ルコントのお出まし。シムノン原作なので、雰囲気のあるミステリーのはず。そして映画はやはりそういう方向へとなびいていく。
ミステリーとしてかなり面白い趣向の作品であることは間違いない。ところがこの作品、やはりルコント映画だ。ミステリーの仕掛けなんかを完全に無視し、メグレ警視(ドパルデュー実に好演)の私生活をある殺人と混濁させ、娘の若き死を眺める。
映像に浮かぶはメグレの心に投影する死と生の残滓のみ。なぜ事故を殺人に見せかけようとしたのかなど、ミステリーの根幹を完全無視。違和感はあるものの、でもそれがルコント映画であることを観客は気づいている。
ラストの小さな映画館での収束映像はルコントの今の心象風景なのであろう、ドパルデューという俳優の大きさまで考えさせられるシーンとなっている。
だからやはりルコントは面白い。
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