
伊藤若冲の水墨画の一枚。この作品を見て、まずはなぜ逆さに展示してあるのか、と普通は思う。その次に、描かれているのがよく解らなくても笑いを誘われる魅力に気がつく。その次に題名を見て雷神の子どもないし、子どもの雷神が地に落ちたのかと想像してみる。というのが認識の流れだと思う。
最後に「そういえば雷が落ちる=落雷」ということを笑い飛ばしている作品なのかと想像する。現代の漫画の原点のような作品だと思った。
1700年代の江戸時代の人々の笑いと、私たちの笑いが時代が離れても通じ合うものがあるということが伝わってきてホッとする作品でもあると思う。
解説によると「雲くらき そらにふきくる風みえて 神なりさはく をともすさまし」という賛者不詳の賛があるとのこと。ウィットの効いたテーマは大津絵の源があるとのことが記載されている。落とした雷鼓を釣るという「雷公の太鼓釣」というのは安永期の流行であったとのこと。
いわれを知らなくても、楽しめる作品である。動植綵絵のようなある意味では作品自体に緊張感があふれ、音をたてて息をつぐのもはばかれる作品群とは違った親しみがある。このような対極的な作品群があることがひょっとしたら「大家」といわれたり「一流」と云われる芸術家の力量なのかもしれない。作りあげる作品にいい意味で解釈や感動に幅があり、鑑賞者にさまざまな刺激をもたらしてくれることが優れた芸術家なのであろう。