
フェルメールが好きだったことと、ミステリーだという触れ込みで読み始めました。けれどどこまで進んでもミステリーらしきものは現れず、あっという間にエンドへ。
現代版は修復師の日本青年が主人公。彼の能力に外国の巨大シンジケートが蚕食してくるといった展開。小樽というヨーロッパの詩情香る都市がこの絵画芸術の雰囲気に合う。ところが、交互に挿入される200年ほど前の、パリの同じく修復師たちの芸術を目指す生き方に、僕はすこぶる興味を持ってしまう。
芸術と恋、そして嫉妬・愛憎・転落、、。身も心もボロボロになりセーヌに身を投げるアンリ。病魔に負けて死にゆくライバル芸術家。パリの動乱に運命を委ねて滅びてゆく彼ら。若き本物の芸術を目指す彼らがとても僕にはまばゆく見えた。
絵画を描く絵の具の技法など、普段絵を見る方だけの吾輩は、絵画を鑑賞する上ですこぶる参考になった部分も多いです。ということでこの小説はミステリーではありません。けれど面白かったです。多少絵画に対する見方が変わったかもしれません。
それにしても、芸術家たちは絵の具にこれほどの情熱を傾けていたんですね。これからは少しでも絵画を前にしてそれが分かるといいですね。
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