
しばらく大林らしい映画を見ていない。ところで、僕にとって大林とは何なのか、そんなことを見ている間ずっと考える、、。この映画は大林にとって重要作であるはず。そんな思いは画面の端々から伝わってくる。
尾道三部作やら、新尾道三部作など、僕は随分昔の映画が好きなのである。1999年の「あの、夏の日・とんでろじいちゃん」以降、僕を満足させてくれる映画はない。でもこの映画に賭ける彼の思いはテレビ等で知っていた。そしてやっと鑑賞する。
繰り返し、執拗に迫りくる戦争・権力への怨念。美しい野山に咲き誇る(桃でない)真っ赤な彼岸花。そして日本軍の隊列。この映像は黒澤の「夢」を思い起こさせるに十分だ。何回出て来ただろうか。しつこいほどだ。そんなの分かっていても彼は我々にオーバーラップさせようとする。
狂おしいほどの爆発力を秘めたいわば挽歌である。イメージは赤色。戦前の話にしないで、現代にじわじわ迫っている事柄であるのだと彼は告発する。
分かる。分かるけれど、これは一個の映画である。やはりそのたぎる思いを昇華し、いつもの大林映画にしてほしかったと僕は思うのである。
でも、みんなにとっての大林より、彼は作るべき映画として、もうカッコをつけることなく、ほとばしる怒りをもストレートにそのまま映像化したかったんだろうなあ、、。
全編あらゆる映像から匂い立つ死臭がすなわち現在の彼の心情を表わしているのであろうか。
いつものやさしさはそこにはない。激しい映画である。
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