期待通りに面白い映画であった。特に1950年代、ドイツが復興に力を注いでいた時期はドイツの上層部ではナチスの残党がまだ勢いを持っていたということはあまり知られていない。この映画は一人の検事と彼らとの血みどろの闘いを描いたものである。
だから単純にサスペンス映画ごとくアイヒマンの追跡物語ではないのである。彼はドイツを頼りにできず、モサド(イスラエル諜報機関)経由でアイヒマンを追い詰めなければならなくなる。自分自身は風呂で危うく眠ってしまっただけで、自殺未遂という噂を仕掛けられ、退陣させられそうになるほどだったのだ。
四面楚歌。ホロコーストを追求していた正義の男がドイツでは実に味方が一人もいない状況だったのだ。映画では若い検事が同性愛で苦しむ姿を描写しているが、あれは取りも直さず彼自身の二重写しであっただろう。面白い作り方であった。
アイヒマン逮捕というトップニュースの裏にはこういう新事実が隠されていた。この新聞記事は当時僕も子供ながら覚えているぐらいであるからこそ、興味深い映画になった。ぐぐんと胸に迫る秀作である。演出も娯楽作のように明快でスピーデーであった。
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