これだけのことをこなすと一応日程が頭に入る。だいたいは記憶できる。念のためにスケジュール帳は持ち歩くが、新たに加える日程のメモとしての利用が多い。このスケジュール帳を作成するようになって、日程のポカは格段に減った。現役時代に作成しておけばよかったと悔やんでいる。
しかし書き込むのを忘れるとお手上げである。
1975年に就職したての頃、模造紙大の紙を切る作業が必要になった。私は当然にもカッターナイフと大きなスケールないし物差し、そしてカッターナイフを使う際の下敷きとなるものがあると思って、当時の庶務担当、消耗品管理をしていた先輩の高齢者にその旨を伝えた。そうすると「何を言っているんだ?」という顔をされた。
「ここにはそんなものがあるわけがない。ハサミがある」と云われた。当時は技術職員は設計書の添付図面に青焼きの図面を利用しており、模造紙大の紙は供えられており、必要に応じて切ったりしていた。当然カッターで処理をしているものと思って技術職員に聞いたら「ハサミしか買ってくれない」とのこと。ハサミを利用して必要な大きさに揃えていたり、折り目を強くしごいて手で切っているとのことであった。私は驚いた。
ハサミで切るとまっすぐには切れない。入札用にいくつも設計図書の添付図面を作るにも大きさがバラバラになる。カッターナイフを丁寧に使えば、少なくとも青焼き用に紙でも10枚はまったく同じ大きさに揃えることが出来る。
若い技術職員は、何回か折りを繰り返して手で紙を裁断して、出来るだけ大きさを揃え、切り口が一直線になるような努力もしていたのだ。
事務職員の係では紙を裁断することはあまりない。自分たちが必要ないから購入しない、ということがまかりとおっていたことに私は唖然としたことがある。
その日、技術職員と居酒屋で飲みながら。まずは技術職の係長をとおしてカッターを購入することを事務職の係長に申し入れさせてみることで、話をまとめた。それで要望は適った。
そのときの会話で、「事務職はハサミ、技術職はカッターを使いたがる」という話が出てきたのを記憶している。その時は「そんなものかな」と思って聞いていたが、この後の経験ではよくあたっているような経験を幾度もした。
新卒の学生でも文系の学生は「紙を切る」というとまずハサミを思い浮かべると聞いた。工学系の新卒の学生は私の知る限り「カッター」だという。こんなことですら理系と文系の差があるのかと未だに不思議に思っている。
そして学生時代、立て看を作るときにどうしても模造紙の半端が出るのだが、私は折り目を3~4回ほどしごいて破っていた。ハサミを使わなかった。しかしどうしてもハサミを使いたがる友人もいた。ただし党派や寮やサークルによって細かいことは違いがあったことは覚えている。
私がカッター使うきっかけは、中学校の美術の授業である。美術の教師はカッター派であった。今思うとちょっと変わった美術の先生だったのかもしれない。
そして妻はハサミばかりを使う。私はカッターナイフばかりをつかう。二人の癖はいつもまじりあうことはなく、平行線である。