成功した文学者が生まれ育った植民地を訪れるという自分探しの映画です。
幼くして戦死した父親の墓。ほとんどだれも訪れなかったかのような荒れ方。優しくほこりを取り除く男。出身大学の特別スピーチをするが、植民地政策の是非と国家とは何か、で逆に論争を呼ぶ羽目になる。
しつけの厳しかった祖母。生活のために学校も行かせてくれそうになかったが、特別に担任の助言で上級できたこと。母親に若い男の影を見、哀しむ子供心。優しかった叔父も本土へは戻らずアルジェリアに骨を埋めるという覚悟。
アルジェリア人の友人は息子が不当逮捕されたと男に頼ってくるが、息子は政治姿勢を曲げず処刑の血を流す羽目になる。
すべて静かなその目でアルジェリアとフランスの国を見て来た母親もアルジェリアに残るという。男はエリートで文学で成功した人間だが、母親も伯父もすべて貧しく未だ息子の新聞記事も読めない文盲だ。息子の弾劾されたときの顔を新聞の写真欄で発見し、元気そうでよかったとポツンという。
静かな映画である。人と人との共存は果たしてできるのか。国家とは。政治とは何か。そもそも人間とは何か。人間の営みは一体全体何なのか。
今ある自分は何なのか。映像で強烈に画面から僕たちに訴える。
しかし解決はない。茫洋とした遠い方向を見る憑かれたような母親の顔をクローズアップにこの映画は終わる。
人間は今も昔も同じことを繰り返し行っている。カミュの亡くなった50年前とどう世界は変わってきたのか。国家主義はどこの国でも蔓延っている。一体、人類全体の共存という闘いのない世界がいつか来るのだろうか。
原作も未完である。映画はしかし過去と未来を見据える視線を残す。人間とは一体何をしてきたか、これから何をしてゆくのか。そんな大きなテーマを抱えつつ回答を僕たちに預ける大きな映画でした。
今日この頃めっきり秋が深まった感じでついこの前まで暑かったのが嘘のようで。福島はいかがですか?
もうそろそろ仕事も引退しようかなあとも思っているのですが、昨夜も遅く出張から帰って来て、なんとなく今日は気が付いたら映画館を探している自分。
何かをしているのが日課になっている自分。何もしない毎日がどんなものなのか想像できません。いいような気もしますが、そうでもないという人も多く。
この映画はあまり評判にならなかった映画でしたね。でも僕はこんなスケールの大きな映画は好きですね。だんだん老いてくると人生というものを即感じ取りたくなるんでしょうか。
福島にはまた一度行きたい気もします。でも大阪からはちょっと遠いかな?
それでは、また。
非常に静かでありながら 大河のような歴史の流れと カミュ作品のルーツ、そしてジャック個人の心の旅 幾重にも楽しめる作品でした。
特に登場する人物にブレがなく(まあ、選択肢もないわけですが 笑) 愛らしい人ばかりではありませんが どの人の事も理解できる。・・というか嫌いにはなれない自分がいます。
そして、その一人一人の生き方が後の世代へ繋がる普遍性を淡々と どうしようもない流れの一部のような気持ちと少しの期待で感じます。
年老いた母の演技・・素晴らしかったです!台詞は少ない作品でしたが 表情や 景色で多く 心揺らされました。
急に寒くなりました。朝は辛い季節になりますがご自愛下さいね。
今朝は風が強いようです。そちらも・・かな?