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大いなる陰謀 (2007/米)(ロバート・レッドフォード) 65点

2008-04-24 14:20:17 | 映画遍歴
3大スター競演。ロバート・レッドフォード、久々の監督作品と来ればそりゃあ映画ファンは見ざるを得ないでしょう。素材も考えずに食いついた僕は、、。

ほとんどが1対1の対話劇の構成。しかもアフガンのアメリカの政策論争が骨格になっていて、華やかなスター競演というには背筋をしゃんとしないと観賞出来ないような内容であります。そう、この映画はNHKの日曜討論を劇場版にしたような真摯なシリアスものなのであります。

というより、この題材を映画で見せようと思ったらスターのネームバリューなしでは観客は来なかったでしょうね。汗を出さないですべてを犠牲にしてまで政治家を目指す次期大統領候補にトム・クルーズ、かれのお気に入りで人気コラムニストにメリル・ストリープ、学生を煽動する一見インテリ教授にロバート・レッドフォード、とそれぞれ渋い演技を交わしている。

しかしこの映画は無論俳優の演技を見る映画でなんかではない。彼らの演技密度が高ければ高いほどこの映画のテーマが泡のように浮き上がってしまうことになる。

この映画で戦闘場面がないわけではない。アフガンでの奇襲作戦に駆り出されたレッドフォードの教え子の悲劇は胸を打つものもあるが、いかにもチープな作りで興ざめがする。彼らが白人でないこともいかにも図式的で、底が見えている。そのため、似ているようで名作「西部戦線異状なし」のような感動は全く感じられないものになっている。

なぜこの作品を7年ぶりに監督したレッドフォードが採用したか。

プロパガンダでないのは確かだが、かといって問題を提起しているといった重さもそう感じられない。教授と教え子パートにあるように、レッドフォード扮する教授が一番薄っぺらい人間に思えてしまう。日本でもテレビによく出てくる無責任大学教授と瓜二つだ。そう、大学教授ほど自分の理論だけをのたまい、実際は責任を持たない人種がいるだろうか、、。そんな嫌な人間に思えてくる。

3人とも人間的にはエゴの塊であり、表面と実との違いを嫌ほど辛酸なめている連中である。このような3人を問題提起したかったのだろうか、、。

戦争のテロップよりスターのゴシップを気にするミーハー国民を弾劾したかったのだろうか、、。

そう、この映画のテーマが僕には明白には分からないまま数日が経っている。政治に対する不信感をそのまま映画にしたのだったら、レッドフォードは超甘と言わなければならないであろう。

といって決してこの作品が詰まらないというわけでもない。演出的には例のアフガンの戦闘場面を除いてシリアスで秀逸だ。映画的には、、。恐らくメジャーで撮るにはかなりの妥協と勇気が必要だったのだろうが、こういう映画も製作出来るアメリカって素晴らしいと思わせるほどの映画でもないことは明らかであり、その意味でも実に僕には残念な映画だと思う。

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