伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

産婦人科医が伝えたいコロナ時代の妊娠と出産

2020-11-21 20:40:07 | 実用書・ビジネス書
 新型コロナウィルス禍の下で今後の見通しが定まらず流動的な状況で妊婦と出産を考えている人がどのように考えて行動すべきかを論じた本。
 2020年6月時点の情勢に基づいて書かれているため、現時点では事情も感覚も違う点も多々ありますが、不確定情報が多い中でどうするかという点でなお参考になるものが多くあります。
 アルコール消毒よりは手洗いが有効(80~86ページ)、スマホを「清潔」に保つのは難しいので食事中はスマホに触らない、スマホをいじったあとは顔や食べ物を触らない(77~80ページ)などは、当然とは言え、肝に銘じておきたいところです。
 「よく男の人に、出産後の妻にはどんな声をかけたらいいですかと聞かれますが、声で済まそうという時点で間違っています」(148ページ:出産前からちゃんと家事の練習をして出産後家事をやれって)、「最後に、妊婦さんのパートナーに言いたいことは『キャバクラや風俗に行くな』です。ウィルスを持って帰ったら、きっと一生言われ続けますよ。お父さんはあなたがお腹にいるときにキャバクラに行ってウィルスを持って帰って、そのせいで大変だったのよ、と。子どもからも軽蔑されてしまいます」(157~158ページ)。至言ですね。
 著者は、オンラインの問診について、ないよりはいいのだけれども実際に会って診察した方がいいと述べています。やはり実際に会って話をし、全体を見た方がいい、例えば診察の際にドアから入ってくるときの雰囲気や表情も診断の材料になるし、オンラインだと雑談がしにくいけれども雑談が診察の役に立つこともあるというのです(132~133ページ)。裁判手続でも、今、裁判所も弁護士会も、コロナ禍への対応として、期日のWeb会議化を、闇雲にといってよいほど推進しようとしています。微妙な表情や雰囲気、雑談での駆け引きや感触で裁判官や相手方の心証・本音を探るような職人芸は、そんなものに価値を見いださない人(できない若手も…)とそういうものを正面から認めるべきでないという建前に駆逐されていきそうです。何でもオンライン化すればいいというもんじゃないと、古い職人気質の者としては、思っているのですが。


宋美玄 星海社新書 2020年9月25日発行
コメント
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