思いがけない力作でした。熱くなりもせず、かといって冷静すぎず不可解な少年たちの失踪事件を家族の立場から、そして恐らく架空なんだろうが、マスコミ扇動者、大ぼら吹き大学教授を巻き込んでこの物語は混沌化する。
この映画の面白いところは架空話を大胆に盛り込んで人間のいい加減さ、邪悪さをあぶり出しているところである。所詮マスコミも売れればいいという商業システムが根に息づいている。
この放送局マネージャーも自分が世間から叩かれるまでは被害者意識を全く考えることもなかった非道人間である。ミステリアン大学教授も自分の推理を楽しむだけのために被害者たちの心を全く考えることもなかった同じく非道人間である。
そしてラストに不意に出現する真犯人も含め彼らは恐らくフィクションなのであろう、しかしこれらの虚構でこの作品は逆に映画的に立体感を構築することとなる。まことに不思議である。
しかし、やはりこの作品で一番心を打つのは被害者でありながら犯人扱いをされる夫婦の話である。彼らの最大の謎であるあの嘘にはとても切実な訴えがある。時間が過ぎると皆事件を忘れる。ましてや被害者のことなどどんどん忘れてゆく。
家族はただ失踪者の生を信じ、今日か明日、ただ帰ってくるのを待っているのである。そのためには事件を風化させてはいけないのである。忘却を一番恐れるのである。そんな被害者側の家族の気持ちがこの映画ではよく表出されていた。思いがけない秀作です。最後に題名がちょっとそぐわない気もしましたが、、。
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