見終わって、ベトナムでこんなアート映画が出来るんだ、というのを見せたかったのが本音ではなかろうか、と思いました。確かに映像も美しく、凝ってる。俳優陣も美男美女揃え。格差社会も一応入っております。したたかな映画です。
でも、芸術至上主義というんでしょうか、僕も若い時だったらこういう映画に、はまったかもしれないと思う。けれどももう人生という歳月を充分経た吾輩からすると、どうも「らしくない」というのがこの映画多すぎて、それがすこぶる鼻につきます。
新婦の方はそのうちそういう間柄だったんだというのは分かってきますが、新郎の方はちと不可思議。彼は何故か寝てばかりいる。仕事で疲れているにしては、子供たちとサッカーをしてけがをするぐらいだから、違うな。彼の描き方が足りない。
そしてもっとイメージに頼りすぎているのが、新婦が気持ちを傾ける男とその元妻。彼らには聾唖の娘まで設定し、その挙句、あの出来事であります。もうこれは小説的、人工的過ぎます。
夫とは初夜もなく(少なくともそのシーンはない)、第二の男から連れ戻すタクシーを運転する夫の肩に後方席に座る新婦の手がにょろーと伸びるラスト。これはひょっとしたら現代のホラーか、とさえ思った。
とはいえ、映像、脚本、ベトナムの市井の人間の逞しさ、その描き方は一流なんですな。
映画って、もう過去の無尽蔵の映画群からすれば、現代の映画は、作る方法がなくなってきているのかもしれません。換言すれば、映画を作る意味合いを失い始めているのかもしれない。
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