待ちに待った道尾の新作。しかも400ページ。そして字がぎっしり。読みごたえはありそうとほくそ笑んでページを繰る。
久々ではないかなあ、こんなミステリー風の小説は。文章は練れていて美しい。地方の聴きなれない言語までが律を成している。緩やかで哀しい物語である。ちょっとした勘違いが悲劇を重ねる様はちょっととも思うがでも面白い。
主人公の自殺を意識した想いと、9歳のけなげな息子との心の結びつきが感銘を呼ぶ。ラストの10行で涙を出さない人はないだろう。人生とは過酷で厳しいが、それでも生きて行く価値はあるのだ。
想像していたほどミステリーの本道を闊歩しているものではないが、十分道尾文学を成している。原点に戻りつつ完成度は高い。ますます期待感が募る。
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