私のような随分と無駄に歳月を過ごして来た人間には、主人公から見据えたまなざし、音、声、人の心の襞はずしんと容易にそのまま自分に入ってくる。見出して15分ほどで私はリリー・フランキーと同化してしまった、、。
夫婦愛、家族愛をテーマにした映画なんだろうけど、恐らくその底辺に流れているのは人間のささやかな営み。人は生まれては死ぬ。そのリフレインの中に、それぞれの人の想いを巡らせ、喜び、悲しみ、驚き、諦観を知る。形式はさすらうロードムービーなのだが、この作品はバックグラウンドにシューベルトのまさに「冬の旅」のような詩情をたたえている。
セリフ自体は極端に少ないが、だからこそ主人公、すなわち我々にうごめく心の営みが照射される。いい映画だったのでしばらくその余韻に浸っている私だ。
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