今回も幕末ミステリー。西郷、桂、坂本、新選組の土方、薩摩の中村半次郎まで出てくる。そして見知らぬ探偵役の尾張藩鹿野師光、この布陣がいいんだよなあ。歴史もよく勉強されていて、気が付けば安心して幕末の京都に読者を導いている。
人間の消失などトリックは取るに足らないものもあるが、何より人物像がすべて生身で生きている。嘘っぽくないところがいい。パシッと秀逸なミステリーを生み出した。
そしてラストに近江屋坂本、中岡の殺害事件を持ってくる。ただ単に描写するのでなく、この小説に起因する竜馬のつぶやきを描き込む。唸らせる。さらにラストでちょっとしたひねりを加え、このミステリーは完成する。
うーん、何とも痛快。読みやすさとともに、220ページの中編並みの長さ。でも、すべて書き込み十分なので読ませるのだ。
今年の収穫作と言えるだろう。
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