アフレック、こんなに映画のことを考えていたなんて、、。好きなんだよね。映画少年だったんだろうな。そんな彼の思いが全力満開している。
まず出だしのアメリカとイランとの関係を超分かりやすく映像で説明したのは大正解。日本人たる僕はほとんど忘れていたもんね。アメリカ人だってヤングなんかはほとんど知らないのでは。この導入部があるとないとでは全然この映画に対する興味が違ってくる。
そしてさらにドギモを抜かれるイラン人民による大使館への乱入シーン。カットが多く臨場感が高まる。この映画全体に言えることだが、映像自体は美しさを全く考慮せずドキュメンタリータッチのどちらかという荒いタッチ。実はこれがいいのだ。
映像美に逃げ出す(耽溺する)監督の多い中、彼は真っ向勝負をしている。俳優陣もいわゆるスターを使わず(それはラストに効いてくることになるが、、)、映画本来の面白さで勝負し、彼の自信のほどを見せつける。彼自身も顔の大部分を髭で覆い隠しいつもの彼の頼りなさから変貌させている。この映画の持続力たる強い意思はこの容貌から引き立つ。
現代においてもお金をかけることなく本当に面白く作れる方法もあるということを彼は実践する。これはでも本来映画の基本中の基本なんだよね。それを彼はやってのけた。けん銃や殺人はなくともサスペンスは作ることができるのだ。
もう後半は息をするのも忘れるほどサスペンスの連続だ。体が硬直するほどだ。それはエンターテイメントの王道でもある。
この映画、ちょっとしたことで世の中がふいに変貌することを教えてくれる。わが世の春だったアメリカ人さえ、ちょっと政治が狂うといつ身が危うくなるかも知れなくなる。アメリカ人というだけで一瞬にして殺戮されるひとときを持つのだ。あの、クレーンに首吊りにされた若者がすべてを象徴する。
そしてどんなときにも人間の一瞬の判断がすべてを決めるということ。それは勇気である。上層部から、大統領から作戦の中止命令を受けて、一瞬躊躇するが、彼は人間への一つの信頼感から危ない綱渡りを選ぶことになる。
人生の分岐点に人が立った時に本当に必要なのは勇気なのである。そんなことをこの映画は、アフレックは教えてくれる。本当に僕が待ち望んだ映画愛にあふれる秀作だ。素晴らしいひとときを持つ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます