完全に現代において無声映画を、と画した野心作であります。他の監督にも同様の無声映画はあったけれど、これほど徹底して時代を90年前に戻したのは驚きの一言です。
フィルムが好きなんだよね。女が、男の部屋で長いフィルムを目の前で探り、フィルムの映像を確認するシーンは「デジタル反対」というメッセージまで感じてしまうほどだ。【アザナヴィシウス】は映画がものすごく好きなんだ。それは映画の全身から伝わってくる。
僕らは無声映画を今、DVd等で見ることは出来ても、実際当時上映されていた映像の状態で見ることは出来ない。この映画はそういう意味で無声映画の映像を最上の状態で僕たちに見せてくれている。映像は傷はなく、本当に美しい。(当たり前だが)
そんな臨場感までしっとりと感じられる本作品、映画ファンは見ていてニヤニヤしてしまう。男が自殺しようとしている。男は銃を取る。女は危機を察知し、運転できない車で助けようと無茶苦茶な運転をする。男は銃を口にくわえる。その後、「パン」という音が!続きは言わずもがな。
そう、無声映画ではこんなシーンが多かったのだ。しかも、無声なので表情で、体で、心情を表現する必要があった。映画は映像で表現するものなのだという当たり前の理念もこの映画を見ればよく分かってくる。
最近俳優の口からセリフだけでストーリーを説明する映画も多い中、やはり映画は映像が基本であるということがよく分かってくる。
僕には男優も女優もちょっとスケール的に小ぶりなのが気になったが、そんなことを払拭するぐらいのチカラはこの映画に充分ありました。秀作です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます