これは力作です。現代劇を見慣れている我々からは、こういう時代に生きていた人々がいたことをしかと思い起こさせてくれる。それは現代にも繋がっていると思う。
時代は昭和初期。嫌が応にも日本が暗闇に転がり行く時代であった。そんな時代でも、詩を書くことで生計を立てていた人たちがいたことに驚く。詩集が売れていた時代なのか、、。
16年ずっと愛していた女の夫が亡くなる。男は妻子を捨て女と再婚する。そんな自己愛の強い男である。愛していると妻に言いつつ、実際は自分を一番愛している子供のような男である。さて、そんな男に関わってしまった人たちはまともな生活を送られるはずがなく、もがいている。
でも彼が決して異常ではないことに我々現代人は知らなければならないであろう。この時代ではこういう男尊女卑の思想は根から沁みついている男も大勢いたと聞く。私の父親も多少このような言動をしていたと思う。子供時代の私を想う。
男そのものが実際甘やかされていた時代なのだ。男はしかし女と別れ、そしてふとした女買いの時、妻との真実の愛にやっとたどり着くのだった。
2時間強、太い筆で描いたかのようなタッチは最近の緩い映画を見続けてきた私を映画への扉にいざなってくれる。映画を見る時だけに感じる至福の時である。充実感もある。
ただ大きな映画館で今日は私を入れて2人の観客。アニメや漫画原作の映画の多い中、日本はどうなるのか。とても愁いを持ってしまう一日でもあった。
主役の東出はよくやっている。ただ彼は声が甘く高く、発声を基本から勉強した方がいいのではないか、といつも思う。セリフのない時の表情はなかなかのものである。今回の役柄は彼の生きざまと少々オーバーラップしてしまうから不思議だ。
年末にきついアッパーブローを食らった感じの、いい一日であった。
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