
 この本でも繰り返し解説されているように、共有不動産は売却等の処分や賃貸等の際に他の共有者と意見が一致しないとそれができなかったりスムーズに行えないため、第三者が(全体であれば問題はありませんが)共有者の共有持分を購入することには躊躇するのがふつうで、共有者にとっては持分の売却は困難です。そのため、共有不動産の持分は、不動産の全体の市場価格に持分割合をかけた額より相当低く評価されざるを得ません。この本では、それを「共有減価」と呼んでいます。「共有不動産の鑑定評価」というタイトル、これを不動産鑑定士が書いていること、はしがきにもあるように「共有不動産の鑑定評価に関する限り、これに特化した書籍はきわめて少ない」ことから、不動産共有持分の評価、つまり「共有減価」について具体的に説明し論じているものと期待して、実務的な強い関心を持って読みました。
 しかし、その点に関しては、「20%前後の市場性減価を行っているのが一般的です」という不動産鑑定士協会のホームページの記載を紹介し(108ページ)、著者の鑑定例で、賃貸目的利用の事例故に「共有減価として通常20%程度を織り込むところ」その半分(10%)にした事例(120ページ)、別の事例で共有減価を20%とした事例(126ページ)が紹介されているだけです。結局この本を読み通しても、共有者の数や共有持分、(賃料収入を得る目的かどうかという1点以外はまったく)物件の性質等について区分して検討することさえなく、共有減価の具体的な評価については、共有の内容がどうかは気にもせずに原則20%、ただ賃料収入が目的の場合はそこまで減価する必要がなく10%という以上のことは出てこないのです。
 まぁ、共有不動産の評価に特化した本を書く人でさえ、共有減価は賃料収入が目的の場合以外は一律20%程度くらいしか考えがないんだ、とわかったことが収穫でしょうか。
 裁判例がいくつか、比較的詳しく紹介されているのですが、そこでは共有者間の代償金の算定が目的のため、共有減価をする必要はないとされ、他の点については勉強になることもありますが、共有減価に関する不動産評価・鑑定という点では関係がないと思えます。
 また、裁判例を始め、事例の紹介に際して、日付や金額を白抜き等にしているのですが、そうする必要性があるか疑問ですし、仮の数字でも入れてくれないと日付は前後関係、金額はどっちが多いか何倍くらいかの感覚もつかめずたいへん読みにくい。
 第5章を始め、不動産鑑定士のニーズを語り、その利用を繰り返し呼びかけていますが、私たち裁判業界の者は不動産鑑定ができればいいなと思う場面が多々あると常日頃感じてはいるのですが、鑑定評価の判断に疑問を感じることも多々あり(例えばこの本の123ページや125ページのように原価法ではいくら、収益還元法ではいくらなどといくつかの評価方法が列挙されてその評価額が全然違うのに、さしたる根拠も示さずに本件ではこれが妥当とか書かれていることが少なくなく、まぁ専門家の意見として使うけど、あまり納得できていない)、なによりも裁判等の一資料に過ぎないのにそれをしてもらうのに1件数十万円も取られる、さらにはそれを裁判等で提出しても不動産業者の無料の査定と大して違わない扱いのこともけっこうあったりする状況では、使う気になれないのが実情です。


黒沢泰 プログレス 2020年9月30日発行
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化学の目で見る気体 身近な物質のヒミツ

2020-11-03 00:10:33 | 自然科学・工学系
 気体を素材にして、大気中に含まれる気体(元素)、地球史の中での気体、宇宙史の中での気体、周期表の族毎の特性や気象、気体の物理等を紹介した本。
 地殻を構成する元素の重量比約50%が酸素だ(8ページ)とか、金は王水(硝酸と塩酸の混合物)だけじゃなくてヨードチンキにも溶ける(89ページ:どこが気体の話か…)とか、トリビア的な情報がいろいろあるのが興味深い。
 気体の状態方程式(PV=nRT)は間違っている(気体分子に体積があること、気体分子間及び気体分子と容器壁の間に引力・斥力があることを前提にしていないため)なんて言われて実気体の計測値のグラフ(141ページ)を見せられると、ドッキリします。高校で気体の状態方程式を習ったときに「理想気体」と言われていたけど、え~っ、こんなにずれるのと思うのですが、他方で、かなり高い圧力をかけたときの話でもあり、大気圧ではたぶんほとんどずれないとホッとしたりします。著者自身、「はじめに」で、「22Lのメタンガスは16gですが、二酸化炭素は3倍近い44gもあります」って状態方程式の説明に沿った話してますし(それならやはり22.4Lって言って欲しいですが)。


齋藤勝裕 技術評論社 2020年10月3日発行
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令和版遺言の書き方と相続・贈与

2020-11-02 20:25:35 | 実用書・ビジネス書
 遺言の制度と相続、贈与についての一般的な説明をし、自筆証書遺言について文例を挙げて説明した本。
 遺言と相続について、一般の人が疑問に思う事項をわかりやすく説明しています。財産評価とか、税金関係は、この本を読んでもあまりわかりませんが、それは性質上仕方ないでしょう。
 自筆証書遺言(全文を自筆で書いて、日付をやはり自筆で記載して署名押印する遺言。法改正で、財産目録は自筆でなくてもよくなりました)の記載例が多数挙げられていて、主として、自分で自筆証書遺言を作成したい人向けの案内書として読まれる本だと思います。
 弁護士を遺言執行者として指定する文例が多い(大半がそう)ですが、公正証書遺言の公証人の手数料を解説していても(40~41ページ)、信託銀行の遺言信託手数料例に触れていても(58ページ。高い…)、遺言執行者の報酬にはまったく触れていないのはどうしたことでしょう。


比留田薫 主婦の友社 2019年8月31日発行
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