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優雅な世界 (2007/韓国)(ハン・ジェリム) 80点

2008-10-23 15:50:02 | 映画遍歴
ヤクザだって家族のことを一番思っているよ、という一筋のテーマが光り、哀しく、そしておかしくどこにでもいる男の日常をぐさりとさらけ出す。

このハナシって、就職先がヤクザでなければ全く平均サラリーマンに通じるハナシであります。会社では上司に叱咤され、部下から突き上げを食う。家に帰っても、妻、子供たちから足蹴にされ部屋の居場所もない。そんな、中間管理職の生きている生活そのものをつぶさに描いているかのようだ。

明るい一戸建てを夢見ている父親は多いはずだ。しかし、就職先が法律すれすれのところで働いているヤクザ稼業だとしたら、食べさせてもらっている家族は職業だけ変えてもらいたいという。ヤクザも最近は不況でリストラさえあるという時代だから、まさにこの主人公は我々普通の父親には親近感がある。職業さえ違え、みんな同じようなものです。日本版「男はつらいよ」です。

こういう男の心境はソン・ガンホ、実にうまい。いいよ。もうそこにいるだけでさまになり、存在感が満ち溢れる。ヤクザの形を借りたホームドラマなんだけれど、彼の存在が平凡な日常をみずみずしいリアリズムを帯びて生き返らせる。そこには確かな、家族と共に生きる営みがある。

一方、ヤクザの親方の息子との確執も、実は擬似家族関係が原因となっていた。肉親より他人を可愛がる組長の弟に逆恨みされる主人公。これも家族の風景なんですなあ。ヤクザも考えたら大きな家族でもあるわけだ。

こう、親近感のある素材で家族映画、すなわちホームドラマを構築するハン・ジェリムの手腕は思ったより俊敏だ。前作「恋愛の目的」も人間の生の気持ちを映像化していたが、2作目でこの秀作。うーん、将来を期待できる監督ですね。楽しみです。

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