伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

結婚不要社会

2020-11-24 00:06:16 | 人文・社会科学系
 高度経済成長期には、女性が自分または自分の父親よりも経済力がある男性を容易に見つけることができ、結婚によってより収入の高い家庭をつくることができたこと、つきあったら結婚するのが当然(つきあって問題もないのに別れることが許されない)という圧力があり、多くの人が結婚していた/できていたが、男性/特に若い男性の収入が減少したために女性が結婚により生活レベルを上げる可能性が低くなって結婚したい相手がまわりに見つからず、恋愛しても結婚するとは限らないということが社会的に許容されて今よりもいい結婚相手が見つかるかも知れないと思うと結婚に踏み切れないという事情で結婚が少なくなり、現在では経済力の低い男性は結婚したくてもできないことがはっきりしてきたこともあり、恋愛をしたいとも思わないようになっているというような論を展開した本。
 著者は、女性が「男は仕事、女は家庭」という従来型の結婚観にこだわり、「いまよりも、親よりも、よい生活ができると思える相手」を結婚の条件とすることが、結婚困難な状況をもたらしたと主張しています(30~32ページ、112~116ページ等)。自分のことで考えても、私の親世代は戦争体験もあり、子どもには自分の人生よりもよい条件をという思いが強く、学校も親よりもよい学校に入れと言われてきましたが、そう言われて育った自分は、子どもにそういうプレッシャーをかけたくなくて、そういったことは間違っても口にしないようにしてきました。今の若い世代は、果たして経済的に親よりもよい生活をと思って人生設計をしているのでしょうか。研究者や官僚、マスコミは高学歴の自分のまわりの声しか聴いていない、自分は非エリート層のフィールドワークをやってきたという(26~30ページ)著者の思考が、私にはそれほど柔軟にも的を射ているようにも見えないのですが。
 前半で、2000年以降、さまざまな調査から恋愛をしている人が減っていることがわかり、今日では、恋愛が不活発化しているがゆえに結婚が減っているというロジックの方が正確、要するに、結婚難という状況が一般に知れ渡った今日では、結婚につながらない恋愛は無駄だという雰囲気になっているのですが、恋愛をめぐる変化については、あとでさらに詳しく述べることにしますと書かれています(34ページ)。結婚したい人が結婚できないという社会情勢はよく耳にしますが、さらに恋愛自体が減少ないしは不要のものとされているという言説には興味を持ち、その後はここでいう「あとでさらに詳しく」だけを追い求めて読み続けたのですが、その点についての詳しい記述を、私は見つけることができませんでした。その点が、とても残念でした。


山田昌弘 朝日新書 2019年5月30日発行
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