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スザンヌ (2013/仏)(カテル・キレヴェレ) 80点

2015-07-08 20:42:17 | 映画遍歴

同じように育てられて姉妹でなぜこうも違うのか、なんていうことはよくあること。ひとはただ単に馬鹿な女だねの一言で片づけるが、本人はそれなりに自分と戦い続けているのだ。

映像でぐんぐん押して来る力はものすごく新鮮で、躍動力がある。説明のないままカットが変われば、それは5年も経過しているなど、慣れるまではちょっと大変だが、まず「説明はあと」、とにかく映像でどんどん邁進してゆくスタイルは、とても斬新で力強い。

例えば彼女は刑務所に入所するシーンが突如インポーズされる。観客は何のことかわからない。弁護士が面会に来て、多少状況が匂わされる。そして裁判の陳述で、彼女が何をしたのか、家族関係がどうなっているのか、主犯の男はいまだ逃亡しているなど等が観客に分かる仕組みだ。

その間4,5分。これを普通の映像で表わそうとするとだいたい20分ほどはかかるだろう。実に簡潔でスピーディー、その間も彼女の表情で我々は彼女の内面を推し量る。

人生で躓く人もいれば、一応人並に日向の道を歩んでいる人もいることだろう。でもどうしようもなく裏街道を歩んでしまった人たちが、すべてただ何の考えもなく自堕落でそうなったわけでもなかろう。

この作品はそういう報われない一人の女性を温かくしっかりと見つめた、実に力強く優しい映画である。彼女は人生の分岐点において、ただ流して生きてきたわけではないのである。

彼女が最初に決断した出産。そして幸せの絶頂期において偽パスポートを告白する二度目の決断。その結果が刑務所生活を余儀なくされようとも、面会所で彼女の産んだ二人の子供を前にして、彼女は初めて人生の喜びを感じるのだった。

いい映画だ。姉妹でも光と影のように生きてきた二人。夭折した妹のためにも本当の人生を選んだ姉は、その結果再び刑務所生活を始めようとも、もう不安な人生を迷うことはない。ちょっと時間はかかったが彼女は今、真の人生を歩み始めている。

秀作だ。力強い映画だ。映像も躍動感がある。拾いものの映画だ。


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